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月刊 経団連

月刊 経団連2019年8月号

特集 Society 5.0実現に向けたエネルギー・温暖化対策

巻頭言

次世代への責任とおもい

畑中好彦 (経団連審議員会副議長/アステラス製薬会長)

医師・公衆衛生学者ハンス・ロスリングは、著書『FACTFULNESS』において、事実に基づいた世界の見方を身に付けることの重要性を提唱している。正しい判断をするには、悲観的にとらえがちな本能を抑え、事実を正確に理解する習慣を身に付ける必要がある。

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特集

Society 5.0実現に向けたエネルギー・温暖化対策

世界では、パリ協定やSDGsの採択以来、地球温暖化対策やエネルギーアクセスの確保、経済成長の実現等が両立する施策展開の重要性が一層高まっている。こうしたなか、G20の議長国として議論を主導した日本は、Society 5.0の実現も見据え、均整の取れたエネルギー・温暖化対策を着実に実行に移し、国際社会におけるリーダーシップを発揮していくことが求められる。
エネルギーをめぐっては、2018年7月に閣議決定された「エネルギー基本計画」を踏まえ、S+3Eの高度化や3D(脱炭素化・デジタル化・分散化)の推進に向け、過小投資問題等の課題に立ち向かう必要がある。地球温暖化対策についても、2050年以降を見据えた「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」で掲げたビジョンの実現を目指し、イノベーションの創出等に全力を傾ける必要がある。
こうした状況を踏まえ、本座談会では、今後、わが国が取り組むべきエネルギー・温暖化対策の方向性等について議論する。

座談会:エネルギー・温暖化対策の針路 ─Society 5.0 に向けて

  • 小野 透 (経団連資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行/日本製鉄技術総括部上席主幹)
  • 地下誠二 (日本政策投資銀行取締役常務執行役員)
  • 紀ノ岡幸次 (関西電力エネルギー・環境企画室エネルギー・環境企画部長)
  • 秋元圭吾 (地球環境産業技術研究機構システム研究グループ グループリーダー・主席研究員)
  • 竹内純子 (司会:21世紀政策研究所研究副主幹)
  • ■ エネルギー・地球温暖化対策をめぐる状況変化
  • 長期目標には不確実性がある、短中期では“低”炭素化も重要
  • 原子力の安全文化の再構築、再エネの主力電源化が課題
  • S+3Eの確保が長期ビジョンの前提
  • 長期が見通せないとファイナンスの対象になりづらい
  • ■ エネルギー転換の実現に向けた課題と方向性
  • 分散型システムと系統システムの両立
  • コストは需要家にとって死活問題、今の技術を超えるチャレンジを
  • Society 5.0でエネルギー需要が変わる
  • カーボンプライシングはイノベーションを阻害
  • 投資回収の予見可能性を高める仕組みの設計が必要
  • ■ 国際社会において日本が果たすべき役割
  • 日本の技術を海外に、金融もその分野で貢献できる
  • 送配電技術の世界貢献、アジアから全世界へ
  • 社会システムを含めた海外貢献を目指す
  • GVCを通じて地球規模の温暖化対策に貢献する

【会長インタビュー】
日本の電力は危機的状況 今すぐ改革を

 中西宏明(経団連会長)

「日本の電力は危機的状況にある」
─中西宏明会長が2018年6月の会長就任以来、繰り返してきた言葉だ。
その危機感のもとで経団連は、提言「日本を支える電力システムを再構築する」(2019年4月)を取りまとめ、世に問うなど、電力政策への関与を深めている。
一方で、私たちが電気を利用した生活をつつがなく送れている今、日本の電力は一体「どのような」危機に直面し、「何を」乗り越える必要があるのか。
ともすれば専門的な議論に閉じてしまいがちな電力問題について、中西会長に考えを聞いた。
  • 電力問題の考え方
  • 日本の電力が直面する「4つの危機」
  • 再エネ普及には送配電の制度改革が必須
  • 再エネの大幅拡大には技術的なブレークスルーも必要
  • 原子力技術を捨て去るべきではない
  • 全体最適を実現するエネルギー政策を目指して

世界のエネルギー転換実現に向けたキーファクター
 ファティ・ビロル(国際エネルギー機関(IEA)事務局長)

原子力の安全性確保に向けた取り組み
 門上 英(原子力エネルギー協議会(ATENA)理事長)

  • ATENAの役割
  • 規制当局との対話の重要性
  • 今後の抱負

カーボンリサイクルの実現に向けて
―新時代における世界のエネルギーセキュリティーと気候変動問題の同時解決に向けたキーテクノロジー
 南 亮(資源エネルギー庁資源・燃料部長/カーボンリサイクル室長)

  • 世界のエネルギーアクセス改善・脱炭素社会の実現を両立するイノベーション
  • カーボンリサイクルの実現に向けて

再エネの環境価値評価としての非化石証書のあり方
 朝野賢司(電力中央研究所社会経済研究所エネルギーシステム分析領域上席研究員)

  • 課題1:FIT非化石取引による賦課金軽減効果がない
  • 課題2:FIT電源の環境価値の投げ売り
  • 再エネ比率向上は費用対効果の観点から現実的な手段を

「脱炭素社会」の実現に向けた長期戦略
 森下 哲(環境省地球環境審議官(前地球環境局長)

  • 最終到達点としての「脱炭素社会」
  • 環境と成長の好循環の実現
  • ビジネス主導の非連続なイノベーション
  • 「地域循環共生圏」とSociety 5.0

温暖化対策技術のイノベーションをどう進めるか
 杉山大志(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

  • アフォーダブルな技術
  • 裾野の広い製造業基盤
  • 政府の役割

Society 5.0を支える電力システムの実現に向けて
(日立東大ラボの提言から)

 吉村 忍(東京大学副学長)

  • 将来のエネルギーシステムのあるべき姿
  • 社会的合意形成に向けた議論の高まり
  • 横断的人材の育成

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一般記事

第10回日本コロンビア経済合同委員会をボゴタで開催
 小林 健(経団連副会長、日本コロンビア経済委員長/三菱商事会長)

  • 日コロンビアEPAの早期実現を求める
  • 投資機会と新たな協力の可能性
  • 共同声明を採択し、大統領に手交

世界第5位の経済規模を持つカリフォルニア州との関係強化を実現
―ロサンゼルス、サクラメント、サンフランシスコの3都市を訪問
 植木義晴(経団連アメリカ委員長/日本航空会長)
 吉川英一(経団連アメリカ委員会連携強化部会長/三菱UFJ銀行副頭取)

  • 日本企業の経済的・社会的貢献の発信と現地日系人コミュニティーとの関係構築
  • カリフォルニア州の優先課題とSociety 5.0 for SDGsに向けた取り組み
  • 自由で開かれた経済秩序の重要性
  • 日米関係強化に向けた継続的な連携を約束

今、新スポーツ「カーレット」が面白い!
―コミュニケーション&頭脳スポーツの魅力を発信中
 田邊陽二(カーレットジャパン協会理事長)

連載

  • 多様性が輝くユニバーサル社会へ (1)
    ―共創・連携・価値創造への経済界の取り組み
    ANAグループ
    河本宏子(経団連生活サービス委員会企画部会長/ANA総合研究所副社長)

  • 経営者のひととき
    庭いじり
    不死原正文(太平洋セメント社長)

  • Essay「時の調べ」
    伝統の創造こそが日本文化の本来の姿だ
    岸川雅範(神田明神権禰宜)

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