1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 地域別・国別
  4. アジア・大洋州
  5. 第7回アジア・ビジネス・サミット共同声明

Policy(提言・報告書)  地域別・国別 アジア・大洋州 第7回アジア・ビジネス・サミット共同声明

(仮訳/正文英語
2016年7月16日

2016年7月16日、シンガポールにおいて開催された第7回アジア・ビジネス・サミットには、アジアの10の国・地域を代表する11の経済団体が参加した。アジアの経済界のリーダーは、世界経済の現状を踏まえつつ、アジア経済が直面する主要な課題について議論を行い、本共同声明を取りまとめた。本共同声明は、アジア経済の活力を今後も持続していく上でのアジア経済界の期待と要望ならびに民間がアジア経済の発展を支えていくために果たす今後の役割について表明するものである。

参加メンバーは、本サミットで掲げられた目標を実現するため、積極的な役割を果たすとともに、各国・地域の政策立案者に対して、実現に向けた働きかけを行うことに合意した。

1.地域経済統合

現在、地域経済統合の動きが加速している。アジアにおける経済連携協定(EPA)と自由貿易協定(FTA)は、近い将来のFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の構築に向けた足掛かりとなる。本サミットでは、EPAやFTAは包括的な内容とすべきことを再確認した。非加盟国についても、EPAやFTAへの交渉参加の機会が与えられるべきである。

EPAやFTAでは、WTO協定に整合する形で、実質的に全ての貿易を自由化することが求められる。特に、本サミットは、中間財にかかる関税の削減は、サプライチェーン全体の製造コストを下げ、地域全体の価格競争力の強化へとつながると考えている。

主要製造業やサービス業に係る直接投資を誘致することは、産業集積へとつながる。本サミットは、EPAやFTAの実現により、外資の上限規制の緩和や、投資家の意欲を阻害する過度なパフォーマンス要求の撤廃を求める。さらに、民間部門の正当な利益を守るために、ロイヤルティ送金の自由が保証されなくてはならない。

また、電子商取引の推進のため、本サミットは、インターネット経由でのコンテンツの国外送信を含む電子送信に対する関税賦課の禁止、デジタル製品の無差別取扱、インターネット上の消費者保護、個人情報保護等を支持する。

2.インフラ開発

アジアでは、民間がビジネス活動を行う上で不可欠な輸送(鉄道、港湾、空港、LNGターミナル等)、発電所、通信などのインフラ需要が急速に高まっている。加えて、中小企業の海外展開の拠点ともなる工業団地が注目されている。本サミットは質が高く、災害対応力を備えたインフラの普及により、国際社会にさらに貢献していくことを確認した。

本サミットのメンバーである国・地域の多くは、インフラ輸出国であると同時に、受入国でもある。輸出国としては、技術とファイナンスを適切に組み合わせて提供するよう、リーダーシップを発揮していかねばならない。国際金融機関のリソースを活用することが不可欠となろう。受入国としては、インフラプロジェクトへの民間投資を促進するために、関連法制度を適切なものとする必要がある。特に、技術、ライフサイクルコスト、環境負荷など価格以外の要因が適切に評価される調達制度が構築されることが鍵となる。

本サミットは、民間部門が事業運営上の障害に直面することなく、インフラプロジェクトを受注できる環境を求めていく。こうした環境を構築するため、資機材への関税削減、国内法の透明化、知的財産権の保護、送金の自由等が必要となる。

3.イノベーションと技術

イノベーションを通じた産業発展を通じて、アジアの国・地域は高付加価値の製品の開発を促進し、さらなる成長に向けた基盤を確固たるものとする。また、IoTやAI(人工知能)といったデジタル技術によって、「Society5.0(スーパースマート社会)」が現実味を帯びる。本サミットは、各国に対して、先端技術の開発に取り組む企業や研究機関にインセンティブを付与する経済特区の設置を求める。IoT、人工知能、バイオテクノロジー、ビッグデータ、スマートシティ、機能性食品、再生可能エネルギー、健康・医療、海洋探査、ナノテクノロジー等の技術分野は、サミットのメンバー国間の共同研究開発の対象となりうる。こうした共同研究を進める上で、高度人材の移動、国際的なデータフローの自由や知的財産の保護が不可欠となる。

あらゆる物がIoTを通じて相互につながる世界においては、国や地域特有の基準や技術的な規制は、ビジネスの阻害要因となりうる。本サミットは、各国に対して、第三国への協力の拡大とあわせ、基準や技術的規制の調和、相互認証といった規制改革の推進を求める。

4.環境とエネルギー

国連気候変動枠組み条約の下、2015年12月にパリ協定が採択された。本サミットは、全ての当事国が参加するこの新たな協定を歓迎し、その早期の批准と履行を求める。

排出削減とエネルギー効率化は表裏一体の関係にある。産業部門の排出削減に向けて、エネルギー効率の良いインフラの普及を促進していかなければならない。公的資金や国際金融機関の支援が、こうした分野において重要な役割を果たすことが期待される。住宅や商業、運輸部門の排出量を削減するためには、エネルギー効率のよい住居やビル、自動車、電子機器、家電等の普及が鍵となる。環境にやさしい製品の貿易障壁を撤廃することはこれらの普及促進に貢献する。

排出量の抜本的な削減には、革新的な技術の開発や実用化、さらなるブレークスルーが不可欠である。本サミットは、各国・地域の政府に対して、研究開発投資の拡大を求める。

以上

「地域別・国別」はこちら