一般社団法人 日本経済団体連合会
経済法規委員会企画部会
1.はじめに
この度の会社法改正は、役員報酬、事業報告での開示、役員等賠償責任保険契約、社外取締役の設置の義務化など、企業実務に重大な影響を及ぼす内容が含まれており、その細目について定める会社法施行規則の改正案に意見を述べる機会に感謝する。
同規則の改正内容に関しては、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会において、会社法改正と併せて議論された部分も多く、経団連としては、同部会での慎重な議論の結果を踏まえた規則の改正が行われるべきと考える。
公表された改正案については、同部会での議論の結果を踏まえる形となっている部分もある一方、同部会で議論されていなかった事項や、議論された結果と異なる事項が規定されている箇所も多数見受けられる。
新型コロナウイルス感染症の影響による混乱の中で、多くの企業が経営や事務処理上の困難に直面しているさなか、これまでの議論に基づかない新たな規制により、企業の負担をさらに増加させることは、避けなければならない。また、感染予防の観点からも、官民一丸となりデジタル化を推し進めていかなければならないなか、現在オンラインで提供できているものを紙に戻すといった、相反する改正内容も見受けられる。
今回は、上記の点を中心に、会社法施行規則改正案に対して以下の通り意見を述べるとともに、明確化が必要な事項について問題提起を行う。
2.電子提供制度関連以外に対する意見等
(1)意見
● 会社法施行規則改正案(以下略)74条1項6号
株主総会参考書類において役員等賠償責任保険契約の「内容の概要」の記載が求められているが、事業報告に求められる記載(121条の2第3号)との差異も明確でないことから、どのような記載が必要なのかをまずは確認したい。その上で、株主総会参考書類での役員等賠償責任保険契約の「内容の概要」の記載は、法制審議会会社法制部会で議論された内容でもなく、また、「会社の取締役、監査役、執行役」などの形で概括的に取締役会の決議がなされていた場合には、保険期間中に役員の交替等があったとしても、都度決議をし直す必要はないと理解しているところ、役員等の選任議案の提出の度に記載を求められるというのは過度な規制である。加えて、事業年度末日時点と招集通知作成時点の間に保険契約の更改があるケースは多くないと考えられるため、事業報告以外での開示を求める必要性に乏しい。よって、削除すべきである。74条の3第1項8号、75条6号、76条1項8号、77条7号も同様。
● 74条3項3号(及び同条4項7号、74条の3第3項3号、76条3項3号、4項6号)
- 候補者が他の者(親会社)や特定関係事業者の業務執行者等であったことについての対象期間が、「過去5年間」から「過去10年間」へと拡大しているが、かかる改正は法制審議会会社法制部会でも議論されたことはなく、混乱をもたらすことから、拡大すべきでない。特に、「特定関係事業者」(74条4項7号ハ、76条4項6号ハ)はその概念が広く、時々によっても変動するものでもあることから、これを過去10年間捕捉することは実務上負荷が高く困難である。
(以下は、仮に削除しない場合の確認事項)
- 上記の通り、「特定関係事業者」を過去10年間捕捉することには困難が伴うことから、会社として可能な限りの調査を尽くしたうえでの開示を行っていれば良いことを確認したい。
● 74条4項3号
- 社外取締役に「期待される役割」を株主総会参考書類に記載することは法制審議会会社法制部会で議論されたことはない。また、現行の同項2号において、選任理由を記載することとされているため、それに加えて「期待される役割」を記載する必要はない。加えて、社外監査役については、同種の規定が設けられておらず、平仄を欠くことにもなる。よって、この部分は削除すべきである。
(以下は、仮に削除しない場合の確認事項)
- そもそもどのような記載を求めているのかを確認したい(選任理由との違いは何か)。
- 「社外取締役候補者とした理由」の記載として当該社外取締役に期待される役割を記載している場合においては、「候補者とした理由と同様」といった記載も許容されることを確認したい。
- 社外取締役に、「取締役会に出席のうえ社外の視点も踏まえ経営の監督を行うこと」を期待している企業は多いと考えられるが、これ以上の役割を求めていない場合には、どのような記載にすれば良いのかを確認したい。
