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Policy(提言・報告書)  産業政策、行革、運輸流通、農業 日本の成長に資するジャパン・ブランドの強化に向けて ~政府のクール・ジャパン戦略の推進にあたっての要望~

2013年5月27日
経団連 産業問題委員会
ジャパン・ブランド部会

世界における経済のグローバル化の深化と市民社会の発達の中で、わが国の更なる成長を実現していくためには、農林水産業や鉱工業、観光等のサービス業をはじめ、わが国の全産業が提供する商品・サービスの品質・機能や感性価値、その基盤となっている日本の自然・歴史・文化や国民性についての国際的な理解を促進し、信頼され親しまれる国家としてのブランド力、いわゆるジャパン・ブランドの強化と国を挙げたマーケティング・プロモーションの推進を図る必要がある。

こうした中、現在、政府で進められているクール・ジャパン戦略は、コンテンツを先駆けとして食やファッションなどわが国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品・サービスの海外需要の開拓に資するものであり、わが国の成長に向けたジャパン・ブランド強化の重要な柱としてスピード感を持って実効性ある形で推進していくことが不可欠である。経済界としても、政府が実施する企業の支援策を最大限活用し、国の成長に貢献していきたいと考えており、そのために下記の事項を強く要望する。

経団連では、引き続きジャパン・ブランドの強化並びに国を挙げたマーケティング・プロモーションのあり方について検討を進め、民間としての取り組みを進めるとともに、必要に応じて国に提言する所存である。

1.関係省庁の連携強化

  1. (1) 関係省庁の施策の棚卸しと総合調整
    政府一体、官民一体となったクール・ジャパン戦略の推進に向け、産業競争力会議、クリエイティブ産業国際展開懇談会等で、現在実施・検討されている関係省庁の施策の棚卸しを行うとともに、関係閣僚・省庁間で政策の総合調整を図るべきである。

  2. (2) ジャパン・ブランド強化宣言の実施とジャパン・ブランド基本法の検討
    今後のわが国の持続的な成長を実現するためには、現在政府が進めているクール・ジャパン戦略をジャパン・ブランド強化における重要な柱と位置付け、その展開を図っていく必要がある。その際には、日本の全産業の輸出や海外展開の促進、外国人観光客の誘致(ビジット・ジャパン)や投資の呼び込み(インベスト・ジャパン)といった政策と有機的に連携させることが望ましい。こうした政府全体の方針を明確にするため、総理自らによるジャパン・ブランド強化宣言が行われることを強く期待する。
    併せて、総理を本部長とし、関係閣僚等により構成されるジャパン・ブランド戦略本部や内外の有識者によるジャパン・ブランド委員会、海外や国民・企業に対してはワンストップ窓口になるとともに関係省庁に対しては実質的な総合調整機能を担う事務局を設置すること、併せて、官民連携してジャパン・ブランドの強化を進めていくために税制・予算措置や規制改革等の所要の措置を行っていくことを明記した「ジャパン・ブランド基本法」の制定について検討すべきである。

2.株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)の活用促進

現在、2013年通常国会で審議が進められている「株式会社海外需要開拓支援機構法」が成立した場合には、 (株)クール・ジャパン推進機構(仮称、以下「機構」)について、その最大限の有効活用を図るため、早い段階から中小企業団体や当会など様々なチャンネルを通じて多くの事業者への制度の周知を図り、民間の要望をその制度構築と運用に反映させるとともに、事業開始後は相談窓口を充実させるべきである。

また、「機構」には強力なオーガナイズ、マッチング機能を確保し、幅広い事業者のそれぞれの強みを活かした連携による海外展開を後押しすべきである。

3.株式会社クール・ジャパン推進機構(仮称)の資金の有効活用

「機構」の具体的な支援対象について、「株式会社海外需要開拓支援機構法」(案)は、経済産業大臣が今後定める「支援基準」によるものとしている。今後の「支援基準」の策定にあたり、政府は、例えば以下のような視点も踏まえつつ、「機構」が国益と企業の経済活動の実態を踏まえ、幅広い事業を支援対象に出来るようにすべきである。

