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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 情報通信技術の利活用による経済再生を目指して

2013年1月22日
一般社団法人 日本経済団体連合会

情報通信技術の利活用による経済再生を目指して【概要】

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1.はじめに

わが国初の本格的な情報通信戦略として「e-Japan戦略」が策定され10年あまりを経た。この間、わが国はICTのインフラ面では世界最高水準#1となる一方、電子行政の推進において諸外国に大きく遅れをとるなど利活用面においては多くの課題を抱えている。

とりわけ高齢化の進展と労働力人口の減少、環境・エネルギー制約、震災からの早期復興と安全・安心な社会の構築など、わが国が直面する諸課題の解決に向け、ICTを積極的に活用しながら、経済社会の様々な分野でイノベーションを起こし、新産業・新事業の創出につなげていくことが重要である。

政府には、官民のICTの利活用を強力に促進すべく、以下の重要施策を、効果の検証を常に行いながらスピーディかつ着実に実施するよう求めたい。

2.社会基盤の強化に向けた高度な電子行政の実現

(1) 国民目線に立った行政の電子化

わが国では、行政手続の電子化、オンライン化は進んだにもかかわらず、利用者視点を欠いたためその利用は進んでおらず、抜本的な見直しが必要である。
とりわけ、行政手続き上、行政が保有する情報は国民から再提出を求めない(二重請求の禁止)、あるいは一つの窓口に情報を提出すれば自動的に政府内の他の組織と情報連携するといった仕組みの構築等により、国民が効果や利便性を十分に実感できる電子行政を推進することが不可欠である。
ICTを活用し、行政の効率化・透明性の向上を目指すことも重要である。このためには、電子化の効果を最大限に引き出すための業務改革(BPR:Business Process Reengineering)、府省庁間のバックオフィス連携、国と地方公共団体間のシステム連携が重要となる。その際、定型業務に関しては、省庁間や自治体間で標準化・共通化し、共通のシステム上で実施可能となるようにしたうえで、民間への業務委託も検討する必要がある。電子行政の導入メリットを、従来の事務コスト(サービス稼働時間、人件費(間接費用含む)など)と比較し定量的に評価し、可視化する仕組みも求められる。
地方公共団体が情報をデジタル化し、バックアップ体制を強化していくことは、住民生活に関わる基本データを守り、社会基盤の強化を図るうえで大きな意義がある。更に番号制度が導入され、地方公共団体間の情報システム連携が進めば、行政手続きのワンストップ化が可能となるなど、国民は様々な恩恵を享受できる。政府には地方公共団体の情報化に対する十分な財政的支援や自治体クラウドの提供等が求められる。
併せて、選挙活動におけるインターネットの活用解禁や、インターネット投票を可能とする仕組みの検討も積極的に行うべきである。
省庁間、国と地方自治体間そして官民の間に横たわる壁を乗り越えて、以上の施策を強力に推進するうえで政府CIO(Chief Information Officer)の役割が極めて重要である。しかし、現在の政府CIOは法的な裏付けのある制度となっておらず、権限が不明確である。
中長期的視点に立って高度な電子行政の実現に強いリーダーシップを発揮できるよう、業務改革に関する権限や政府のIT予算の効率的な配分や執行に関与する権限、政府情報システムの調達・運用に関して統一的な指針やルールを策定する権限を法的に担保することが不可欠である。
併せて、政府CIOを支える人材をバランスよく配置する体制作りが必要であり、民間からのBPRノウハウを有する人材の登用、ICTの専門知識・技術を持った政府職員の長期的視点に立った育成が求められる。
以上の観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 次期通常国会における政府CIO関連法の成立
    1. (1) 政府CIOを法律上明確に位置づけるとともに、政府CIOに以下の権限を付与する。
      • ア) 国と地方公共団体及び独立行政法人との連携をも視野に入れた政府情報システムの刷新等を通じた高度な電子行政の推進に加え、医療の情報化、ITSなどを含む政府全体のIT戦略の企画・立案・推進
      • イ) 各府省のICT関係予算の概算要求前の段階での評価および府省間調整、ICT投資の管理権限
      • ウ) 各府省に対するICT投資に関連する業務改革の勧告権限
    2. (2) 政府CIOは閣僚に準じた官職(常勤)とし、内閣総理大臣に直接意見具申できるものとする。また、IT戦略本部の本部長代行(兼事務局長)を務めるとともに、内閣総理大臣(IT戦略本部長)および関係閣僚#2と密接に連携できるよう、同格の本部員として参加する。
  2. 国民が利便性、効率性、透明性を実感できる電子行政の実現
    1. (1) 府省横断的な共通システムの構築、システムの標準化による相互運用 性の確保、地方公共団体、独立行政法人との相互運用性の確保
    2. (2) 地方公共団体の情報システム化に対する国の財政支援
    3. (3) 「新たなオンライン利用に関する計画(2011年8月3日/IT戦略本部決定)」の着実な実施
    4. (4) 選挙活動におけるインターネットの活用解禁や、インターネット投票を可能とする仕組みの検討
    5. (5) 国民が価値を実感できるオープンデータ、オープンガバメントの府省横断的推進

