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グローバル・サービス・コアリションによる欧州委員会のデータフロー提案に
関するEU加盟国への要望
グローバル・サービス・コアリション(GSC)は、以下のコメントを欧州連合(European Union:EU)加盟国に提出する。GSCは、メンバー各々の経済におけるサービス産業のため、サービス貿易と投資に関する課題について発言する。GSCメンバーは、情報通信技術(ICT)、電気通信、急送貨物・物流、小売・卸売、銀行、保険、専門職サービスなどの産業を含む、広範囲に亘るサービス企業を代表する。
我々は、EUが“Horizontal provisions for cross-border data flows and for personal data protection”(越境データフローとデータ保護に関する横断的条文)(以下、「本提案」)に取り組んでいることを歓迎する。デジタルによって提供可能となるサービスの最大の輸出元のひとつであるEUにとり、デジタル貿易に関する国際的議論に活発に参画し、積極的に貢献することは重要である。
サービス産業は、デジタル・バリューチェーンにおけるインフラとソリューションの主たる提供元であり、デジタル経済における信頼の確立とデータ保護の重要性を認識している。GSCは、データセキュリティおよび適切かつ効果的な個人情報の保護が必要不可欠であること、また、これらはプライバシーとセキュリティに関する各地域における規制の遵守を通じて担保されなければならないことを認識している。
国境を越えた自由なデータ流通の促進およびデータローカライゼーションの回避の原則の例外は、正当な公共政策上の目的のもとで、GATS(サービスの貿易に関する一般協定)第14条および第14条の2#1に全面的に従う場合のみに限定されなければならない。また国内外を問わず、全てのサービスの提供者を平等に扱わなければならない。
我々の理解するところでは、本提案は、通商協定におけるデジタル経済へのEUのアプローチを規律すべく立案されたものである。我々は、本提案のいくつかの側面に対して深刻な懸念を表明したい。本提案では、EUと貿易パートナーの間のデータフローに対する現代的・安定的なアプローチを提供するには遠く及ばないと我々は考える。
本提案のA条は、EUの通商協定が、データフローへの制限に対する保護と、ビジネスを行う条件としてのデータセンターとコンピューター関連施設の域内設置を義務付ける規制に対する保護を含むよう確保する規定であり、我々はこれを大いに歓迎する。しかしながら、この制限は、列記された4つのローカライゼーションの手法のみに限定されるべきではなく、他の潜在的な制限にも適用されるべきである。
他方で、B条第2項は、我々の理解では、データ保護とプライバシーについての広範に過ぎる例外を設定するものであり、A条で対象とする正当なデータフローに対する保護を完全に無意味にしてしまう。EUとFTAを締結するいかなる貿易相手国も、プライバシーとデータ保護の名の下に、その正当性の説明の必要性も、不服や異議の申し立てを受けることもなく、データローカライゼーション要求の禁止を回避することが容認されることとなる。
これほど広範に過ぎる提案により、欧州委員会は、通商協定が新しい貿易障壁を生み出すことに利用されうるという、逆効果のシグナルを送っている。これは、貿易相手国が貿易協定において達成しようとすることとはまさに対極にある。
GSCメンバーは、本提案が採用されることになれば、ヨーロッパ全域とその貿易相手国におけるイノベーションと成長、雇用創出を阻害する恐れがあると考える。本件に関するいかなる通商協定の条項も、個人情報の保護が保護主義を正当化するために悪用されることのないよう確保することが極めて重要である。GSCはEU加盟国に対し、国境を越えた正当なデータ流通を担保しつつプライバシーを保護するため、よりバランスの取れた新たなアプローチを構築すべく、欧州委員会と共に本件について改めて作業・議論し直すよう強く求める。
- GATS(General Agreement on Trade in Services )は「世界貿易機関を設立するマラケッシュ協定(WTO協定)」の一部であり、サービス貿易の障害となる政府規制を対象とした初の多国間国際協定。一般的義務として最恵国待遇(全加盟国のサービス提供者に他の加盟国と同等の最も有利な待遇を付与する)、国ごとに約束した分野における自由化等が義務とされる。ただしGATS第14条により、恣意的・不当な差別又は偽装した貿易制限とならないことを条件とする一般的例外が認められており、加盟国は、GATS規定に反しない法令の遵守を確保するために必要な措置として、プライバシーの保護、安全等にかかわる措置を採用・実施することができる(14条c)。また、14条の2により安全保障のための例外が認められている。