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Policy(提言・報告書)  総合政策 豊かで活力ある日本を再生する -2015年度事業方針-

2015年6月2日
一般社団法人 日本経済団体連合会

安倍政権による内政・外交両面における一連の政策遂行が成果を上げ、日本経済は着実に活力を取り戻しつつある。デフレからの脱却も視野に入り、国民の間には将来に向けての明るい期待が広がり、企業も今後の成長に向けて積極経営に転じようとしている。

しかし、先行きを楽観はできない。本格的な人口減少・超高齢社会の到来、財政赤字の継続と長期債務残高の拡大、社会保障給付費の急速な増加、原発停止に伴うエネルギー問題、経常収支の赤字化への懸念、さらには加速するグローバル化への対応など、構造的課題は山積している。また、地域経済の活性化や、環境・資源分野をはじめとする地球規模の課題の解決も求められる。

こうした課題を克服し、活力ある経済・社会を創り上げて次世代に引き継ぐためには、旧来の制度や慣行を大胆に改革するとともに、経営者のマインドや国民の意識、社会的通念も、未来を創造する前向きなものへと変革していく必要がある。

経団連は、本年1月、イノベーションとグローバリゼーションが経済活力の源泉であるとの認識の下、2030年のあるべき日本の姿を見据えた将来ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」を発表した。本年度は、このビジョンで描いた経済・社会の実現に向けた着実な一歩を踏み出す年と位置づけ、政治との連携を強化しながら、下記の重要政策課題に確実に取組む。それにより、デフレから脱却し、経済の好循環を実現して、経済再生へとつなげていく。

1.震災復興の加速と新しい東北の実現

東北の復興なくして、日本の再生はない。震災復興を加速する観点から、政府は復興状況や復興事業の精査・総括を行い、積み残した課題を特定するとともに、集中復興期間後の対応を明確化すべきである。

経団連としても、産業復興や新産業の創生を支援するとともに、復興庁や被災地自治体への人的支援、会員企業に対する被災地産品の消費拡大への協力を引き続き呼びかけていく。

2.財政健全化と社会保障制度改革の推進

持続可能な財政構造の確立は、将来世代に対する現世代の重大な責務である。しかしながら、日本の財政は、諸外国に比して最も深刻な状況にある。従って、2020年度のプライマリーバランス黒字化に向けて、具体的計画の策定と総力を挙げた実行を求める。

デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の3本柱を一体として推進する。2017年4月の消費税引上げを確実に実現する。また、社会保障については、制度の持続可能性を確保するため、負担構造の見直しと給付の効率化・適正化を進める。

経団連としても、財政健全化および社会保障制度改革の必要性の周知、健康経営の普及・啓発に努める。

3.税制・行政改革の実現

企業の国際競争力を強化するとともに、日本の立地競争力を高める観点から、法人実効税率を早期に20%台へ引下げることを目指し、平成28年度税制改正において、税率引下げ幅のさらなる上乗せを働きかける。

電子行政の推進、地方行政改革、規制改革を進め、簡素で効率的な行政を実現する。その際、マイナンバー制度を円滑に導入するとともに、利用範囲の拡大を図る。電子行政の推進にあたっては、国・地方ともにICTを所与とした業務改革を行う。将来的な道州制の実現を見据えた上で、政府関係機関・機能の地方移転、地方支分部局への許認可権限の徹底した委譲を求める。

経団連としても、企業の経験を踏まえて、政府の業務改革に協力する。

4.エネルギー・環境問題への対応

安全性の確認された原子力発電所の再稼働を実現し、固定価格買取制度や地球温暖化対策税を見直す。まずは2030年原発比率25%超を含む適切なエネルギーミックスを策定し、年末のCOP21を見据え、国際的公平性、実現可能性、国民負担の妥当性が確保された温室効果ガス削減目標を設定することを求める。また、日本の優れた低炭素型技術の普及、革新的技術の開発による長期にわたる地球規模での排出削減に取組み、先進国として責任ある役割を果たす。

経団連としても、地球温暖化対策に主体的かつ積極的に取組むため、「経団連低炭素社会実行計画」を着実に推進する。

5.基幹産業の育成、新たな成長機会の創出

次世代の日本経済を牽引する新たな基幹産業の育成に努める。その一環として、IoT(Internet of Things)、人工知能・ロボット、スマートシティ、バイオテクノロジー、海洋資源開発、航空・宇宙に係る技術開発および産業振興を推進する。起業の促進、経済成長・産業構造改革に資する金融・資本市場の整備、生産性向上に繋がるICT利活用推進に向けた環境整備を図る。

経団連としても、企業がデフレマインドから脱却して積極経営を進め、設備投資や研究開発投資を活発化して新たな成長機会の創出に取組むよう呼びかける。

6.科学技術イノベーション政策の推進

第5期科学技術基本計画において、政府研究開発投資のGDP比1%目標を明記し、これを実現する。ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)やSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)など、革新型・省庁連携型の研究開発プログラムを継続・拡充するとともに、大学や研究開発法人の改革を促す。