(2) 番号制度の早期実現と民間活用の拡大

現在、年金、健康保険証、住民基本台帳など、分野ごとに異なる番号が存在するため、利用者に複数の番号を管理する不便を強いているばかりでなく、行政サイドにおいても、情報連携ができない、行政事務が複雑化するなどの事態が生じている。
番号制度は、ICカード等の本人確認の手段と併せ、きめ細かく利便性の高い行政サービスを国民に提供する上で必要不可欠な基盤である#3。本制度の導入で、例えば、行政手続きの添付書類の削減、1カ所の窓口で全ての手続きが完結するワンストップ型サービスの提供、国民に適時、適切なサービスを個別に通知する「プッシュ型行政情報提供サービス#4」の実現等が可能となる。
企業と国、地方公共団体などの行政機関との間では、従業員の社会保険料や所得税、住民税の関連業務をはじめとして、関連資料の提出や申請・届出・調査など膨大な情報のやりとりが行われている。現状では紙と電子媒体が混在しているが、番号制度を有効に活用し、標準化、電子化することで簡素で効率的な事務体制が実現し企業側の負担も軽くなる。
加えて、将来的には番号制度の民間利用の道を拓くことにより創意工夫を活かした新しいサービスの展開に結びつくことも期待される#5
先の国会において、番号制度に関する法案は廃案となったが、次期通常国会において確実に法案を成立させるとともに、将来の民間活用の拡大に向けた議論を加速すべきである。

〔重要施策〕
  1. 番号法案の早期成立
  2. 個人情報保護のための第三者委員会の早期立ち上げ等、関連施策の円滑な実施
  3. 番号制度の導入による国民利便性の向上
    1. (1) 行政組織間のバックオフィス連携
    2. (2) 国・地方公共団体のデータ連携
    3. (3) プッシュ型行政情報提供サービスの実現
  4. 番号制度の民間活用の拡大の早期実現
  5. 法人番号等の活用促進による社会コストの削減

3.新産業・新事業の創出に向けた環境整備

(1) ビッグデータの利活用の促進

世界の企業は、ヒト、カネ、モノに並ぶ第4の経営資源として「情報」に注目し、膨大な情報の収集や解析、革新的利活用策の開発等により、新たなサービスの提供や競争優位を獲得すべく、激しい競争を繰り広げている。この分野で、最近特に注目されているのが、ビッグデータ#6および公共データである。
業種を超えたビッグデータの利活用を通じ新ビジネスの創出が期待されるなかで、「個人情報」として取り扱われる可能性のある情報#7については、個人情報保護法との関係からわが国では十分に活用できていないのが現状である。プライバシー保護と、情報の自由な流通による社会的便益を両立させるべく、国民的なコンセンサスを形成していく必要がある。
特に、情報収集時の同意の取り方、匿名化情報として安全に取り扱うための条件等のルールの明確化について早急に検討し、結論を出すべきである。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. ビッグデータの利活用環境の整備
    1. (1) 個人情報保護法、関係府省のガイドライン等の見直し及び個人情報の活用のあり方に関する検討
    2. (2) 情報の自由な流通とプライバシー保護のバランス、制度の国際的整合性に関する検討
    3. (3) 情報の使用許諾、収集や提供の対価のあり方に関する検討
  2. ビッグデータの有効活用を可能とするための研究開発の推進

(2) オープンデータの推進

国・地方公共団体などの行政機関が保有するデータは、民間の経済活動にも有用なものが多いが、わが国においては、民間が利用するための制度が十分整備されていない#8
こうしたなか、IT戦略本部が2012年7月4日に決定した「電子行政オープンデータ戦略」では、「公共データは国民共有の財産である」としたうえで、公共データ活用の推進と、公共データ活用のための環境整備に取り組む方針が盛り込まれた#9
経団連が行った調査では、公共データ利用の障害として、「データが公開されているかどうか分からない/データがどこにあるかわからない」といった回答が最も多く、改善を求める意見が多い。
民間による二次利用の道を開くべく、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 行政機関が保有するデータの民間による利用促進
    1. (1) 既公開データの商用利用の早期実現
    2. (2) 組織間の情報マッシュアップを可能にする用語レベルの共通基盤整備、データ作成のルール化(標準化、互換性の確保)
  2. 公共データ公開手続きの簡素化
    1. (1) 電子的な公開、開示請求の不要化による自由利用促進
  3. 包括的著作権利用許諾の検討
    1. (1) 権利関係の整理、個々のデータの使用許諾手続きの不要化
  4. 行政機関の持つデータカタログの整備および政府共通ポータルサイトの設置