- 実際の株主総会参考書類での記載方法に関して、「候補者とした理由及び期待される役割」のように、1つの項目でまとめて記載する、さらに、複数いる社外取締役全員に共通して期待される役割を1つにまとめて記載する、等の表現上の工夫は、重複を避け株主に効果的に情報提供するために許容されることを確認したい。
● 98条の2第1号
インサイダー取引規制違反を防止する観点から、自社株式について一定期間(たとえば退任・退職後1年間)の売却を禁止する旨の社内規程(インサイダー取引防止規程)を設けている会社もある。本号(及び同項2号)は、いわゆる特定譲渡制限付株式が念頭に置かれた規定と考えられるが、特定譲渡制限付株式において譲渡制限期間・無償取得期間が設けられた趣旨は、取締役に対し会社に一定期間在任させるインセンティブを与えることでリテンション効果を図る点にあると考えられる。これに対し、上記社内規程は、インサイダー取引の防止を目的として株式報酬に限らず自社株式の取引を制限しているものである。これは、会社の役職員に対する規制であって、株式報酬のインセンティブ内容として譲渡制限を課しているわけではない。このように、両者は目的・効果が全く異なるものであるが、施行規則案の文言上は、インサイダー取引防止規程を定めている会社が取締役に株式を報酬として付与する場合でも、「一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させること」(98条の2第1号、98条の4第1号)に該当するようにも読めるため、インサイダー取引規制防止規程は本号に該当しないことを明確にすべきである。98条の4第1号、111条1号についても同様。
● 120条1項7号
- 親会社との間の契約等の内容の概要の開示については、法制審議会会社法制部会で議論されたことはないものであり、施行規則で規定するほどの立法事実があるかも不明であり、時期尚早といえる。よって削除すべきである。
(以下は、仮に削除しない場合の意見・質問)
- 現状の文言は、開示対象となる事項及び範囲も不明確であるため、仮に何らかの開示が求められるとしても、法制審議会会社法制部会で議論していなかった以上、開示対象となる事項は、この規定を加える根拠に照らして必要最低限のものに限り、かつ、一義的に明確に規定すべきである。
- 「契約等」の「等」に関して、その外延が不明確である。開示が求められるのはあくまで双方の意思が合致して明示的な合意がある場合に限られることを明らかにすべきである。
- 現行会社法施行規則の親会社、子会社の定義に関する「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」について、「重要な財務及び事業の『方針の決定を支配する』契約等が存在すること。」が規定されているが(現施行規則3条3項2号ハ)、本号では「重要な財務及び事業の『方針に関する』契約等が存在する」と、「方針に関する」という文言が使用されている。この文言の違いの趣旨は何かを確認したい。
● 121条5号の2
- ロの「額又は数の算定方法」に関し、業績指標から具体的な個別金額に至る計算式の開示が求められているわけではないことをまずは確認したい。その上で、計数目標の達成度だけではなく、個人別の定性的な目標達成度など裁量性ある内容を含めて業績連動報酬を設計している場合、シンプルな計算式を開示することは難しいことから、「算定方法」ではなく「算定方法の概要」とすべきである。
- ハの「業績指標の数値」とは具体的に何をイメージしているのかをまずは確認したい。その上で、同条5号のとおり、現状の開示は「見込みの額」で行っている部分があり、事業報告作成時点では業績連動報酬の算定に用いる業績指標の数値が確定していない場合があることや、業績連動報酬等の業績指標として選定していても、企業戦略上の理由から当該指標の公表が好ましくないもの、公表していないP/L上の財務指標、非財務指標等、数値を記載することが適さないものもあることから、必ずしも、実績の数値を求めるものではなく、実績について説明をすることで足りることを確認したい。ハの趣旨が、役員のインセンティブとして実際に機能しているかを株主が確認できるようにする点にあるとすれば、目標が達成されたかどうかが重要である一方、業績指標の数値そのものの開示が必ずしも株主にとって重要であるとは考えられない。なお、企業内容等の開示に関する内閣府令でも「目標及び実績」の記載が求められるが(2号様式4(4)(57)b)、その趣旨は「実際の報酬が報酬プログラムに沿ったものになっているか、経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるようにするため」であり(八木原栄二ほか「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正」商事法務2194号21頁)、「値」という文言は使われていない。
