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Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 「公正取引委員会の意見聴取に関する規則」(案)に対する意見

2014年10月31日
一般社団法人 日本経済団体連合会
経済法規委員会 競争法部会

1.取消訴訟における証拠の提出制限

排除措置命令等の名宛人となる当事者にとって、排除措置命令等を受け入れるか取消訴訟を提起するかは重大な経営判断であり、正確な情報に基づき判断する必要がある。しかし、かかる判断に必要な証拠は、公正取引委員会(以下、公取委)が強制調査権限等を行使して収集、保管しており、当該当事者は容易にアクセスすることができない。そのため、当該当事者としては、平成25年独占禁止法改正法(以下、改正法)第52条第1項により閲覧又は謄写した「公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠」を精査し、かかる経営判断を行うことになる。

したがって、当該当事者の閲覧・謄写権の行使を確保するため、閲覧又は謄写の対象となる「公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠」は、規則案第9条の「委員会の認定した事実を立証する証拠の標目を記載した文書」に漏れなく記載される必要があり、その旨を規則に明記すべきである。

あわせて、排除措置命令等を受け入れるか取消訴訟を提起するかを判断するために必要な充分かつ正確な情報の取得を担保し、また、取消訴訟における当該当事者への不意打ちを防止して公平性を確保するために、公取委は、同文書に記載しなかった証拠については、原則として後の取消訴訟において証拠として提出できないこととすべきであり、その旨を規則に明記すべきである。

2.証拠の閲覧及び謄写

(1) 「公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠」の範囲の明示

排除措置命令等を受け入れるか取消訴訟を提起するかという重大な経営判断の際に必要な正確な情報の取得及び後の取消訴訟における当事者の防御権確保の観点からすれば、改正法第52条第1項が規定する、「公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠」には、違反事実を積極的に証明する証拠のみならず、違反事実を否定する方向に働く証拠も含まれると解すべきであり、その旨を規則に明記すべきである。

(2) 証拠の閲覧及び謄写の日時、場所及び方法の指定

規則案第12条第3項、第13条第4項は、公取委が証拠の閲覧及び謄写の日時、場所及び方法を指定する場合には、公取委は「意見聴取の期日における当該当事者による意見陳述等の準備を妨げることがないよう配慮するものとする」と規定している。
しかし、ここでは「配慮」にあたっての考慮要素が抽象的にしか規定されておらず、公取委と請求者の双方の便宜に配慮して「合理的な」指定が行われるべきであるという基本的な方針が明らかにされていない。
日時、場所及び方法の指定にあたっては、より直接的な意味での申請者の物理的な負担等にも配慮したうえで、合理的な指定がなされるべきである旨、追記すべきである。
なお、謄写については、公取委と請求者の双方の負担を軽減し、迅速な謄写を実現する観点から、将来的にはオンラインで謄写を行う方法の導入についても検討されるべきである。

(3) 証拠の閲覧又は謄写を拒むことができる「正当な理由」についての説明及び合理的な証拠開示手続

公取委が、改正法第52条第1項第2文が規定する「正当な理由」により閲覧又は謄写を拒むときには、公取委は当該「正当な理由」について請求者に説明しなければならない旨を規則に明記すべきである。
また、証拠の一部に「第三者の利益を害するおそれがある」事項等が含まれているに過ぎない場合において、「正当な理由」があるとして当該証拠を全面的に不開示とすることは合理的ではなく、当事者の手続保障が妨げられる。
「第三者の利益を害するおそれがある」事項等が記載された部分が証拠の一部である場合には、当該部分につきマスキングを施したうえで、閲覧・謄写が認められることとすべきであり、その旨を規則に明記すべきである。

3.期日に先立つ書面等の提出等(規則案第16条、第17条)

改正法第54条第2項により、当事者には、意見聴取期日における意見陳述、証拠提出等の権利が保障されているところ、当該期日の前に規則案第16条規定の書面等の提出を求められることは、実質的に当事者の意見陳述、証拠提出等の準備期間を制限し、同権利を侵害することになる。

同条は、明らかに法律による委任の範囲を超えるものであり、削除すべきである。

また、規則案第17条第1項は指定職員に過度に広範な指揮権を与えるものであり、法律上認められた当事者の意見陳述、証拠提出等の権利を不当に制限するものである。同条についても削除すべきである。

4.意見聴取調書及び意見聴取報告書についての異議

意見聴取調書及び意見聴取報告書については、改正法第58条第5項の定めにより当事者の閲覧が認められているところ、閲覧した結果、当該書面の正確性について不服がある場合には、当事者は異議を申し立てることができ、異議の申立てがあったときは、その旨を調書に記載しなければならない旨を規則に明記すべきである。

参照:刑事訴訟法第51条第1項「検察官、被告人又は弁護人は、公判調書の記載の正確性につき異議を申し立てることができる。異議の申立があったときは、その旨を調書に記載しなければならない。」

以上

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