一般社団法人 日本経済団体連合会
日ASEAN交流40周年にあたり、東京において日ASEAN特別首脳会議が開催されることを、日本の経済界として、心より歓迎する。
近年、わが国とASEANの経済交流は飛躍的に拡大している。日本の対ASEAN貿易は、2001年に輸出・輸入共に約540億ドルであったのに対し、2012年には輸出・輸入共に約1300億ドルとなった。また、日本の対ASEAN投資残高は、2001年の約350億ドルから2012年には約1200億ドルに増大しており、現在、約4700社の日本企業がASEAN諸国で活動を展開している。
とりわけ、ミャンマーの経済開放やメコン地域とインドとの連結性強化等により、ASEAN地域は、わが国企業にとってビジネス戦略上の重要性を増している。また、各国首脳の強力なリーダーシップの下、2015年にASEAN経済共同体が構築されれば、双方の経済関係がさらに発展する可能性が高い。
経団連は、この機会に、ASEANとの関係強化を図るため、インフラ整備と人材育成の推進、東アジア包括的経済連携(RCEP)による地域経済統合の実現等を通じて、地域全体の持続的成長に貢献していく考えを表明する。
1.ハードおよびソフトのインフラ整備への協力
広域インフラ整備は、地域の成長基盤を形成する上で不可欠であり、ASEAN連結性マスタープランに代表される広域インフラ構想や、各国で進められている経済回廊構想等の具体化に向け、優先プロジェクトを絞り込み、着実に実現する必要がある。
大型のインフラ整備には膨大な資金を要し、公的資金のみでは賄うことができない。これを補うべく、現在いくつかのASEAN諸国において、民間の技術・資金を有効に活用するためのPPP法制が制定されていることを歓迎する。ASEAN各国においてPPP法制が制定され、適切に運用されることで、民間の創意工夫が活かされた案件形成が行われることを期待する。また、価格本位ではなく、各国の持続的成長に貢献する、高品質なプロジェクトが選定される入札制度の導入が重要である。
また、優れた省エネ・低炭素技術を普及し、各国における排出抑制・削減を促進するためには、二国間オフセット・メカニズムの活用促進が有効である。日本は現在、ASEAN諸国のうちベトナム、インドネシアと同メカニズムに関する二国間文書に署名しており、これに続く国が増えることを期待する。
併せて、日本の経済界は、輸出入・港湾関連情報処理システムの普及、ビジネス関連法規の整備、人材の育成をはじめとするソフト・インフラの整備にも引き続き協力していく。
2.東アジア包括的経済連携(RCEP)の早期実現
台頭する中間所得層に支えられた消費市場の成長性、ならびに、分業を基軸とする生産拠点としての高い競争力がASEANの強みである。これらの強みをより発揮するためには、地域経済統合の推進が鍵となる。ASEAN経済共同体構築に向けたプロセスと並行して、本年5月にRCEP交渉が開始されたことを歓迎する。レベルの高い協定を早期に実現するため、ASEAN各国が日本と緊密に協力することを求める。RCEPによって、実質的すべての貿易における関税の撤廃(含段階的撤廃)・引下げ、投資・サービス貿易の自由化、知的財産権の保護、ビジネス環境の整備および各種標準の統一が進展することが重要である。また、RCEPが地域共通のルールを提供することで、サプライチェーン、バリューチェーンの連続性が確保されることを期待する。
日本の経済界は、RCEPの下で実現される開かれたビジネス空間において、地域の貿易投資活性化、インフラ整備、技術移転等に協力していく。