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会長コメント/スピーチ  会長スピーチ パネルディスカッションにおける榊原会長講演 女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW!Tokyo2014)

2014年9月12日

本日は、このように重要なシンポジウムにパネリストとして参加できますことを、大変光栄に思います。

私がこのパネルディスカッションを通じて伝えたい事は、女性の活躍推進の鍵は企業および社会全体の意識改革にあり、そのためにはトップによる明確なコミットメントとリーダーシップが不可欠であるということです。
経団連といたしましても、経済界の先頭に立って経営者にそのようなコミットメントとリーダーシップの発揮を促すことにより、企業の意識改革を推進し、安倍総理の目指す「女性が輝く社会」を、ともに実現してまいりたいと考えております。

そもそも、なぜ、女性の活躍を推進する必要があるのでしょうか。女性の活躍は、単に女性のためだけの施策ではありません。少子高齢化の下で、日本の経済社会が持続的に成長を続けるための重要な成長戦略であります。2050年には人口が1億人に減少し、生産年齢人口の割合が50%に低下するなかで、高齢者の活用と共に未だ十分に発揮されていない女性の能力を引き出していくことが不可欠です。
同時に、女性の活躍は、企業が厳しいグローバル競争を勝ち抜くための重要な経営戦略でもあります。グローバル化に伴う市場環境、経営環境の急激な変化に対応するためには、組織のダイバーシティを高めることにより、企業の競争力を強化しなければなりません。これは企業の存続、ひいては日本経済の持続的成長を賭けた切り札でもあります。

それでは、日本企業における女性の活躍の現状はどうでしょうか。日本企業は、1986年の男女雇用機会均等法施行以来、試行錯誤を重ねながら、育児休業や育児短時間勤務など両立支援制度を整え、女性が働き続けやすい職場づくりに取り組んでまいりました。その結果、多くの大企業において、女性社員が結婚・出産を理由に辞めることなく働き続けることは、今日では当然のこととなりつつあります。

ところが、女性の役員・管理職登用については、諸外国に比べても大きく遅れています。社外取締役として活躍される女性は増えていますが、生え抜きの役員を登用するためのパイプラインがまだまだ細いのです。企業の女性活躍推進の焦点は、「辞めさせないこと」から「引き上げること」へと移りつつあります。
なぜ、日本企業において、女性の管理職登用が進まないのでしょうか。よく挙げられるのが、「女性社員自身のキャリア意識や昇進意欲が低い」ということですが、本当にそれだけが原因でしょうか。確かに、周りに女性の管理職が少ないことや、家事・育児との両立に対する不安から、管理職になるのをためらう女性はいます。そこで、女性を対象としたキャリア研修やメンタリングの実施、女性社員ネットワークの構築などにより、そのような不安を解消し、キャリア意識を喚起していくことが重要です。
しかし、問題は女性の意識だけにあるわけではありません。企業としても、女性のキャリア形成に配慮すべき点が沢山あります。キャリア形成上、重要な時期と結婚・出産が重なることで、女性社員のキャリア形成は遅れがちになります。早めにチームリーダー等の重要な任務を経験させ、成功体験を積ませるなどの工夫が求められます。
評価や昇格が公平であるべきことは言うまでもありませんが、女性登用に一定の道筋がつくまでの間は、キャリア形成の機会を女性により手厚く与えたり、幹部候補の女性に対し個別育成計画を策定したりするといったポジティブ・アクションが必要と考えられます。

同時に、今のところ男性が多い管理職層の、女性部下に対する意識・マネジメントの問題も大きな要因です。育児中の女性に配慮するあまり、十分にコミュニケーションをとらないまま重要な仕事を与えず、かえってモチベーションを低下させるといった問題が生じています。意識改革は、管理職研修等のあらゆる機会をとらえて地道に働きかけていくしかありません。
そして最後は、日本企業の多くに依然として存在する、長時間労働の慣行です。これに「男性は仕事、女性は家庭」という固定的役割分担意識も加わり、日本男性の家事・育児時間はきわめて少ないのが実情です。
その結果、女性は仕事と家事・育児の板挟みになり、昇進を諦めてしまうのです。働いた時間ではなく成果によって評価することにより、効率的な働き方に改め、仕事だけでなく家事・育児も男女が共同で分かち合うという意識改革を、男女問わず会社・社会全体で、進める必要があります。

これらの課題は、単に制度を整えるだけで解決できるものではなく、社員ひとりひとりの意識や社内の慣行、文化といったものに関わるところに、その難しさがあります。企業風土そのものを「男性社会」から「ダイバーシティ社会」へと変えていく必要があるのです。男女を問わず、全社員にこの意識を浸透させるためには、経営トップがダイバーシティの推進に明確なコミットメントを行い、その達成に向けて強いリーダーシップを発揮することが何よりも重要です。

経営トップのコミットメントを示す手段として、経団連は、具体的な行動計画の策定・公表が有効であると考えました。
そこで、今年4月に公表した「女性活躍アクション・プラン」の第一のアクションとして、会員企業に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」の策定・公表をお願いしています。すでに第一弾として、本年7月に経団連のウェブサイト上に49社の自主行動計画を公表しました。各社の努力により、野心的かつ実質的な計画が出揃いました。
現在、全会員企業1,300社に、これらの先行計画を参考に、ハイレベルな自主行動計画を策定していただくよう呼びかけているところです。年内に、準備の整った企業から公開し、引き続き1社でも多くの自主行動計画の策定・公開を目指してまいります。

その他、先ほど挙げました諸課題の解決を後押しするために、経団連は会員企業を対象とした女性管理職養成講座やダイバーシティ・マネジメントセミナーの実施、産学官連携によるキャリア教育や理工系女性人材の育成もアクション・プランとして掲げております。

女性が活躍できる企業、社会になれば、女性だけでなく若者も、外国人も、あらゆる人々の活躍の可能性が広がります。繰り返しになりますが、これは企業の競争力を左右する経営戦略、日本経済の持続的な発展を可能にするための成長戦略そのものであります。経団連は、社会のさまざまな主体と連携して、女性活躍の推進を着実に実行してまいります。

以上

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