一般社団法人 日本経済団体連合会
資源・エネルギー対策委員会
「長期エネルギー需給見通し(案)」については、2030年度におけるベースロード電源比率約6割とされ、また、産業部門のエネルギー需要見通しにおいて、「経団連低炭素社会実行計画」で示した経済界における最大限の省エネ努力が盛り込まれている点を高く評価したい。
今後、以下についてさらに検討を深めるべきである。
1.東日本大震災後、産業用の電気料金は約3割上昇し、国際競争力に大きな影響を及ぼしている。経団連が会員企業を対象に年初に行ったアンケート結果によれば、製造業の約8割の企業が、震災前あるいは震災前以下の水準が電力料金の負担可能限度額であると回答し、また、負担可能限度額を超えた場合の対応として、約5割の企業が国内設備投資や雇用を減少せざるを得ないと回答している。現に、電力多消費産業を中心に、事業からの撤退や倒産、海外への移転が生じ、雇用や地域社会に深刻な影響を与えている。
内外の企業による国内投資の促進と雇用の確保を図り、わが国経済の持続的な成長を実現するためには、電力コストは少なくとも震災前の水準以下を目指すべきである(経済効率性(P2~3))。
2.電力コスト低減を図る観点から、原子力発電のさらなる活用や、再生可能エネルギーの低コスト化と持続可能性確保に向けた取組みを行う必要がある。
- (1) 原子力については、地球温暖化防止の観点からも極めて重要な電源であり、最大限の活用に向け、安全性の確保を前提に、既存の原子力プラントの稼働率向上や運転期間の延長、リプレース・新増設について、具体的に検討すべきである(原子力(P10))。
- (2) 再生可能エネルギーの固定価格買取制度について、ベースロード電源とならない電源の導入量に上限を設けるなど、抜本的に見直すべきである。また、研究開発支援を強化しなければならない(再生可能エネルギー(P9))。
3.化石エネルギーは、経済性やエネルギー安全保障・安定供給の観点から重要であり、高効率化を図りながら、引き続き有効活用を図る必要がある。
「石炭火力を始め非効率な火力発電」との記述については、すべての石炭火力発電が非効率であるとの誤解を招きかねず、記述を改めるべきである。
また、大規模で投資回収に長期間を要する発電所の建設を円滑に進めるため、火力発電のCO2排出対策は、事業者による主体的な取組みの活用を中心に、予見可能性の確保された枠組みとすべきである。
加えて、石炭火力に優先してコストの高い太陽光等の活用を義務付けている、優先給電ルールの見直しを明記すべきである(化石エネルギー(P10))。
4.省エネルギーは経済性・環境適合性・エネルギー安全保障の3Eすべてを満たす取組みであり、産業界としても技術の開発・普及に最大限取り組む。しかしながら、過大に見込まれた省エネルギー効果に基づいて、非現実的なエネルギー需要を想定することは、企業等に対する過剰な投資負担や生産抑制を強いることとなりかねない。
今回示された「長期エネルギー需給見通し(案)」は、とくに、家庭、業務、運輸の各部門において極めて大きな省エネルギー効果を見込んだものとなっており、実現可能性について改めて検証するとともに、目標を実現するためにどのくらいのコストが必要かを明らかにすべきである。
今後、省エネルギーを推進していくにあたっては、研究開発の強化、国民運動の展開が不可欠である。他方、民主導の活力ある経済社会の発展を阻害することがないよう、今回のエネルギー需要見通しの基礎とされた施策以外の新たな規制的な手法は回避すべきである(省エネルギー(P8~9))。
5.エネルギー基本計画の検討に合わせた長期エネルギー需給見通しの見直しについて、S+3E、とりわけ、エネルギーコストの低減を図る観点から検討する旨を明記すべきである(長期エネルギー需給見通しの定期的な見直し(P11))。