一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部
今般の法令改正案においては、昨年のFIT法改正をうけて、調達価格等の面でも、国民負担の抑制や電源間バランスの取れた再生可能エネルギー導入実現に向けた一定の配慮がなされていることを評価する。そのうえで、以下の通り意見を述べる。
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則関係
Ⅰ 再生可能エネルギー発電設備の区分等
(ア)風力発電・地熱発電におけるリプレース区分の新設について((8)、(18)、(19)、(21)、(22))
リプレース区分を設ける場合、所定のFIT買取期間を終えて、本来であればFITから「卒業」し、自立的に発電を続けることが相当である案件まで、リプレースを経て再度FIT認定されては、電源の自立化を妨げることになる。そのため、遅くともFIT買取期間を満了する電源が登場するまでには、新規・リプレースの別を問わず、新たなFIT認定を終了すべきである。
政府が上記方針を明示することを前提に、風力発電および地熱発電のリプレース案件について、一部の不要なコストとリスク低減分相当のIRRを控除した調達価格を定める観点から新たな区分を設けることに賛成する。適地や既存インフラの活用によって、国民負担を抑制しつつ効率的に再エネ導入が進められることを期待する。
(イ)価格区分の見直しによる新区分の創設について((13)~(16))
中小水力のうち資本費が安価な5,000kW以上の案件について、別区分を設けることに賛成する。
Ⅲ 認定基準
入札対象となる太陽光発電の運転開始期限および超過した場合の対応について、入札対象外のものと同様に取り扱うことに異論はない。一方で、事業用太陽光について、認定取得から3年間とした運転開始期限は、標準的な工期に照らして長いため、実情を踏まえつつ一層の適正化を進めるべきである。
調達価格等を定める告示関係
Ⅰ 平成29年度に係る調達価格及び調達期間及び複数年度価格
(ア)全体:利潤配慮期間終了後のIRRの扱いについて
今般提示された来年度以降の調達価格は、全電源についてIRRを据え置くことを前提としている(調達価格等算定委員会『平成29年度以降の調達価格等に関する意見』(以下、委員会意見)p.7)。これは、太陽光発電を除く全電源について、利潤配慮期間(2015年6月まで)の上乗せ分を含むIRRが維持されることを意味する。
言うまでもなく、利潤配慮期間の終了後は、同期間の上乗せ分をIRRから差し引くのが原則である。特定の電源について特別にIRRを維持すべき具体的根拠が十分に示されない限りは、IRRを引き下げるべきである。
少なくとも、認定容量の増加傾向が明らかな電源について、利潤配慮分を上乗せしたIRRを維持するのは不適切である。認定済み案件は時を追って運転開始していくことが見込まれるため、運転開始済み容量の増大を待つ必要はない。
併せて、次回以降の調達価格の検討にあたっては、運転開始済み事業者のIRR実績を調査し、調達価格設定時の想定と大きな乖離がある場合には、調達価格の算定方法等を改善すべきである。
(イ)風力発電(p.10)
20kW以上の陸上風力発電設備の複数年度価格は、「トップランナー的に」現時点における平均的な7,500kW以上の案件の資本費・運転維持費を平成31年度に実現することを想定して設定されている(委員会意見p.23,24)。
FIT認定されている案件の平均容量が現時点でも約10,000kWであることに鑑みれば、今回の想定がトップランナー的基準であるとは考えにくい。真にトップランナー的といえる基準を設けるべきである。
また、今回、20kW以上の陸上風力について、北海道・東北地域における系統連系対策を着実に実行する観点から、平成29年度上半期は平成28年度と同額の買取価格とする経過措置が設けられた(委員会意見p.26)。本経過措置は、単に系統整備が不順であっただけでなく、法令改正に伴う制度移行期にあたるため措置されたことを明確にすべきである。
(ウ)中小水力(p.11)
今回、5,000kW以上の新区分創設に伴い、1,000kW以上5,000kW未満の案件については調達価格が引き上げられた。しかし、これまでの買取価格でも、1,000kW以上5,000kW未満の案件は5,000kW以上の案件に比して多く存在しており、導入促進のために調達価格を引き上げる必要はない。仮に1,000kW以上5,000kW未満の案件について調達価格を引き上げるのであれば、新区分の創設によって国民負担の総額が減少したことを確認する必要がある。
(エ)バイオマス(p.11)
メタン発酵ガス化発電の調達価格の算定根拠である資本費の想定値について、現時点のコストデータは想定値を下回っているものの、立地条件で劣る地域にも立地が進めば「今後必要となる費用が増加する可能性」があるとして調達価格が据え置かれている(委員会意見p.49)。
今後必要となる設備・費用が増加する可能性は理解できるものの、3年間にわたって資本費の想定を据え置く根拠とはいえない。
電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の効率的な利用を促進するため誘導すべき再生可能エネルギー電気の価格の水準に関する目標を定める告示(仮称)関係
○ 風力発電(p.13)
20kW以上の陸上風力について、2030年までに発電コスト8~9円/kWhを実現するとされている。これは、今後15年間をかけて現在の世界標準並み発電コストを目指すことにほぼ等しく、目標としては低すぎる。
そもそもFIT制度の費用対効果には大いに疑問があるところ、導入量が増えても効果的にコストが下がらないと見通されるのであれば、導入量を増やして価格を引き下げることを旨とするFIT制度の意義を根本から問い直す必要がある。
入札の実施に関する指針(仮称)
Ⅱ 基本的事項
○ 入札量(p.14)
入札量については、新認定制度移行に伴う未稼働案件の認定失効量も確認しつつ、ミックスの想定と整合的に定めるべきである。試行期間中の募集容量についても、見直しを排除すべきではない。