一般社団法人 日本経済団体連合会
本年1月に、安倍総理から、前政権のエネルギー・環境戦略をゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築するよう指示が出された。これを受け、政府では、年内を目途に新しい「エネルギー基本計画」の策定作業が進められている。
国民生活や事業活動の基盤であるエネルギーに関し、東日本大震災以降、わが国は様々な困難に直面してきた。産業界は、今回の政府の動きを歓迎し、新基本計画に強い期待を寄せている。
加えて、デフレから本格的に脱却し、成長を目指すべく、政府は6月に日本再興戦略を閣議決定した。同戦略が目指す今後10年間の平均で名目3%、実質2%程度の成長を実現するためには、事業活動の維持や新規投資の前提となるエネルギーが、経済性のある価格で安定的に確保される必要がある。
経団連は、これまで福島第一原子力発電所事故の教訓を十分活かし、安全性の確保を大前提にバランスのとれたエネルギー政策を構築するよう訴えてきた#1が、今回の新基本計画の策定に向け、改めて下記の通り提言する。
1.当面の重要課題
(1) 福島第一原子力発電所における汚染水問題の根本的解決は、福島県の復興・再生に不可欠である。こうしたなか、先般、国が前面に立って抜本的な対策を講じる旨の基本方針#2を政府が決定したことは高く評価でき、今後の着実な実行が強く求められる。特に、海域環境での放射性物質のモニタリングと情報公開の徹底により、国内のみならず国際社会の不安払しょくや風評被害の防止に努める必要がある。また、同様に、福島の復興の前提となる除染についても、国のより積極的な役割が期待される。
併せて、廃炉措置も重要である。研究開発推進や国民との対話強化等を定めた中長期ロードマップ#3を継続的に見直しながら、官民の総力を結集した着実な取組みが重要である。(2) 震災および原子力発電所の停止に伴う電力の供給不安・料金上昇問題は未だ解決には程遠い。関係者の懸命な努力で大規模停電こそ回避されているものの、毎夏・毎冬、節電要請の必要性をめぐり電力需給見通しを検証しなければならない不安定な状況は、企業の投資意欲の抑制要因となっている。また、原子力発電所の稼働停止に伴う火力代替コストは今年度3.6兆円に及ぶと試算されている。これが、電力料金の上昇や貿易収支の悪化をもたらし、産業競争力の強化や経済成長の足かせとなっている。
回復軌道に乗り始めた日本経済を、本格的な成長へ確実に導くうえで、安価・安定的なエネルギーの確保が不可欠である。企業が安心して生産・投資計画を立てられるよう#4、今後3年~5年程度の電力の経済性ある価格での安定供給確保のための確固たる工程表を早急に提示し、実行に移すべきである。
そのためには、安全性の確保を大前提に、原子力発電所の再稼働プロセスを可能な限り加速する必要がある。引き続き、原子力規制委員会による効率的な安全審査#5とともに、地元自治体の理解を得られるよう政府および原子力規制委員会には丁寧な説明が求められる。(3) なお、エネルギー価格の上昇要因の一つとなっている地球温暖化対策のための税#6は、課税の廃止を含め抜本的に見直すべきである。少なくとも、2014年4月に予定されている二段階目の税率引き上げは凍結すべきである。
2.今後のエネルギー政策に関する基本的考え方
(1) エネルギーをめぐり、わが国は以前より、以下の諸課題に直面してきた。
- エネルギー自給率の低さ#7に加え、原油の約8割を中東に依存するなど大きな地政学的リスクを抱えている。加えて、島国であり近隣諸国とのエネルギーの相互融通が困難である。
- 新興国の追い上げなど益々激化するグローバル競争の中で、エネルギーの価格や安定供給面でも立地競争力のイコールフッティングが急務である。
- 2020年以降の温暖化防止の新たな国際枠組みを決定するCOP21を再来年に控え、地球温暖化問題への主体的な取組みが強く求められている。
こうした点に加え、福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電所の安全性に対する国民の信頼は大きく揺らいでいる。
(2) 各エネルギーには、それぞれに長所・短所がある。わが国を取り巻く諸課題を踏まえれば、多様なエネルギー源を選択肢としてしっかりと維持し続けていくことが重要である。これにより、安全性の確保を大前提に、エネルギーの安全保障(安定供給)、経済性、環境適合性(「S+3E」)の適切なバランスが確保されるエネルギー・ミックスが実現されなければならない。
