一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部
1.市町村のコスト構造の透明性確保(P.11)
[意見]
分別収集・選別保管に要する市町村の負担が過重であることを理由として、その負担の一部を特定事業者に求めるのであれば、市町村のコスト構造の透明性を確保することが議論の大前提となる。社会全体のコスト削減という観点からも、役割分担を見直す以前に、データの相互比較を通じて市町村の業務効率の改善を図ることが不可欠であり、すべての市町村が一般廃棄物会計基準に則った原価計算を行うべきである。
[理由]
2006年2月に中央環境審議会から環境大臣に提出された「今後の容器包装リサイクル制度の在り方について(意見具申)」では、市町村の役割として、国が検討を進めている廃棄物会計基準等の「成果を十分に活用して容器包装廃棄物処理コストを分析すべきである」とされた。その後、2007年6月には、環境省が市町村の一般廃棄物処理事業3R化ガイドラインの一つとして「一般廃棄物会計基準」を公表している。しかし、一般廃棄物会計基準を用いて廃棄物処理事業に係る原価計算を行っている市町村数は64、「廃棄物処理事業原価計算の手引き」を用いて廃棄物処理事業に係る原価計算を行っている市町村は48にとどまっており、市町村のコスト構造透明性確保に向けた取組みは不十分と言わざるを得ない。
「平成22年度の全国の市町村における容器包装廃棄物の分別収集・選別保管費用(管理部門含む)は約2500億円」とあるが、この金額はアンケート調査に基づく推計結果にすぎない。また、2004年度調査において公開されていた、市区町村における分別収集・選別保管費用単価や、容リ法施行後の市町村費用の変化分も示されておらず、比較可能性の観点から極めて不十分である。
2.海洋漂着ごみ、容器包装以外の製品プラスチック(P.14、20)
[意見]
海洋漂着ごみや製品プラスチックについて報告書で言及することは不適切であり、関連する記述を削除すべきである。
[理由]
2013年9月から2016年3月まで開催された「産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会容器包装リサイクルワーキング・グループ 中央環境審議会循環型社会部会容器包装の3R推進に関する小委員会 合同会合」において、海洋漂着ごみについての具体的検討は行われていない。
また、製品プラスチックは容器包装リサイクル法と無関係である。
3.市町村と特定事業者の役割分担・費用分担(P.20)
[意見]
役割分担・費用分担の見直しによって、廃棄物の減量等を通じた社会全体のコスト低減や排出抑制が実現するとは考えられず、反対である。
[理由]
特定事業者による容器包装の薄肉化・軽量化努力は限界に達しており、追加的な費用を負担させても容器包装の排出抑制効果は限定的である。また、競争環境が激化するなか、特定事業者が分別収集・選別保管に関する負担を商品価格に転嫁することは極めて困難である。仮に転嫁できたとしても、一商品あたりの容器包装処理コストが極めて低額であることなどを考慮すれば、消費者への価格効果による排出抑制に期待はできない。
さらに、分別収集・選別保管の役割の一部を事業者が負担することで、市町村の業務効率化に対するインセンティブを削ぎ、結果として社会全体のコストの増大をもたらすことが懸念される。
4.市町村とリサイクル事業者の行う選別の一体化(P.20)
[意見]
市町村が実施する分別収集と、特定事業者が実施する再商品化の段階でそれぞれ行う選別を一体化することは、実質的に市町村と特定事業者の役割分担の見直しにつながる可能性があり、反対する。「社会全体のコストの低減効果や制度的課題を把握するための実証研究」については、過去に実施された同種類の実証試験の結果分析を優先すべきである。
[理由]
1995年の容リ法制定以降、関係者の努力により、容器包装廃棄物の分別収集・選別保管、再商品化は着実に進展しており、容リ制度の見直しを行う場合には、現行の役割分担に変更を加えるのではなく、各主体が法に基づく責任を果たし、深化させることで、社会全体のコスト低減を促進することが重要である。
選別が一体化されると、市町村が消費者に分別排出を徹底するインセンティブが薄れベール品質が悪化することや、消費者が法に規定された役割を果たさなくなることが懸念される。こうしたことは、国、地方公共団体、事業者、国民の適切な役割分担と費用分担により循環型社会の形成を目指すとした循環型社会形成推進基本法の考え方に反するものである。
なお、選別の一体化については、これまでにも実証試験・研究が行われており、国費を投じて新たな実証研究を行う前に、過去の知見を活用することが妥当である。
5.合理化拠出金、入札制度の見直し(P.21、25)
[意見]
リサイクルの合理化に貢献した市町村への資金拠出額は、2011年度から大幅に減少している。このことは、再商品化の質的向上の促進や、容器包装廃棄物のリサイクルに係る社会全体のコストの効率化、という制度の目的が実現した結果であり、高く評価すべきである。そのうえで、入札制度の見直し等を通じて拠出金の再活性化を図る場合には、優良な事業者が活躍できる競争環境の整備という観点を持ち、一般に広く公開された場で検討すべきである。
[理由]
入札制度のあり方は社会的に関心の高いテーマであり、一般に広く公開された場で議論する必要がある。