2017年3月31日
一般社団法人 日本経済団体連合会
一般社団法人 日本経済団体連合会
G7タオルミーナ・サミット(5月26~27日)を控え、経団連が昨年主催したB7東京サミットも踏まえ、2つの優先的な課題につき、以下提言。(正文英文)
総論
1.グローバルな通商ガバナンス
- 通商のガバナンスが減退し、過去に類を見ない保護主義が脅威に。
- 貿易は、ビジネスや雇用創出、社会の発展や包摂性の向上、持続可能な開発に有益であり、経済社会全体の利益を包含。
- 自由で公正な貿易を支持する責任を認識し、われわれは、イノベーションや持続可能性、法の支配、市場アクセス、公平な競争に基づく着実な経済成長という目標にコミット。
- G7の首脳は、国際貿易の重要性を認識し、経済成長のための諸条件の改善に向けて、経済界と協働すべき。G7は全ての国の首脳に対し、保護主義に対抗し、自由で公正な世界貿易に向けた既存の取組みを一層推進するとともに、主要な自由貿易協定を促進し、新たな課題に関するプルリ交渉を追求するよう、働きかけるべき。
- G7は、グローバル・バリューチェーンにおいて中小企業を広範に包摂する施策を含め、経済界との緊密な連携の下、かかる諸課題に対処する効果的な方策を見出す必要。
- G7はまた、世界貿易を一層円滑化するため、グローバルに一貫性のある税制ルールを確保し、EUを含む各国が国別報告書(CbCR)における秘密情報の保護に関する国際合意を遵守するよう慫慂すべき。
- G7に対するわれわれの提言は、3つの根本的な分野における喫緊の課題への対応を可能ならしめるもの。
- 2017年12月のブエノスアイレスにおけるWTO閣僚会議(MC11)において、G7は多国間貿易システムを改革、活性化するための共通提案を提出すべき。世界貿易を取り巻く喫緊の課題に対処する実際的なアプローチにより、変更が必要な主な点を中心に提言。
- 新たな多国間貿易スキームに道を拓く、日EU EPA、CETA(加EU)という2つの重要な貿易協定を可及的速やかに締結すべき。大西洋・アジア太平洋関係は、経済界にとって重要な鍵。これら経済を一層緊密化するプロジェクトは、経済界にとって引き続き優先事項。
- サービスおよび環境物品に関する複数国間協定等の交渉を含め、現在交渉中の重要な貿易課題に対応すべき。
2.イノベーションと持続可能性
- 近代的な産業政策は、プロセスや技術、サービス、製品のイノベーション、ならびに、特にエネルギーと天然資源の利用における、さらなる持続可能性に重点を置くべき。
- 「オープン・イノベーション」モデルの採用によって、外部の人間やソリューションを梃子に新たなビジネスモデルを創造するのは、漸次的かつ抜本的なイノベーション。
- イノベーションと持続可能性は、より資源効率が高く、デジタル化、革新的かつ低排出、循環型の経済への移行を促すことによって、未来の産業発展のパターンを規定。
- 経済界にとっての課題は、雇用を守り新たなスキルを創出しつつ、いかに経済成長と環境の持続可能性を両立するか。
- G7に対し、エネルギー転換におけるグローバルな競争条件の平準化に向けた国際協力を推進するとともに、同プロセスを維持・加速することを要望。併せて、官民の研究機関や大学、技術クラスター等のステークホルダーと企業との協力を促進し、既存の国際的なバリューチェーンにおけるシナジーを後押しするよう要望。
- SDGs等の課題に対応する上では、官民連携が鍵。G7に対し、とりわけ中小企業にもアクセス可能な共通の金融スキームを導入するよう要望。さらに、革新的なビジネスモデルへの投資を促進するなど、公的支出の効率や質を向上させることなどを要望。
- G7はインダストリー4.0/Society 5.0の標準化を推進すべき。特に中小企業用の、国境を超えた情報交換のスキームを確立すべき。法的根拠のないデータ・フロー規制は撤廃すべき。
- 他方、セキュリティに関する懸念にも鑑み、G7は毎年のサミットにおいて、体系的なファクト・ファインディングに関する経済界との対話を行うべき。
各論
1.グローバルな通商ガバナンス
- 多角主義は自由な貿易投資の基礎であり続けるべき。しかし、2001年にドーハ開発アジェンダで設定された結果を達成するためには、WTO機能の改革が必要。
(1)ルールに基づく多角的貿易体制の強化
- 貿易円滑化協定の履行
- 全交渉分野の一括受諾(合意)方式(シングル・アンダーテーキング)に替わる方策の多様化
- プルリ(複数国間)協定推進のための新たな方法への合意(必要分野を特定する委員会の設置、WTOの意思決定におけるコンセンサス方式(全加盟国一致による合意)の制限)
- 貿易制限的な措置に関するモニタリング機能と関連情報の管理方法の改善
- WTOの協定・分野別委員会の強化(委員長任期の延長等)
- 経済界との対話促進
(2)重要なFTAの推進
- 野心的で一貫し、バランスの取れた二国間・地域協定は経済界にとって重要な方途
- 野心的な二国間協定の推進(EUカナダ(CETA)、日EU)
- 経済界は、大西洋やアジア太平洋の経済関係を深化させる方策の追求を希望
- 英国とEUの新たなパートナーシップを通じて健全かつ持続的な経済発展を
確保すべく、ビジネス・フレンドリーな枠組みが構築されることを期待 - 持続可能性(労働、環境、人権等)に関するより厳格な規律
- 技術的障壁に対処する中小企業への配慮
- 透明性の高い交渉
- より実効的な履行の確保
(3)プルリ(複数国間)協定の推進
- ドーハ・ラウンドの積み残し課題の解決(特に関税分野)とプルリ協定への移行(MC11に向けた議題の準備:環境物品協定)
- プルリ協定の早期交渉開始(デジタル貿易、投資、競争)、サービス貿易に関する新たな協定(TiSA)の再開・推進
2.イノベーションと持続可能性
(1)資源の効率的利用(産業政策の推進役としてのエネルギー・環境)
- グローバルな資源生産性向上のためのG7アライアンスの範囲拡大
- グローバルな産業バリューチェーンを支援する政策の収斂
- 共通の指標による循環型経済への移行支援
- 汚染用地の原状回復に向けた企業のポテンシャル活用
- グローバルなエネルギー転換の促進
- 実効的なMRV(測定・報告・検証)を通じたパリ協定の履行
- 市場メカニズムに関する国際協力の強化
- 省エネおよび再生可能エネルギー関連技術への投資促進
(2)研究・イノベーション
- 研究・イノベーションに対する投資支援
- 官民研究体制の協力促進
- イノベーションをしやすいビジネス環境の整備
- 革新的なバリューチェーンの強化
- 革新的ソリューションによる革新的公共調達の推進
- 新たな教育課程や将来の職業スキルの整備
(3)インダストリー4.0/Society 5.0 の支援
- 標準化
- 中小企業参画に向けた支援
- スキル強化
- データ・フローの解放
- 接続性とサイバーセキュリティ
以上