夏季フォーラム第1セッションでは、米戦略国際問題研究所(CSIS)所長のジョン・ハムレ所長とマイケル・グリーン上級副所長から「激変する国際情勢とトランプ政権」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。講演のポイントは次のとおり。
■ トランプ政権について
トランプ政権の動きを理解するうえでは、内部の派閥争いについて理解する必要がある。政権内部では、エスタブリッシュメントを罰しようとする「破壊者」、ニューヨークの金融界、国家安全保障チームの3者が派閥に分かれて対立している。どの派閥が支配的な立場を得るかによって、トランプ政権の動きは変化する。今後も様子をみる必要がある。
■ アメリカの内政について
オバマケア廃止の是非をめぐる議論を中心に、共和党が内紛状態に陥るなか、もはや共和党は議会において優勢とはいえない。共和党・民主党ともにアメリカの将来像を描けずにおり、両者の争いはしばらく続くだろう。議会が機能不全に陥るなかで、州知事や、経済界・大学などのリーダーに対してアプローチしていくことが重要である。
■ 国際情勢について
米国の将来にとっての本当の国益とは何か、米国はあらためて考えなくてはならない。トランプ大統領は中国・ロシアに対して必ずしも否定的な感情を持っていないようにみえる。そうしたなかで、目下、これまでになかったほど、日米同盟が重要になってきている。日本は、これまでのように米国の“弟”としてではなく、アジアを含めグローバルにリーダーを務めていくべきである。
ロス商務長官は日米FTA交渉を主張しているが、その前にまず、NAFTA・米韓FTAの再交渉が待ち構えている。先日発表されたNAFTA再交渉の内容をみると、ほとんどTPP(環太平洋パートナーシップ)と変わらない。日米FTAについては、実際の交渉に入るのではなく、まずはモデルFTAの議論をすべきだ。アメリカには、まだバイの交渉の準備ができていないからである。
日本、カナダ、メキシコ、オーストラリアは、決してアメリカについて諦めずに、TPPを進めている。日本のリードでTPPの枠組みをつくり直せば、いずれアメリカが、国益を最優先してTPPに戻ってくると思う。我慢強く、アメリカの政治にお付き合いいただきたい。
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その後、北朝鮮問題、中東問題、中国の一帯一路構想、アメリカのパリ協定離脱への対応などについて、活発に意見交換が行われた。
【政治・社会本部】