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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 「科学技術イノベーション戦略協議会(仮称)」のあり方について

2011年3月29日
(社)日本経済団体連合会
産業技術委員会

総合科学技術会議において取りまとめられた「第4期科学技術基本計画」の答申が昨年末に内閣総理大臣に提出されており、年度内に閣議決定される予定である。答申では、イノベーション創出に資する「科学技術イノベーション政策」の一体的な推進について強く謳われているが、その中で、総合科学技術会議の「科学技術イノベーション戦略本部(以下、戦略本部)」への改組とともに、産学官をはじめ多様な関係者の参画を得ながら具体的な戦略を策定する「科学技術イノベーション戦略協議会(以下、戦略協議会)」の創設が明記されている。

日本経団連では、2010年10月19日に「イノベーション創出に資する新たな科学技術イノベーション政策の策定を求める」と題した提言を公表し、その中で、「戦略本部」の具体的要件を提示するとともに「戦略協議会」が産業界の意見を十分に反映した実効あるプラットフォームになるよう求めたところであるが、科学技術イノベーション政策の司令塔役を期待されている総合科学技術会議が、その役割・機能を十分に果たせていない現状に鑑み、まずは司令塔機能・権限の強化を図った上で、新しい司令塔たる「戦略本部」の権限・所掌範囲等を前提に、「戦略協議会」のあり方について議論を行うべきである。

そこで本提言では、まず「戦略本部」のあり方について言及した上で、「戦略協議会」の制度設計に関する産業界の意見を表明する。

1.「戦略本部」のあり方 ~司令塔機能・権限の強化~

総合科学技術会議の「戦略本部」への改組にあたっては、司令塔としての機能・権限の強化が不可欠である。現在のように基本的な権限が調査審議等にとどまるようでは真の司令塔とは言えず、「戦略協議会」を有効に機能させることも難しい。

経団連では、先の提言において、司令塔機能・権限の強化に向けた具体的要件について言及したところであるが、「戦略協議会」との関連性を踏まえ、以下3点をあらためて記すものとする。

(1)基本戦略の立案・推進に関する権限の強化

国としての重要施策を総合的かつ計画的に推進するためにも、設置法や科学技術基本法等の関連法の見直しにより、「戦略本部」の司令塔としての法律上の権限を強化する。その際、「戦略本部」の所掌範囲をICT戦略や知的財産戦略、国際標準化戦略等の関連政策まで拡大し、「戦略本部」を中心にイノベーション創出に向けた総合的な政策展開を行える体制を構築する。

(2)予算・資源配分に関する権限の強化

「戦略本部」に一定規模の予算・資源配分権限を付与し、「戦略本部」の判断で予算・資源配分を行える体制を構築する。その際、2009年度に実施された「最先端研究開発支援プログラム」を踏まえるものとする。

(3)議員・委員構成の見直し(産業界出身委員の増員)

「戦略本部」において、イノベーションまでを視野に入れた国の総合的な政策を策定するためにも、「戦略本部」の議員および関係する有識者委員の半数以上は産業界出身者とする。

2.「戦略協議会」のあり方 ~実効あるプラットフォームの構築~

冒頭で示した通り、「戦略本部」の権限や所掌範囲等が明確化されない状況で「戦略協議会」のあり方について議論することは難しい。ただし、今後、上述の提言に沿って司令塔機能が強化されることを前提に、「戦略協議会」の制度設計に関する現時点での意見を記す。

(1)「戦略協議会」の位置づけ

「戦略協議会」は、わが国が直面している重要課題の解決に資するイノベーション創出に向け、産学官をはじめとする多様な関係者の参画のもと、具体的な戦略等を策定・共有する場(プラットフォーム)として、政府内部に複数設置する。なお、「戦略協議会」において、イノベーション創出までを視野に入れた戦略を策定するためには、産業界の意見が十分に反映されるような体制を整える必要がある。
また、「戦略協議会」を単なるオブザーバー的な位置付けとするのではなく、そこでの議論を国の政策・予算に十分に反映させる体制・枠組みを構築する。

(2)「戦略ロードマップ」の策定・フォローアップ

「戦略協議会」は、各課題の解決に向けた「戦略ロードマップ」を策定する。「戦略ロードマップ」は、研究開発計画のみならず、研究成果を実用化・産業化につなげるためのプロジェクトや、規制緩和等の制度・システム改革までを含めたものとし、短・中・長期の各フェーズの達成目標を明確化した総合的なパッケージとする。その際、産学官の専門家の英知を結集して策定された経済産業省・NEDOの「技術戦略マップ」等を十分に活用し、当該課題に政府として整合的に取り組めるものとする。
また、「戦略協議会」は、「戦略ロードマップ」について毎年着実にPDCAを回す。

(3)「戦略ロードマップ」の取り扱い

各「戦略協議会」で策定された「戦略ロードマップ」は、国としての総合的なイノベーションロードマップとして取りまとめた上、予算編成プロセスにおける司令塔機能強化と府省連携促進を狙いとして2010年度に各府省の概算要求前に策定した「科学・技術重要施策アクション・プラン(以下、アクション・プラン)」に反映させる。これにより、「戦略ロードマップ」に示された研究開発及び実用化に向けたプロジェクトに対し、必要な予算措置が優先的に行われる仕組みを構築する。
なお、2010年度に策定された「アクション・プラン」は、グリーン、ライフ分野の一部のみを対象に試行的に行われたが、2011年度以降はこの対象範囲を拡充するとともに、その効力を強化することが不可欠である。

(4)出口に近い省庁との連携

「戦略協議会」の制度設計にあたっては、内閣府や文部科学省のみではなく、経済産業省をはじめとする出口に近い省庁の意見を十分に取り入れながら行う。その上で、「戦略本部」の強力なリーダーシップのもと、府省横断的な取組みを推進する体制を構築する。

以上
【参考】イメージ図

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