また、中長期的視点に立った技術革新も重要である。わが国が有する環境・エネルギー分野での優れた技術力を更に強化することで、各エネルギーの長所を伸ばし、短所を補い、利用価値をより高めていくことが可能となる。
新たな基本計画では、わが国のエネルギー供給構造の強化とエネルギー需要構造の高効率化を共に実現するとともに、技術革新を促進するための、具体的取組みが求められる。
3.エネルギー供給構造の強化
(1) 化石燃料
石炭等の化石燃料は、資源確保やCO2排出の面で課題はあるものの、経済性および出力安定性の点で相対的に優れており、引き続き有効活用していくべきである。
石炭火力発電所の環境アセスメントについて、本年4月末に政府より柔軟な対処方針#8が示されたことを歓迎する。今後、同方針に沿った運用が着実に実施されることを期待したい。
わが国は化石燃料の大宗を海外に依存しており、安価・安定供給確保のためには、海外権益の確保や価格交渉力の強化等に官民が協力して取組む必要がある。この点、安倍総理をはじめ政府首脳により、積極的な資源外交が展開されていることを高く評価したい。
中長期的には、メタンハイドレート等、わが国近海に賦存する海洋資源の開発・商業ベース化も実現すべき重要な課題である。産業界としても、採掘技術の開発・実用化に取組むが、政府には引き続きの支援を望みたい。
石油については、発電燃料としてのコストに課題があるものの、輸送用燃料・暖房燃料等の用途を中心に、依然として基幹エネルギーとして国民生活を支えている。将来のエネルギーのベストミックスにおいても引き続き重要な役割を果たすことが期待される。
天然ガスについては、供給の安定性や優れた環境適合性の観点から、今後の更なる活用が望まれる。近年生産が増加している非在来型天然ガスの活用も含め、より安価・安定的な利用を可能とするための環境整備に向けた検討が求められる。
加えて、化石燃料利用に伴う環境負荷を低減するため、火力発電等の一層の高効率化・低炭素化に向けた、研究開発および実用化に官民一体となって取組む必要がある#9。
(2) 原子力
資源の乏しいわが国にとって、原子力は、エネルギー安全保障や経済的な価格での電力供給確保の観点から、極めて重要なエネルギー源である。また、原子力の活用は、国内の温暖化対策にも資するのみならず、地球規模でのエネルギー問題・気候変動問題の解決に貢献する#10。
したがって、安全性の確保を大前提に、国として原子力を引き続きベース電源として活用していくとの基本的考えを、エネルギー基本計画に明記すべきである。原子力について、国が確固たる方針を示すことは、原子力の安全を支える人材および技術の維持・強化の観点からも重要である。
また、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、以下の取組みが不可欠である。
原子力安全体制の強化・充実
原子力規制委員会が進めている原子力規制行政の信頼回復と原子力発電所の安全基準適合性審査等を技術的に支援するため、原子力規制委員会設置法附則第6条第4項の規定に従い、原子力安全基盤機構(JNES)を原子力規制委員会に早期に統合する必要がある。
また、(ア)原子力発電所地元自治体との対話の強化、(イ)独立性・透明性の確保を大前提に、原子力発電所の設計・運用において実務経験を蓄積している事業者およびメーカーをはじめとする専門家とのコミュニケーションの円滑化・知見の共有等を通じ、原子力規制委員会は、関係者と協力しながら、更なる安全・安心の向上を目指していくことが求められる。
事業者およびメーカーは、規制が求める安全水準の達成のみで満足することなく、「原子力安全推進協会(JANSI)#11」の活動の推進も含め、一層の安全性向上に向けた自主的・不断の取組みを行うことが極めて重要である。原子力損害賠償制度の再構築
現在の原子力損害賠償法は、私人間の関係を規律する民法の不法行為の仕組みを基本としており、私人である事業者が直接個々の被害者に対応し、損害を賠償する構造となっている。しかし、福島第一原子力発電所の事故に見られるように、損害が多数・広範囲・多様となる原子力災害においては、事業者に対応を委ねる仕組みでは、迅速な被害者救済に限界がある。
また、「原子力事業の健全な発達」が法目的のひとつであるにもかかわらず、事業者に無過失・無限の責任を課す一方、「異常に巨大な天災地変」の場合に事業者免責を規定する3条但書きが適用される範囲も不明確であるなど、事業リスクの予見可能性が担保されていない。
今般の事故により明らかになった以上の課題を踏まえ、被害者保護の強化と原子力事業の健全な発達を今後図る観点から、原子力損害賠償支援機構法の附則#12に従い、原子力事故における国の役割の明確化も含めてできるだけ早期に検討を行い、この結果に基づき、法改正を含め必要な措置を講ずるべきである。核燃料サイクルの確立