経団連としても、総合科学技術・イノベーション会議事務局への企業からの継続的な人員派遣など、政府の科学技術政策の推進に協力する。

7.地域経済の活性化、地方創生の推進

地域中核企業の競争力強化とともに、企業による農業参入の促進や農地集積の推進による経営規模拡大、ならびに、観光立国推進体制の強化や広域観光組織間の連携促進など、農業・観光の振興を図る。都市のコンパクト化とネットワーク化、防災・減災対策の推進など、魅力がありかつ強靭な都市・地域の形成に注力する。

経団連としても、地方経済団体との連携・交流強化を図り、課題共有と取組み支援を行う。

8.広域経済連携協定の推進、海外との経済交流の拡充

成長著しいアジア太平洋地域とともに日本経済が成長していくためには、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は必要不可欠であり、早期妥結を強く求める。また、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日中韓FTA、日EU EPAについても、本年を目途に実現する。官民が連携し、インフラの海外展開を積極的に進めるとともに、対外直接投資の拡大、対内直接投資の推進に向けた環境整備を図る。

経団連としても、米国やアジア近隣諸国との関係を一層強化するため、米国ならびに中国へのミッションの派遣、韓国・全経連との国交正常化50周年記念事業やアジア・ビジネスサミットの開催など、民間経済外交を積極的に推進する。こうした取組みを通じて、国際社会における日本のプレゼンス向上に努める。

9.人口減少問題への対応

50年後も人口1億人の安定した人口構造を維持するため、社会全体で総力を挙げて直ちに取組むことを求める。政府には、児童・家族関係給付の対GDP比3%を目指して充分な財源を確保するよう求めるとともに、官民協力の下、不本意非正規雇用問題への対応、地方での若者活躍推進、ワークライフバランスの推進など、若い年齢での結婚・出産の希望が実現できる環境を整備する。

経団連としても、ワークライフバランスに寄与する働き方の好事例について周知する。また、多様な働き方の推進に向けて、働き方・休み方改革を進めるとともに、労働時間制度改革の早期実現を目指す。

高齢者の豊かな知識と経験を活かすため、経団連として、企業の高齢者活用に関する先進的な取組み事例を収集し、普及を図る。

外国人材の活躍に向けて、高度人材を一層積極的に受入れるとともに、産業構造や人口構成の変化などを踏まえ、幅広い分野の人材受入れに向けた環境整備を進める。

10.人材育成・教育再生・大学改革の促進

イノベーションを起こし、グローバルに活躍する人材を育成するため、初等中等教育段階におけるコミュニケーション能力を重視した英語教育の推進、理数系教育の抜本的な拡充を働きかける。大学改革に向けて、学長のリーダーシップによるガバナンス改革、入試改革の実施、国立大学改革プランの着実な実行を求める。優秀な外国人人材の受入れと日本人学生の海外留学の推進、海外大学との連携の強化をはじめ、大学のグローバル化を進める。

経団連としても、企業人の講師としての教育機関への派遣を含め、引き続き「グローバル人材育成推進事業」を実施していく。

11.女性の活躍推進

女性の活躍推進に向けて、女性の働き方に対して中立的な税制・社会保障制度を構築するよう求める。

経団連としても、会員企業に対し女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画の策定・公表を引き続き呼びかけるとともに、女性管理職育成、管理職の意識改革の支援に取組む。また、就業前のキャリア教育の充実、理工系女性人材の育成に、政府・教育界と連携して取組む。

12.サイバーセキュリティ対策の強化

重要インフラなどをサイバー攻撃から守ることを明確にし、国際的な連携を推進しながら、サイバーセキュリティ対策を強化するよう求める。官民連携により、情報共有の強化、演習の実施、技術開発、人材育成に取組む。

経団連としても、サイバーセキュリティを技術上の問題だけではなく、企業の経営上の重要課題と位置付け、業種間の連携や経営層の意識改革などに取組む。

13.東京オリンピック・パラリンピック等への積極的な取組み

東京オリンピック・パラリンピック等の開催を経済の中長期的な成長力を高めていく契機とする観点から、鋭意準備を進めるよう求める。大会に向けて、関連施設ならびに政府機関や企業に対するサイバー攻撃の集中が予想される中、官民連携して対策を強化する。

経団連としても、日商・東商、経済同友会とともに「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」などを通じ、大会の成功とレガシーの形成に向けて積極的に取組む。

14.経団連改革の推進

経団連は、社会からの信頼と期待を一層高めつつ、経済・社会の変革をリードするとの気概を持って、これまで以上に積極的な政策提言、行動・働きかけ、対外発信を行う。そのため、政策委員会の再編、地方経済団体との意見交換の活発化や他の経済団体との一層の連携に取組む。さらに、経団連活動の海外展開を強化するため、米国事務所の再開をはじめ、海外拠点を拡充する。

以上

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