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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 柔軟な権利制限規定のあり方 -文化審議会法制基本問題小委員会中間まとめに対するコメント-

2017年3月29日
一般社団法人 日本経済団体連合会
産業技術本部

  • IoT やビッグデータ、人工知能などの技術革新により経済的発展や快適で活力に満ちた生活を実現する Society 5.0 に向けた動きが加速している。これに伴い、著作物を含む情報の大量集積・活用型ビジネスに対するニーズが高まっている。

  • 著作物の利活用にあたっては、著作物の創造サイクルを維持する観点から、権利者から許諾を得ることが原則である。これは権利者の経済的利益を確保するためだけでなく、自ら生み出した著作物の利用態様をコントロールする機会を保障するためにも重要である。

  • 一方、事前に権利者の許諾を得ることが極めて困難であり、かつ、公共性、公益性、著作物の利用態様等の観点から、権利者の利益を不当に害さない場合は、権利者の許諾を得ずに著作物を利用することを認めてもよいと考えられるケースも顕在化してきた。

  • 著作権の権利制限規定については、教育分野・福祉分野などを含めて多岐に亘る見直しの必要性が指摘されている。その中でも特に、急激に技術革新が進み、国際的にも競争が激化している大量の情報集積・活用型ビジネスが活発に行われるための措置を講ずることは、わが国のイノベーションの促進と競争力の維持・強化、さらには社会全体にとって有益であり、喫緊の課題といえる。

  • 今後、技術革新がさらに急激に進展すると想定される以上、そうした技術進展を適時・的確に取り込み、コンテンツの利活用やサービスの拡充を適切に図るとともに、イノベーションに資する柔軟な権利制限のあり方や運用について検討し、所要の法整備を進めることが急務である。

  • 柔軟な権利制限規定を検討するにあたっては、以下の三点が重要となる。

    1. (1) 権利者の利益が尊重され、著作物の創造サイクルが維持されること
    2. (2) 著作物の利活用が促進され、権利者と事業者双方のビジネスチャンスが拡大すること
    3. (3) 事業者がコンプライアンス上、適切なリスク判断が出来るよう、予見可能性が確保されていること
  • ただし、あらゆる事例に対して柔軟な権利制限規定だけで解決を図ろうとすることは、かえって予見可能性を低下させ、結果として著作物の利活用を萎縮させることが懸念される。ライセンシングを促進する円滑な権利許諾管理のあり方や、裁定制度の見直しも併せて、総合的に検討を深めるべきである。また、技術革新の将来について正確に予想するのは極めて困難であることから、現在の技術・システムを前提に精緻な制度を過度に作りこむことで、今後の成長の妨げになることは避けなくてはならない。

  • 以上を前提とすると、今回の「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ」は、措置が必要とされている類型を三層に分類して対応するとともに、総合的な取り組みを進めるものとなっており、権利者と事業者の双方に配慮しながら、実務に混乱を来たすことなく、技術進歩に適応できるものとなっている。現在の状況を踏まえた措置としては最善といえるものであり、この政府案に基づいた対応を支持する。

  • ついては、わが国の産業競争力強化に資するべく、同中間まとめに基づいた法案の早期提出と、今国会での成立を要望する。

以上

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