● 121条6号
ハに関して、決定方針に従って報酬を支給することは、役員の善管注意義務に基づき行われるべき内容であり、事業報告において説明させる必要まではないことから削除すべきである。とりわけ、指名委員会等設置会社においては、報酬の内容を決定する報酬委員会の過半数を社外取締役とすることや、個人別の報酬を決定する際には決定方針に従わなければならないこと(会社法409条2項)が法定されているなど、報酬の内容の妥当性は確保される仕組みとなっていることから、事業報告において説明させる必要性はより一層低いと考えられる。そこで、仮に事業報告への記載を求めるとしても、指名委員会等設置会社は除外すべきである。
● 121条6号の3
ハの「権限を委任した理由」を記載することは法制審議会会社法制部会では議論されておらず、長年の安定した会社法の解釈に基づく実務を変更させるのであれば、省令ではなく法改正によるべきであることから、削除すべきである。
● 121条の2第1号
- 「当該保険者の氏名又は名称」について、なぜこの開示が求められるのかが不明である。仮に、取締役会で役員等賠償責任保険契約の内容を毎年見直しているかどうかをチェックするための端緒とするという趣旨であれば、保険者に変更がないからといって、必ずしも内容を見直していないといえるものではなく、保険契約の内容に合理性があるからこそ変更をしていないという場合も十分想定されることからすれば、根拠が不十分であると言わざるを得ない。どのようなデータや論説に基づく規定なのか、まずは示すべきである。
- その上で、①保険者の名称等は、開示の目的であるD&O保険における利益相反の問題を株主が評価するにあたっては全く無関係な情報であるということ、②本来個別の取引情報は守秘性の高いものであり、開示の目的と照らして無関係な取引情報まで開示を求めることは、徒に取引当事者の利益などを損ねることになりかねないこと、及び③もともと法制審で論議していた際、事業報告での開示事項の中で「保険者」の項目はなく、要綱案にないものを新たに取り込むのはこれまでの論議に立脚していないこと、から本号を削除することを強く求める。
● 124条4号ホ
- 社外役員が社外取締役であるときにおいて、「期待される役割に関して行った職務の概要」を記載することに関しては、法制審議会会社法制部会でも議論されておらず、唐突である。また、そもそも社外役員は原則として業務執行を行うことが想定されておらず、活動の場は取締役会や法定委員会の場がメインになると考えられるところ、それらの場における活動状況は現行の同号イ~ニで開示することとされているため、それに加えて「ホ」を記載する必要はない。よって、削除すべきである。
(以下は、仮に削除しない場合の確認事項)
- 役員選任議案に関する株主総会参考書類に記載の「期待される役割」通りの役割を果たした場合には、その旨の記載で良いことを確認したい。
● 133条3項1号
121条3号の2から3号の4(取締役・監査役・執行役との会社補償に関する事項)、125条2号から4号まで(会計参与との会社補償に関する事項)、126条7号の2から7号の4(会計監査人との会社補償に関する事項)や、121条の2(役員等賠償責任保険契約に関する事項)は、ウェブ開示事項とされていないが、ウェブ開示事項とされている責任限定契約に比して、どのような理由で書面での提供が必要なのかが不明である。株主総会プロセスの電子化を促進しDXを図る観点からも、責任限定契約と同様に、ウェブ開示事項とすべきである。95条の4第2号の書面交付請求がなされた場合に交付すべき書面への記載事項の範囲も同様。
(2)質問・確認事項等
● 33条の2第2項第4号イ(2)~(4)/33条の9第1項第1号ロ(1)(ⅱ)~(ⅳ)
「当該見込みに関する取締役(会)の判断及びその理由」のうち、「見込みに関する判断」とは具体的にどのような事項を想定しているのかを確認したい。
●74条1項5号
株主総会参考書類への記載にあたっては、「事業報告〇ページに記載のとおり」といった記載が認められるのかを確認したい。責任限定契約や役員等賠償責任保険契約も同様。
● 74条1項6号