ウラン資源の有効利用と高レベル放射性廃棄物の減量化を図る観点から、核燃料サイクルの確立が重要である。
こうした観点から、青森県六ヶ所村で稼働準備中の再処理工場、MOX工場および青森県むつ市で建設中の中間貯蔵施設の早期稼働が期待される。
加えて、再処理後の高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の処分地を決めるための取組みを強化する必要がある。
さらに、高速増殖炉サイクルについては、先般とりまとめられた「日本原子力研究開発機構の改革の基本的方向」に沿って、同機構を抜本的に改革することを大前提に、研究開発を着実に推進すべきである。
核燃料サイクルは、核保有国以外でわが国のみが米国から認められている権利#13である。原子力の平和的利用に貢献するためにも、この権利を確保していく必要がある。
(3) 再生可能エネルギー
再生可能エネルギーは、特に資源の乏しいわが国のエネルギーの安全保障や地球温暖化防止の観点から極めて高いポテンシャルを有する重要なエネルギーである。一方で、現時点では、非効率・不安定・高コスト#14という課題を抱えており、産業界として、更なる研究開発・実証・実用化に注力する所存である。政府には、研究開発税制の強化など中長期的な視点に立った支援を期待する。
注力すべき重要な革新的技術として、例えば、地熱貯留層の高精度探査技術の高度化、ナノ構造体を用いたセルの活用による太陽光発電の高効率化、太陽・風力エネルギーのキャリアとしての水素等の製造・輸送・貯蔵技術の開発、波力発電および潮流発電の技術開発・実用化、蓄電池の高性能化等が挙げられる#15。
また、農地等の規制緩和や環境アセスメント手続きの簡素化も求められる。
他方、現行の固定価格買取制度については、将来の国民負担の急増が見込まれる、相対的に低コストの再生可能エネルギーの導入拡大が阻害されるおそれがある、イノベーションの阻害要因となるなど、多くの問題が指摘されている#16。政府は、こうした指摘を踏まえ、直ちに制度を是正するとともに、再生可能エネルギー特別措置法附則第10条第1項および第2項の規定に基づき、エネルギー基本計画の見直しの機会をとらえて、本制度が再生可能エネルギーの効率的普及の観点から真に適切で持続可能な制度なのかを含め、抜本的見直しに着手すべきである。
(4) 電力システム改革
国民生活や事業活動にとって、良質な電力が経済性のある価格で安定的に供給されることが不可欠である。この観点から、電力分野における競争的な市場環境の整備や新たな市場の創出を通じ、わが国の電力システムの効率化を図ることは重要な課題である。
電力システムのあるべき姿については、諸外国においても今なお試行錯誤が続けられている。特に、震災後、電力供給不足が恒常化しているわが国においては、今後の改革の方向性をめぐり指摘されている様々なリスク要因#17が顕在化しないようにすることが必要である。エネルギー政策の大きな目的である、良質な電力の経済性のある価格での安定供給が確保されるよう、幅広い関係者の意見を聞きながら、諸外国の経験をも踏まえた丹念な検討が求められる。その際、発送電分離等の電力システム改革が、電力システムの効率性や電力料金等に与える影響について、具体的な分析を行い、国民および産業界に対してわかりやすく示すべきである。
4.エネルギー需要構造の高効率化
エネルギーの供給構造の強化と併せて、省エネルギーの推進など需要構造の高効率化を図ることが重要であり、産業界としても、省エネ技術の開発・普及に最大限取組んでいく#18。
政府は、企業活力を削ぐ規制や負担を課すのではなく、投資減税等の省エネ機器・設備の普及促進策の推進、研究開発税制の拡充や実証研究の支援等、企業の取組みを後押しする政策を進めるべきである。また、技術に裏付けられた適切な省エネ基準の設定、節電や省エネ機器への買い替え促進のための国民運動の展開も求められる。
エネルギー基本計画の策定にあたっては、その前提となる将来の具体的なエネルギー需要を見通す必要がある。その際、成長戦略との整合性を確保するとともに、国民負担も含め省エネの実現可能性を丁寧に検証すべきである#19。また、第三者による検証を可能とするような詳細な情報開示が不可欠である。
5.革新的技術の開発・技術の国内外への普及
中長期的観点に立って、わが国および世界が直面する、安全保障(安定供給)、経済成長、温室効果ガスの削減という三つの課題を解決するうえで、革新的技術の開発への不断の取組みが不可欠である。
