B7共同宣言(抄訳)
はじめに
われわれG7の経済団体は、4月5~6日にカナダのケベックシティで開催された2018年B7サミットにおいて、共同宣言を発出。
共同宣言における提言は、包摂的で責任ある、協同的な経済成長を通じた広範な繁栄をもたらすために各国政府がとるべき方途を提示。
昨年のB7サミット以降、世界の株式市場は過去に類を見ない活況を呈し、通商協定交渉の妥結や広範な所得増ほか、様々な分野で技術・ビジネスモデルが進展。その一方、不安定な物価や不確実性の蔓延、所得格差、グローバルな安全保障に係る不安、技術の進歩等が失業を惹起する懸念も増大。
保護主義の台頭は、貿易への批判と相俟ってビジネスを進めるのが困難な状況を創出。また、競争力の毀損や不確実性から、グローバル貿易の停滞が発生。
他方、自由で開かれた市場はグローバルな繁栄を促進。1990年以降、より自由な貿易によって10億人以上が貧困から脱却。小規模企業は成長の加速や成長の包摂性を確保するカギ。開かれた市場やグローバルな貿易が果たす役割や便益の保護が必要。
ビジネス界は経済的な主体にとどまることなく、社会・環境の変化をも勘案した役割も拡大。社会や政府とともに機会を創出し、経済成長による便益が広く実感され、後世のための環境が保全される形でビジネスを行うよう努めることこそ、経済界の役割・責任。
今次サミットでは、過去のB7サミット共同宣言も踏まえ、3つの優先課題(①包摂的成長、②気候変動と資源の効率性、③スモールビジネスの拡充)を確認。これらの提言は、G7各国の経済団体の大きな懸念として認識されてきた問題をベースに構築。
制度に対する信頼
統一的なルールが衡平に履行され、透明性の高い形で意思決定がなされなければ、社会の効果的な機能は不可能。
あらゆる機会を捉え、政府や経済界の代表が安定的なルール・規制や広報機関を透明な形で尊重、維持することが重要。同時に、サイバー犯罪やプライバシーの侵害、技術の用途といった問題に対する戦略、ルール、法律が必要。
1.包摂的成長
提言
(1)グローバルな貿易・投資へのコミットメント
- 保護主義や一方的措置への断固たる反対
- WTOの制度改革を推奨
- 第11回WTO閣僚会議における電子商取引、サービスの国内規制、投資円滑化、零細・中小企業に関する有志国合意を歓迎
- 過剰生産能力問題の是正や輸出信用に関するレベル・プレイング・フィールドの確保
- 強制的な技術移転やデータ・ローカライゼーションの禁止、市場歪曲的措置(補助金等)や貿易歪曲的慣行の除去、国家の安全保障に関する技術流出を防止する投資スクリーニングにおける各国の連携
(2)グローバルな経済ガバナンスの強化
- 包摂的成長を促すグローバルな経済ガバナンスモデルの構築に向けて、G7国際会議の来年開催を奨励
(3)デジタル時代の活力の包含
- Industry 4.0およびSociety 5.0の推進に向けて、自由な越境データ流通を確保
- サイバーセキュリティの強化
(4)ヘルス関係の問題に対する持続可能な解決策の追求
- 2016年B7東京サミット宣言に鑑み、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに基づく持続可能なヘルスケア制度を構築する際の政府の主導的役割に期待
(5)インフラへの投資
- 開放性、透明性、経済性等の原則に合致する質の高いインフラが重要
(6)人材育成への投資
2.気候変動と資源効率性
提言
(1)資源・エネルギー効率のための革新的解決策に関する民間との連携
- エネルギー効率や再生可能エネルギー、天然ガス、原子力、化石燃料に関する技術開発、エネルギー貯蔵、水素に関するイノベーション
(2)各国・地域の事情に勘案した温室効果ガス削減に向けた市場メカニズムの促進
(3)資源効率性に関する貿易・国際協力の強化
(4)民間投資を下支えする国内政策および規制枠組みの確保
(5)国内および国際的な政策形成過程における民間の関与
3.スモールビジネスの拡充
提言
(1)アントレプレナーシップや投資を促進する租税政策の実施
- 公平性、簡易性、現代性、コンプライアンスコストの削減を踏まえた課税
(2)中小事業への影響を勘案した規制政策の適用
- 中小企業向けの一本化された窓口の形成
(3)中小企業によるデジタル技術の採用の奨励
(4)革新的な中小企業が政府調達にアクセスしやすくなる政策の策定
(5)国際的なビジネス機会に中小企業を連結するプログラムの拡充や導入
(6)職場の多様性の便益に関する中小企業の理解を増進するツールやインセンティブの創出
(7)女性が主導する中小企業の発展と成長に向けた支援