2023年8月4日
一般社団法人 日本経済団体連合会
金融・資本市場委員会
企業会計部会
一般社団法人 日本経済団体連合会
金融・資本市場委員会
企業会計部会
企業会計基準委員会(ASBJ)御中
「リースに関する会計基準(案)」(以下、公開草案)へのパブリックコメントの機会に感謝する。以下の通り回答する。
【総論】
- 我が国における「リースに関する会計基準」について、国際的な会計基準との整合性確保を目指す、ASBJの本公開草案の趣旨は理解できる。
- 今回の公開草案で定める事項については、主たる国際的な会計基準である国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下、IFRS第16号)と、原則的には一致を図るべきと考える。
- ただし我が国においては、IFRS任意適用企業が増加傾向にある一方で、日本基準適用企業も数多く存在しており、国際的調和の観点のみならず、日本特有の商慣行の観点からも検討する必要がある。
- また、「連結財務諸表と個別財務諸表の会計処理は同一であるべき」(以下、連単一致)の考え方は、長期的な観点からは理論的ではある。ただし、現行業務が「連単一致が高度に実現された状態」に移行するには相応の期間を要するため、実務負荷とのバランスを考慮した実践可能な制度設計を模索する必要がある。
- 連結財務諸表ベースでの開示・比較が国際的な主流となっている中で、個別財務諸表にまで国際的な比較可能性の確保を一律に求めることは、実務負荷を考慮した費用対効果の観点から、避けるべきである。連結財務諸表作成の際に連結消去されるグループ間取引に対する取扱いについてなど、一定の特例措置も含めて追加の検討が必要である。
- 今回の基準改正が実務に与える影響は極めて大きく、企業側では既存取引の網羅的な見直し、業務プロセスの再構築、システム改修等々が必要となる。改正基準公表から施行までの準備期間は最低限3年間とすることが適切である。
- また、国際的な比較可能性が求められていない中小企業の会計処理(さらには税務処理)にまで、今回の基準改正の影響が及ばないよう配慮することも必要である。
- なお、今回のリース会計基準の改正が、税制面に及ぼす影響も極めて大きい。新リース会計基準の適用により、新たな税会不一致が生じれば生じるほど、法人税・消費税上の申告調整等の実務負荷が大きくなる。税会不一致は極力避けるべきである。経団連は別途、「令和6年度税制改正に関する提言」(2023年9月)でリース税制のあり方について提言を行うこととする。
【個別財務諸表への適用】(質問4)
- 連単一致が長期的な観点からは理論的である点については同意するが、実務負荷の観点より、新リース会計基準で採用される連単一致の考え方について、一定の特例措置を設けるなど追加の検討が必要と考える。
- 連結財務諸表作成の過程で消去されるグループ会社間の賃貸借取引は、日本企業の実務慣行上非常に多い。連結財務諸表ベースでの開示・比較が国際的な主流となっている中、連結消去されるグループ間の賃貸借取引についてまで、新リース会計基準の適用を一律に義務付ければ、企業に相当な実務負荷を強いる事となる。
【適用時期】(質問23)
- 新リース会計基準でリース取引に該当する事になるすべてのリース取引について、関係会社も含めて網羅的に確認し、業務プロセス構築・システム対応を行うためには十分な準備期間が必要である。相当な準備期間が必要で、最低でも3年程度とすべきである。
- 公開草案では、通常の1年程度よりも長い2年の準備期間を提案するなど実務への配慮が意識されている点は理解するが、システム対応の負担が想定より大きくなることを考慮していただきたい。具体的には、従来はデータベースで管理する必然性に乏しかったオペレーティング・リースについて契約ごとに管理が必要となる。例えば、基準改正後は不動産賃貸借契約の新規契約、賃料変更および解約等も直接的にバランスシートに影響することになり、契約更新情報をより迅速把握可能とする仕組みが求められ、社内のデータ整備が必要となる。また、システムエンジニア等のIT関連人材の不足が社会的な問題となっており、現在事業会社ではシステム開発人材の確保などに追われている。結果として、リースを利用する事業会社のほぼ全社に影響があると考えられる本改正により広範な企業で一斉にシステム改修ニーズが高まることで、システムエンジニア不足などに起因する改修の遅れ、対応コストの増加等の問題が生じることが懸念されている。従来に比べ、システム開発の負担感、高コスト化が進んでいることを踏まえた準備期間の設定とすべきである。
【経過措置】(質問24)
- 適用指針第128項の提案内容は、IFRS適用企業の負担を軽減するものであるが、当該規定に基づきIFRS第16号「リース」の経過措置の定め等を適用する場合、IFRS連結財務諸表上で認識している関連資産および負債の帳簿価額を個別財務諸表において使用できる旨を明確化することが好ましい。
【設例】(質問25)
- 新設される新しい会計処理(「リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分」や、「借手の追加借入利子率の見積り」)について、設例を追加・充実すべきである。
以上