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Policy(提言・報告書)  環境、エネルギー 真に実効的な将来枠組みの構築に向けて -COP19への提言-

2013年10月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

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1.はじめに

長期的観点から取り組むべき人類共通の課題として、地球温暖化問題に対する、全ての国の責任ある行動が求められている。

しかし、過去20年にも及ぶ国連気候変動交渉は、各国の温室効果ガス排出総量目標をトップダウンで設定しようとしたため、排出削減に参加しようとする国の裾野を広げることはできなかった。この結果、京都議定書は、地球温暖化対策の第一歩としての意義はあったものの、発効後も世界の温室効果ガス排出量は抑制できていない。

一方、2020年以降の将来枠組みの在り方をめぐる最近の国連交渉では、「各国が目標・対策を自己決定し国際的にレビューする」ボトムアップ型アプローチを支持する機運が広がりつつある。これは、全ての国の責任ある参加を促す上で極めて有効な仕組みと言える。

日本の産業界はこれまで、排出量取引等のトップダウン型の制度ではなく、ボトムアップ型の自主行動計画のもと、国内の実際の排出削減に着実な成果を上げる(図1・2、表1参照)とともに、省エネ・低炭素型の技術開発・普及等に大きく貢献してきた。加えて、企業間の効果的な連携や情報交換も促進された。

こうした経験を踏まえ、2020年以降の将来枠組みの構築に向けた国際的な議論の一助とすべく、気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)に対し、以下の通り提言する。

2.日本の産業界の取組み

(1)PDCAサイクルの重要性

ボトムアップ型は極めて有効なアプローチであるが、各主体から最大限の目標をいかに引き出すか、確実な実行をいかに担保するかといった信頼性、透明性をめぐる課題がある。こうした点に関し、経団連自主行動計画のPDCAサイクルは有益な示唆を与えると考えられる(図3参照)。

  1. 参加業種は設備の新設・更新時にBAT(Best Available Technologies)を最大限導入することを前提に、技術に裏付けられた削減目標を設定するとともに、自らの目標の妥当性について、説明責任を負う。
  2. 参加業種の目標と計画の進捗状況を業界内・産業界全体で検証するとともに、第三者による評価委員会や政府の審議会が評価・検証を行う。
  3. 参加業種は、一連のレビュー結果を踏まえ、必要に応じて計画を見直す。これまでに延べ39業種が、目標達成が視野に入ったとして、自らの目標水準を引き上げた。

(2)長期的かつ地球規模の削減に向けて

自主行動計画は、京都議定書第一約束期間とともに2012年度に終了したが、産業界は2013年度以降も空白期間を設けることなく、低炭素社会実行計画を通じた新たな取組みを開始している。
同計画では、2050年の世界の温室効果ガス半減という国際社会の目標を共有し、日本企業が技術を通じて積極的に貢献していくというビジョンのもと、従来からの国内削減(ライフサイクル全体での削減を含む)に加え、国際貢献(海外での削減)、革新的技術の開発を含む3本柱のもと、地球規模の低炭素社会の実現に具体的に取り組んでいる(図4参照)。

3.将来枠組みへの示唆

(1)各国が主体的に目標を策定して国際的にレビューする枠組み

地球規模の温室効果ガス削減に向けて、全ての国の行動を促すためには、各国が自国の経済状況等を踏まえて、適切な目標・行動を策定するボトムアップ型の仕組みが有効である。加えて、信頼性・透明性を担保する観点から、各国が自国の目標・行動に関する説明責任を負うとともに、その進捗状況を国際的にレビューすることによって、各国の最大限の取組みを奨励することが可能となる。
また、省エネ対策や低炭素技術等のベスト・プラクティスの国際的な共有も、排出削減を進める上で効果的である。

(2)策定する目標・行動の内容

温暖化対策が相当進んだわが国では国内の排出削減に限界があることから、経団連低炭素社会実行計画では、国内削減(ライフサイクル全体での削減を含む)に加え、海外への技術・製品・ノウハウの移転等による国際貢献や、革新的技術の開発にも注力する方針を明確化している。
長期的かつ地球規模での削減を促す観点から、2020年以降の将来枠組みにおいては、国内での削減目標のみならず、国際貢献や革新的技術の開発等の具体的行動を促進していくことが望まれる。
この点、国連で現在議論が行われている「様々な手法」(Various Approaches)は重要である。例えば、日本が推進している二国間オフセット制度に見られるように、先進国から新興国や途上国への技術移転を具体的に進める方策を各国が独自の手法で実施していくことは、地球規模での実際の排出削減につながるものと期待される。
さらに、緩和のみならず途上国における適応への支援を国際的に評価する仕組みづくりも、適応技術の開発・普及を促す観点から重要である。

(3)国際的なレビューの充実に資する環境整備

各国の目標・行動を国際的にレビューするうえで、比較検証を行いやすいよう共通のフォーマットを定めるとともに、例えば国際エネルギー機関(IEA)等の専門機関の評価に資するデータ(各業界のエネルギー効率の国際比較等)を提示することが有効である。

(4)省エネ・低炭素型技術・製品等の開発・普及を促す環境の整備

省エネ・低炭素型の技術・製品等のビジネス・ベースでの普及は、環境と経済を両立させつつ、地球規模での排出削減を実現する推進力となる。このため、環境物品等の貿易障壁の撤廃に向けて国際的な取組みを強化する一方、知的財産の実効ある保護を前提とした、途上国への技術移転促進が実現する仕組みを構築する必要がある。
加えて、省エネ・低炭素型であるが高コストの技術・製品の普及に向け公的な支援が期待される。国連において制度設計中の資金・技術メカニズムについては、相互に有機的に連携させていくことで、地球規模での技術の普及を促進する環境の整備に資することが肝要である。

4.終わりに

経団連は、低炭素社会実行計画を通じて、国内での排出削減のみならず、途上国支援や革新的技術の開発にも積極的に取り組み、地球規模での温室効果ガス削減に引き続き貢献していく。

併せて、来たるCOP19等の場を活用し、真に実効的な将来枠組みの構築に向けて、わが国産業界の経験や考え方を積極的に情報発信していく。

以上

図1 自主行動計画の実績/表1 自主行動計画の要因分析/図2 自主行動計画のカバー率

図3 自主行動計画のレビュープロセス

図4 低炭素社会実行計画概要

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