- 候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結しているとき又は「予定があるとき」の「予定がある」とはどのような場合かを確認したい。例えば、従前D&O保険契約を締結していなかったが、新規に締結予定がある場合を想定しているのか、もしくは従前D&O保険契約を締結しており、更新契約の締結日が総会後となる場合も含まれるのか(この場合も「保険契約を締結しているとき」ではなく、「(更新契約の)締結の予定があるとき」に含まれるとすると、招集通知発送前に(総会議案決定と同時期に)更新の機関決定をする必要がある)。
- 附則2条6項の経過措置で「施行日後に締結される」保険契約について適用されるとあることから、施行前に保険契約が締結された場合には、施行後の株主総会の参考書類への記載は不要という理解で良いのかを念のため確認したい。
- 仮に、株主総会参考書類に締結予定であると記載した役員等賠償責任保険の契約内容に招集通知発送後変更が生じた場合は、翌年度の株主総会参考書類で変更後の契約内容について記載することで良いことを確認したい。
● 98条の2第2号
「一定の事由」を株主総会で決定したとしても、実契約の内容となっていない限り効果を及ぼさないという理解で良いことを念のため確認したい。
● 98条の2~98条の4
- 「事由の概要」の「概要」は、どの程度の内容のことを指すのか。また、指名委員会等設置会社において報酬委員会が定める「事由の概要」の「概要」(111条~111条の3)との記載内容に違いはあるかを確認したい。
- 報酬としての新株予約権は、一度の株主総会決議に基づき、複数回に分けて発行されることも多いと考えられることから、98条の3第1号及び98条の4第2項1号において、個別の発行に際しての新株予約権の内容の定めである「法第二百三十六条第一項第一号から第四号までに掲げる事項」がそのまま引用されているのは適当でないようにも思われるため、その趣旨を確認したい。①「新株予約権の目的である株式の数…又はその数の算定方法」(会社法236条1項1号)は「上限」で足りること、②「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」(同項2号)は「概要」又は「下限」で足りること、③行使時の財産が非金銭である場合の「財産の内容及び価額」(同項3号)は「概要」で足りること、④行使期間(同項4号)については「概要」で足りることが、それぞれ明確となる表現とすることも検討してはどうか。
● 98条の5全体
既に取締役会で当該方針を全て決定している場合、本条各号に関する特段の変更がある場合を除いて、毎年取締役会にて決定する必要はないという理解で良いことを確認したい。
● 98条の5第2号
- 「当該株式会社又はその関係会社の業績を示す指標」という部分に関して、いわゆる「連結」業績を指標とすることが排除されてはいないという理解で良いことを確認したい。
- 「決定に関する方針」が「業績指標の内容…に関する方針」と全体にかかると読んでよいのか。「業績指標の内容」にはかからないと読むのか。なお、3号についても、「決定に関する方針」が「当該非金銭報酬等の内容…に関する方針」と全体にかかると読んでよいのか。「当該非金銭報酬等の内容」にはかからないと読むのか。これらにつき確認したい。
- 「業績指標の内容」は、企業内容等の開示に関する内閣府令における「業績を示す指標」(2号様式4(4)(57)a)の開示と同趣旨であり、業績指標の詳細(詳細は各社の戦略に関わる営業秘密に相当する)の記載を求める趣旨でないとの理解で良いかを確認したい。
● 98条の5第4号
「割合の決定に関する方針」に関して、固定額の金銭報酬については金額基準で予め想定は可能であるものの、業績連動報酬や非金銭報酬については予め金額を定めることはできないことから、5:3:2のような形で事前に割合を定められる性質のものではないと思われ、どの程度の具体的な方針を定めることが求められているのかが不明確である。そこで、ここにおける「割合」は、一定の枠・範囲での方針を定めることを求めているという理解で良いことを確認したい。
● 98条の5第5号
「時期又は条件の決定に関する方針」とは、どのような記載を想定しているのかを確認したい。
● 98条の5第6号
- 取締役の個人別報酬の決定方針に、個人別報酬の内容の全部または一部の額の決定を特定の取締役に委任する旨を定め、その定めによって実際に委任を受ける特定の取締役を明確に特定できる場合、以後、当該特定の取締役への委任について個別に取締役会決議を経る必要はないと考えることは可能かを確認したい。
- 柱書の「取締役」には複数の取締役を含み、また、「その他の第三者」には複数の第三者を含むとの理解で良いかを確認したい。
