
田村氏
経団連は3月10日、東京・大手町の経団連会館で観光委員会(菰田正信委員長、武内紀子委員長、野本弘文委員長)を開催した。2024年の訪日外客数は約3687万人、消費額は約8兆1000億円を記録し、過去最高を更新する一方、観光地への過度な集客によるオーバーツーリズム等への対応も求められている。そこで、成田国際空港の田村明比古社長から、インバウンド拡大に向けた成田空港の施策、オーバーツーリズム対策について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ インバウンドの拡大に向けた成田空港の施策
成田空港は、インバウンドの受け入れにおいて国内最大の規模を誇るものの、今後のさらなる拡大には、施設や運営の面で課題も残されている。日本として30年に6000万人のインバウンドの受け入れを想定すると、成田空港では27年には国際線だけで4000万人の利用者に備えなければならない。そこで、短期的には搭乗手続きや手荷物搬送システム等の自動化を進める一方、鉄道アクセスの混雑対策や輸送力増強等が求められる。また、保安検査・グランドハンドリング・整備士の人材逼迫への対応も必要であり、待遇改善や基準・資格要件緩和の検討が急務となっている。さらに、輸入依存度が高まるなか、燃油不足の懸念への対応も求められることから、関係事業者や政府と一体となった取り組みを続けている。
この他に、今後さらなる拡張を行うアジア主要空港に劣後せず、増大する航空需要を取り込むべく、滑走路の延伸・新設等により年間発着回数の50万回化を実現するとともに、羽田空港と合わせて首都圏両空港で約100万回化の発着容量の確保を図っている。
こうしたなか、24年7月に公表した「新しい成田空港」構想の実現に向けて取り組みを進めており、世界の潮流である出国後エリアの拡充や、リソースの分散の解消につながるワンターミナル化などを計画している。わが国の基幹インフラとして、ヒトやモノの交流・流通を活性化することで、日本の国際交流や産業、観光の国際競争力強化に貢献することが成田空港の使命と考えている。
■ オーバーツーリズム対策のあり方
わが国では、インバウンドの拡大が進むなか、オーバーツーリズム対策も重要である。オーバーツーリズムすなわち観光公害ということではなく、訪問客と住民の双方の満足度を保ちながら、経済的恩恵を社会と環境に還元できるよう、総合的で包括的なアプローチが必要である。
具体的には、地方自治体にビジターマネジメントの実行を求めたい。これは、来訪者の行動とその影響を管理し、地域住民の生活環境を守りながら、来訪者・地域住民の満足度の向上を図るものである。海外では、オランダ・アムステルダムのように、地域としての観光収容力(キャリングキャパシティ)を定めながら、その範囲内で経済的な施策と各種規制などをバランスよく活用する例がある。国内では京都市がすでに先進的な施策を種々行っているが、今後、キャリングキャパシティの観点で取り組むことができれば、有効な施策になると期待される。
インバウンドの拡大が続くなかで、地域住民も含めた「持続可能な観光地域づくり」の重要性は高まっていく。人口減少時代を迎え、地方自治体の体力が低減していく。こうしたなかで、都道府県や市町村がビジターマネジメントを実行していくためには、自治体のリーダーシップによる適切な権限行使と観光地域づくり法人(DMO)等関係者の緊密な連携・協力が重要である。地域経営の視点において、民間企業の果たす役割も大きくなると考えている。
【産業政策本部】