産業界としては、これまで開発してきた世界最高水準の技術を基に革新的技術の開発に貢献する決意である。また、開発された技術の国内外への普及は、世界規模での課題解決のみならず、わが国の成長にも資することとなる。
政府には、「環境エネルギー技術革新計画」に基づく具体的なロードマップを作成・民間と共有したうえで、重点分野の革新的技術開発を人材育成と併せて国を挙げて推進することが求められる。
また、わが国の技術を通じた国際貢献#20を実現するうえで、二国間オフセット・メカニズムは有効な手法であり、政府には、引き続き、産業界との密接な意見交換を行いながら、同メカニズムの促進に向けた取組みを望みたい#21。
- 「エネルギー政策に関する第1次提言」(http://www.keidanren.or.jp/policy/2011/078.html)、
「エネルギー政策に関する第2次提言」(http://www.keidanren.or.jp/policy/2011/107.html)、
「エネルギー・環境に関する選択肢に関する意見」(http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/057.html)、
「エネルギー政策の再構築を求める」(http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/088.html)参照。 - 原子力災害対策本部「東京電力福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針」(2013年9月3日) (http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/osensuitaisaku_houshin_01.pdf)参照。
- 原子力災害対策本部東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議「東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉措置等に向けた中長期ロードマップ」(2013年6月27日) (http://www.meti.go.jp/press/2013/06/20130627002/20130627002-3.pdf)参照。
- 本年4月の電力問題に関する緊急アンケート結果では、今後電力の供給不安・節電要請と料金の上昇が重なった場合、製造業では、81.7%が生産を減少又は大きく減少させる、55.0%が国内設備投資を減少又は大きく減少させると回答(http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/031.pdf)。
- 経団連「『原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)』等に対する意見」(2013年5月10日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/043.html)参照。
- 現状では、(1)東日本大震災後の状況変化より、当初の見積もりを超える税収(平成25年度当初予算の石油石炭税の税収6,500億円のうち、1,020億円(18.6%)は、化石燃料消費増によるものと推定される)がある一方、(2)徴収されたまま一般会計に留保され温暖化対策に活用されていない税収(上述の税収6,500億円のうち、一般会計に1,304億円(20.0%)が留保される)や(3)エネルギー対策特別会計に繰り入れられても、使用されず、翌年に繰り越されている税収(平成25年度当初予算では、前年度のエネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定の剰余金は、1,717億円(同勘定全体の24.5%))もあり、引き上げの必要性は極めて疑問である。
- 震災および原子力発電所の停止により、エネルギー自給率は19.5%(うち原子力は15.1%)(2010年)から6.0%(うち原子力は0.6%)(2012年推定)へと一層低下している。
- 経済産業省・環境省「東京電力の火力電源入札に関する関係局長会議取りまとめ」(2013年4月25日) (http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130426003/20130426003-3.pdf)参照。
- 具体的な技術については、経団連「エネルギー・低炭素化関連技術アンケート結果概要」(2013年7月22日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/069_kekka.pdf)参照。