- 柱書の「その他の第三者」には、任意の委員会(報酬諮問委員会)も含まれ得ると理解しているが、その理解で正しければ、「任意の委員会」を例示で挙げることも検討してはどうか。
- ハでは、受任者の「権限が適切に行使されるようにするための措置…の内容」を取締役会として決議することが求められているが、どのようなものを想定しているのかを確認したい。例えば、任意の委員会に委任する場合の委員会構成や決議プロセスの透明性の工夫、また、取締役社長に一任した場合の取締役社長による決定に対する任意の委員会による事前・事後のチェックプロセスなど、という理解で良いか。121条6号の3ニも同様。
● 98条の5第8号
本号はどのような場合を想定しているのかを確認したい。
● 115条の2
- 金融商品取引法21条から24条に定める有価証券報告書虚偽記載の場合(その他SEC開示書類等に虚偽があった場合)の会社・役員の責任を対象とする保険はどのように扱われるのかを確認したい。例えば、「会社」分は規制の対象とならず、「役員」分のみ役員等賠償責任保険契約として扱われることになるのか。
- その他、環境汚染リスク等、役員・会社の両方の責任が対象となる事項に係る保険等はどのように扱われるかも確認したい。特に、会社・役員いずれの損害填補を「主たる目的」としているのかが明らかでない場合の取扱いはどうなるのか。除外対象の保険契約を、条文解釈として、具体例とともに明らかにすることも検討してはどうか。
● 121条柱書ただし書
報酬の方針の決定が義務づけられていない会社(指名委員会等設置会社または監査等委員会設置会社以外の会社、あるいは、社外取締役設置を義務付けられない会社)においては、同条6号の2だけでなく、6号の省略も認めてはどうか。認めていない趣旨は何かを確認したい。
● 121条3号の3、3号の4
- 「その旨」(3号の3)の開示にあたって、当該会社役員の氏名や違反等の概要までの開示は不要であり、単に「補償契約に基づき補償をした会社役員が法令に違反したことを知った」旨の開示でも足りるのかを確認したい。
- 「その旨」(3号の4)の開示にあたって、当該会社役員の氏名や損失の概要等までの開示は不要であり、単に「補償契約に基づき会社役員に対して430条の2第1項第2号に掲げる損失を補償した」旨の開示でも足りるのかを確認したい。
● 121条5号の2
- イの「業績指標」は、複数組み合わせることもあり、その評価ウェイトも大小様々である。そのため、業績連動報酬の決定方法を十分に説明可能な場合には、すべての業績指標を網羅的に記載することを求めるものではないことを確認したい。企業内容等の開示に関する内閣府令においては、上記のように解されている(金融庁のパブリックコメント(平成31年1月31日公表)への回答の項目57)。
- ロの「算定方法」はどの程度の記載を求めているのかを確認したい。
● 121条5号の3
「非金銭報酬等の内容」はどの程度の記載を求めているのかを確認したい。
● 121条5号の4
ハの「当該定めに係る会社役員の員数」は株主総会決議を得たときの員数ではなく、事業報告作成時点の員数という理解で良いことを確認したい。その上で、可能であれば、そのことが分かるよう加筆等を行ってはどうか。
● 121条6号
ハにおいて、取締役の個人別報酬の内容がその方針に沿うものであると取締役会が判断した理由の開示は、個人別報酬の内容の決定について取締役会が取締役その他の第三者に委任している場合も必要とされるのかを確認したい。その上で、もし必要だとしても、その判断のために、取締役会へ取締役の個人別報酬の内容を開示しなければならないわけではないことを確認したい。
● 121条6号の2
6号とは別の方針として本号が必要な理由は何かを確認したい。
● 121条の2
- 「被保険者の範囲」(2号)及び「被保険者が実質的に保険料を負担している場合にあっては」(3号括弧書)の「被保険者」について、いずれも当該株式会社の役員等ではない被保険者(子会社の役員など)は含まれないと理解して良いかを確認したい。
- 親会社にて子会社(公開会社)役員も付保している場合、子会社で付保していない以上、子会社の事業報告にて親会社で付保している保険契約の内容を開示する必要はないとの理解で良いことを確認したい。なお、子会社が一部保険料を負担する場合も想定されるが、保険料の負担のみでその額も僅少である場合なども、子会社の事業報告上の開示は不要との理解で良いかを確認したい。
- 複数の役員等賠償責任保険契約を締結している場合であっても、2号の「被保険者の範囲」や3号の「内容の概要」が共通していれば、複数に分けて記載する必要はないという理解で良いかを確認したい。