  1. (1) インターネットによる情報発信事業
    「機構」がリスクマネーを供給する投資先については、インターネットの速報性や双方向性、口コミ情報の拡散の容易さ、リアルな拠点やビジネスとの連携可能性を最大限活用するため、幅広い産業の魅力発信に貢献するWEB事業への投資を可能とすべきである。また、それらの事業については、現在政府が行っている様々な日本の魅力の発信のためのWEB事業の資産を有効に活用できるようにすべきである。

  2. (2) 外国人を対象とした産業観光
    日本の様々な幅広い産業の商品・サービスの品質・機能や感性価値、その基盤となっている日本の自然・歴史・文化や国民性について、理解を深めるためには、日本を実際に訪問して体感してもらうことが有効であり、こうした目的に即した観光事業についても「機構」の投資の対象とすることを検討すべきである。

  3. (3) クール・ジャパン総本山と大規模MICE施設の一体的整備
    日本の各種産業と文化の情報発信基地ともなりうる「クール・ジャパン総本山」と海外からヒト、モノ、カネを呼び込む大規模MICE(注)施設との一体的整備に、「機構」の資金が活用できるようにすべきである。
    また、設備投資に限らず、日本の魅力発信に繋がる国際イベントで事業性・収益性を有するものについても投資の対象とすることを検討すべきである。

    (注)MICE; Meeting, Incentive tour, Convention/Conference, Exhibition

  4. (4) クール・ジャパン・ブース
    国内外の主要国際空港の出国スペースや主要ターミナル駅は、日本を訪問した外国人や海外に出国する日本人の多くが通過する可能性があり、そうした人々に改めて日本の魅力を体感し、海外に情報発信してもらうため、こうした場所を活用して日本の様々な魅力を発信し、製品・サービスを提供する民間事業についても「機構」の投資対象とすべきである。

  5. (5) 現地パートナーとの合弁事業
    海外でジャパン・ブランドが浸透していくためには、日本らしさを発揮しながらも現地の信頼できるパートナーと連携し、地域に最適なかたちで事業展開を行っていくことが重要になる場合も多い。したがって、機構の投資対象の要件については一定の柔軟性を確保すべきである。

4.その他政府の取り組みを急ぐべき事項

  1. (1) 国を挙げたMICEの活性化
    国際的な会議や見本市その他イベントは、多くの外国人を国内に呼びこみ、日本の魅力を体感してもらう絶好の機会であり、日本で開催されるイベントに多くの外国人が参加することを可能とするため、国は在外公館等を活用したプロモーションや参加者の入国円滑化に取り組むべきである。
    また、国際的なイベントの国内誘致に向けたマーケティングの強化や自主企画運営の能力向上に向けた支援も強化していく必要がある。

  2. (2) 日本からグローバルに広告展開する経費の税制上の取り扱いの明確化
    現在、わが国においては、日本の企業が海外で商品広告を出稿する際には、商品広告で便益を受けるのは海外子会社であるとの考え方に立って、日本の本社が費用負担した場合には海外の子会社へ寄付を行ったとみなされ、寄付金課税の対象となるおそれがあるとされている。また、寄付ではなくグループ内取引とされた場合の移転価格税制については、取引の妥当な利益配分のあり方についての考え方が不明確で、日本の企業が海外で広告を出稿することを躊躇する一因となっている。
    海外における日系企業のイメージの一層の向上と、広告等におけるわが国コンテンツの活用等の促進の観点から、税制上の取り扱いについての議論を進め、その予見可能性の向上を図るべきである。

  3. (3) 日本食の一層の海外展開に向けた支援の強化
    日本食やわが国の食品・食材は、わが国の自然・歴史・文化や国民性を海外に伝える有力なコンテンツの1つである。政府は、現在進めている輸出戦略と食文化・食産業のグローバル展開について、バリューチェーン・サプライチェーンの強化を念頭に、各国の基準・規制の改善をはじめ、外食産業に食材を卸す事業者(ディストリビューター)の海外展開促進、産地と海外の顧客との情報交流の促進等の諸施策に一層強力に取り組むべきである。

以上

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