- 原子力発電所1基(120万kW)を火力発電所(石炭)で代替した場合のCO2排出増は、年間610万トン~650万トンとされる。
- 2012年11月、電気事業者およびメーカー等は、原子力施設における安全性向上対策や運営状況の評価と提言・勧告および支援等を行う組織として、「原子力安全推進協会(JANSI)」を設立。
- 附則第6条第1項は、「法律の施行後できるだけ早期に、…賠償法の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずる」とする。なお、「できるだけ早期に」とは、法案の附帯決議によれば、「1年を目途」とされる。
- 日米原子力協定によって認められており、1988年に発効した現行協定は、2018年7月に30年間の有効期間が終了する。
- 発電コストの他に、系統安定化対策費用やバックアップ電源費用も必要となる。
- 経団連「エネルギー・低炭素化関連技術アンケート結果概要」(2013年7月22日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/069_kekka.pdf)等参照。
- 例えば、(1)諸外国より相当程度高い買取価格が設定されている、(2)大規模電源としては特に高額な買取価格が設定されている太陽光発電が集中的に設備認定されている(2013年5月末までに認定を受けた2237万kWの設備の内、太陽光発電(非住宅)が87%、太陽光発電(住宅)が7%を占めている)。また、諸外国と異なり、認定時の買取価格が適用されるため、建設を意図的に遅らせ太陽光パネルの価格の低下を待つケースがあるとの指摘もある。仮にこうしたことが行われれば、実際の発電設備コストより相当有利な価格での買取が行われることとなるばかりか、早期に運転を開始する意欲がある事業者が、結果的に系統接続の権利を得られず排除される可能性がある。
また、固定価格買取制度のもとでは、既存の技術の活用で長期間にわたり一定の収益が保証される他、コスト削減努力が将来の買取価格の低下につながることなどから、経営の効率化や技術革新へのインセンティブが働きにくい。 - 例えば発送電分離をめぐっては以下の点が指摘されている。
- (1)各事業者が採算性を踏まえて電源投資(発電所建設)の是非を決めるため、特に、原子力のような長期・大規模な投資が必要となる電源や、ピーク電源や再生可能エネルギーのバックアップ電源等、低い稼働率が見込まれる電源への投資が確保されなくなる可能性がある。
- (2)発電部門・送配電部門・小売部門が法的に分離されることにより、各部門の連携が困難となり、系統の安定性が確保されなくなる可能性がある。特に、災害時等の緊急事態において、各部門の連携による電力の安定供給や市場における安定的な電力調達が困難となる可能性がある。
- (3)諸外国においては、電力価格の低下につながっておらず、むしろ改革後に上昇しているケースが多い。
- (4)電力会社の信用力が過度に低下し、金融市場の混乱を招く一方、発電事業者の資金調達に支障が生じる可能性がある。
- (5)国策として推進してきたエネルギー安全保障(エネルギー源の多様性の確保)や環境適合性が確保されない可能性がある。
- 具体的な技術については、経団連「エネルギー・低炭素化関連技術アンケート結果概要」(2013年7月22日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/069_kekka.pdf)参照。
- 実現可能性の検証にあたっては、大規模な省エネ投資を企業が行うには、国内事業の維持・拡大を見込める経済環境が前提であることや、従来、省エネコストとして勘案されてこなかったと考えられる対策実施に必要な人件費や機会費用等についても考慮すべきである。
- エネルギー分野における具体的な技術分野としては、火力発電所の運用管理技術、バイオディーゼル燃料の製造、熱電併給設備、ディーゼル発電機と太陽光の併用、携帯電話基地への太陽光と蓄電池の導入、LNG技術の活用が考えられる。詳細は、経団連「二国間オフセット・メカニズムに関するアンケート結果」(2013年4月6日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/036.pdf)参照。
- 経団連「攻めの地球温暖化外交戦略への提言」(2013年7月16日) (http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/065.html)参照。