- 事業報告における開示については、期中で契約内容の変更があったとしても、事業年度末時点で有効な契約の内容について記載すれば足りるという理解で良いかを確認したい。
- 2号の「被保険者の範囲」については、個々の氏名ではなく、「取締役」「監査役」「執行役」等を示すことで足りると考えて良いかを確認したい。
- 3号の「内容の概要」について、保険料を全額会社負担とし、特段の措置も講じていない場合には、「填補の対象となる保険事故の概要」のみが法定の開示項目になるという理解で良いかを確認したい。また、特約がある場合も、個々の内容について網羅的に記載する必要はないという理解で良いかを確認したい。
- 3号括弧書の「填補の対象とされる保険事故の概要」については、どの程度の記載を想定しているのかを確認したい。
- 3号括弧書の「被保険者である役員等の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあってはその内容」とあるのは、どのような内容を想定しているのかを確認したい(被保険者個人による費用負担措置を想定しているのか)。
● 122条1項2号
- 信託を用いた株式報酬制度(株式交付信託)を導入している場合、役員の在任期間中はもっぱらポイントが加算されるだけで、株式・金銭は同制度のもとでは支給されず、退任後一定期間経過後、累積ポイント相当の当社株式の交付を受けることができるとなっている場合がある。この場合、交付した株式の数・対象者人数等の開示はどのように行うことになるのかを確認したい。役員退任後に株式の交付があるため、株式自体の交付対象者はすべて退任役員ということになるが、本号において株式数・人数として記載が求められるのは、株式が交付された事業年度末日の在任役員の人数ということからすると、「該当なし」(記載不要)という理解で良いか。
- 自社株式の購入資金に充てるために役員に対し報酬として金銭を支給している場合において、当該金銭に基づき役員が市場ないし持株会を通じて自社株式を取得した場合は、本号の対象外であることを確認したい。
- 本号で求められているのは、個人別の役員の氏名や交付株式数ではなく、役員区分ごとの人数と交付株式数の総数であるという理解で良いかを確認したい。
● 179条の2他
株式交付において、株式交付親会社の親会社である外国法人の株式を対価の一部として交付することは許容されていないという理解で良いかを確認したい。
3.電子提供制度関連に対する意見等
(1)意見
● 95条の4第1項2号
- 今般の改正で新たに加わった補償契約や役員等賠償責任保険契約に関しても、株主総会プロセスの電子化を促進しDXを図る観点から、電子提供措置事項記載書面の対象から除外すべきである。
- 133条3項によりWEB開示のみなし提供の対象とされている責任限定契約に関する事項が電子提供措置事項記載書面の対象に含まれているが、現在もWEB開示が認められている事柄につき書面で記載し交付することを求める立法事実が不明である。よって、責任限定契約に関する事項も、電子提供措置事項記載書面の対象から除外すべきである。
● 95条の4第1項3号
本年の時限措置として認められた単体計算書類のWEB開示によるみなし提供を恒久化すべきであり、その際には、単体計算書類の内容に関しても、電子提供措置事項記載書面の対象から除外すべきである。
● 95条の4第1項4号
現在の会社計算規則134条4項及び5項でWEB開示によるみなし提供の対象とされている連結計算書類の監査報告・会計監査報告が電子提供措置事項記載書面の対象に含まれているが、現在もWEB開示が認められている事柄につき書面で記載し交付することを求める立法事実が不明である。よって、連結計算書類の監査報告・会計監査報告も、電子提供措置事項記載書面の対象から除外すべきである。
● 95条の4第2項柱書(及び同条第1項2号ロ)
株主総会資料の電子化を原則とする今回の改正趣旨に照らせば、「株主への通知」は不要とすべきである。
(2)質問・確認事項
● 電子提供措置に関しては、自社WEB等での中断した際、東証のウェブサイトにバックアップとして電子提供を続けていれば、瑕疵は生じないことを念のため確認したい。
● いわゆるフルセットデリバリーをした場合には、書面交付請求に応じる必要がないことを確認したい。
● 95条の4第1項2号
今後は、各社、音声、動画やスライドを用いたWEB上での説明・報告内容が増えてくる可能性があるが、その情報は電子提供措置事項記載書面への記載事項とはならないことを念のため確認したい。