(一社)日本経済団体連合会
環境エネルギー本部
本年11月5日より意見募集が行われている「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく気候変動対策に係る主な制度の2020年からの取組」(http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/large_scale/overview/after2020/pc.html)のうち、「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)に関する改正事項(第三計画期間(2020-2024年度)に適用する事項)」について、下記の通り意見を申し上げる。
Ⅰ.総論
1.排出量取引制度について
排出量取引制度(キャップ&トレード制度)は、経済活動を阻害し、「環境と経済成長の両立」を困難にするばかりか、温室効果ガスの大幅削減に必要となる民間の投資原資を奪うことから、長期の温暖化対策に逆行する制度である。
経団連は、排出量取引制度に一貫して反対の立場である。
2.事業者との適切なコミュニケーションの必要性
東京都の排出量取引制度は、大規模オフィス所有者をはじめとする事業者に対し、経営上の多大な負担を負わせる制度である。
しかし、今回、「削減義務実施に向けた専門的事項等検討会」の委員構成をみても、当事者である事業者の意見を十分反映できる検討体制が取られていたとは言い難い。
制度の重要事項を決定するにあたっては、負担者である事業者の意見を、最大限に取り入れるべきである。
Ⅱ.各論
A.「1.基準排出量」
「制度開始当初(2010年4月1日)の時点で削減義務の対象であった事業所」および「第1・第2計画期間の途中から新たに削減義務の対象となった事業所」の排出基準量について、「第2計画期間に適用されている基準排出量をそのまま継続する」としたことを評価する。ビル事業者による過去の努力を正しく反映する観点から、この方針は堅持すべきである。
B.「2.削減義務率」
第3計画期間における削減義務率(区分I-1 27%、区分I-2 25%)については、実現可能性をしっかり検証したうえで、ビル事業者が適切な努力で達成できる水準に引き下げるべきである。
C.「3.新たに削減義務の対象となる事業所の取扱い(新規事業所の取扱い)」
「第3計画期間の途中から新たに削減義務の対象となる事業所」の基準排出量の設定について、第1・第2計画期間と同様、「過去の排出実績」に基づく方法と「排出標準原単位に基づく方法」のいずれかを選択できることとしたことを評価する。最新ビルの削減余地が既存ビルに比べて少ないことに鑑みれば、この方針は堅持すべきである。
また、「第3計画期間の途中から新たに削減義務の対象となる事業所」および「第1・第2計画期間の途中から新たに削減義務の対象となった事業所」に対しては、今回提示案のとおり、一定の経過措置として、段階的削減義務率を設定する方針を堅持すべきである。
D.「4.トップレベル事業所認定の仕組み ─ 削減義務率の減少」
インセンティブ付与の観点から、削減余地が極めて少ないと認定されたビルを対象に、削減義務率をゼロとする制度を創設すべきである。
E.「11.バンキングの仕組み」
本来、過去に事業者が超過達成した削減量は、財産性を持つと考えられるため、バンキングの利用期限は撤廃すべきである。