(3) クラウド技術の活用促進

企業のグローバルな経営の全体最適化を図る手段として、利便性、コスト、耐災害性に優れたクラウドコンピューティングへの流れを、今後さらに加速していく必要がある。
とりわけ、クラウド技術は、農林水産業、観光、資源循環など、個々の経営規模およびICT投資力が比較的零細な産業分野の発展において、より大きな効果を発揮することが期待されている。
しかし、情報やサービスが国や地域を容易に越えるというクラウドの技術的特徴により、その健全な発展には各国ごとの縦割りとなっている法制度#10の国際的な調和が不可欠である。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 国際的に調和のとれたデータ越境移転ルールの検討、国内法制度・政策の見直し
    1. (1) 医療機関による医療情報の保存・分散管理における国外データセンター活用の可能化、外為法上の「クラウド上での技術情報保管」の考え方の明確化
    2. (2) プライバシーに関するEUのルール見直し#11等を踏まえた、わが国の個人情報保護法等のあり方の検討
  2. 世界規模でのクラウドビジネスの促進に向けた国際的な官民連携
    1. (1) オープンで透明なインターネット環境の堅持
    2. (2) 米国、EUとのインターネット政策の連携
    3. (3) 相互運用性(インターオペラビリティ)の確保
  3. 農商工連携・6次産業化#12を含めた農林水産業分野#13での実証事業への支援、有用金属を含むリサイクルの流れの可視化等資源問題への対応(官民連携による資源循環データベースの構築・データ管理システムの検討等)

(4) ICT利活用人材の育成

ICTを活用したイノベーション創出の鍵を握るのは、言うまでもなく人材であり、その育成はわが国経済社会の将来の発展の土台といえる。
グローバル競争に晒されている企業においては、競争力あるソフトウェア開発人材のみならず、経営方針を踏まえ社会的課題の本質を掘り下げ、ICTを利活用した解決策をデザインできる高度人材が必要となっている。
その育成には、初等中等教育においてICTを効果的に活用することで将来の利活用人材の裾野を拡げるとともに、高等教育ではICTを使いこなす実践的能力を基礎能力として位置付ける必要がある。また、産学官の連携を強化することで経済社会の変化を柔軟に取り込みながら、高度なICT人材を継続的に育成していくための環境整備を図ることが不可欠である。こうした観点から、政府は、次の施策に重点的な資源配分を行う必要がある。

〔重要施策〕
  1. 産学官連携による高度なICT利活用人材教育への財政支援
  2. 過去に産学共同で行われてきた実践的教育#14により得られた教育資産の蓄積、普及、評価、改善を継続的に行う拠点の構築
  3. ITパスポート試験などの国家資格や能力評価試験の普及促進
  4. 初等中等教育におけるICTの効果的活用
    1. (1) ICTを活用した児童に対する教育、デジタル教科書の導入
    2. (2) 教員のICT活用指導力の向上、ICTを用いた校務支援
    3. (3) 学校と教育委員会・保護者・地域コミュニティ間のICT化促進
    4. (4) ICTを使いこなす能力を基礎能力として習得させるための教育カリキュラムの導入

4.安全・安心な社会の実現

(1) 防災・減災のためのICTの活用

東日本大震災の経験はICTの強みと課題を浮き彫りにした。例えば、電話回線利用の集中により、一時的に音声通話はつながりにくい状況になったが、データ通信はアクセス遅延が発生したものの有効に機能し、データ通信を活用した災害用伝言板サービスやインターネット上での行政情報の提供ができた。
また、自動車・カーナビメーカー各社が協力し、ITSを活用し、カーナビの通信機能により、収集したプローブ情報と各種交通情報等を組み合わせた被災地の車両通行実績の地図上への公開や、被災自治体などへの支援にクラウド技術を用いたサービスが展開され大きな実績を挙げた。
さらに、津波被害を受けた沿岸部を中心に、広域にわたる通信設備(携帯電話基地局、中継伝送路・交換機、信号管制システム、電柱・ケーブルなど)が被災したことから、重要機能の地域分散や多ルート化、衛星通信の活用等による広域災害への備えの重要性が明らかになった。加えて、電源・燃料の確保の重要性についても改めて認識された。通信事業者においては、災害時の通信の確保に向けて、携帯電話基地局のバッテリー増強や中継伝送路の信頼性向上、通信ビルの高台移設等の対策を既に講じているところである。
他方、昨年末に起きた高速道路上のトンネル崩落事故に見られるように、わが国がこれまで整備してきたインフラの老朽化が進んでおり、今後様々な問題が生じることが懸念される。こうしたなか、画像情報やセンサー技術等を活用し、トンネルや橋梁等の構築物や建物などの老朽化や被災による異常などを検知し、予防的な補修や安全確認等を行うことがますます重要になっている。
ICTを活用した公共投資の促進は、ハード面のみならず、ソフト面からも、21世紀型の新たなインフラ輸出のひとつにもなりうる。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 情報通信ネットワークの耐災害性強化・整備
    1. (1) 電力供給信頼性向上対策に係る助成措置
    2. (2) 発電機等に用いる燃料の通信事業者への優先的供給
    3. (3) 通信設備の高台移転推進に向けた税制優遇措置
    4. (4) 国による次世代衛星通信技術の研究開発の推進
  2. 自治体クラウドの構築推進、緊急時の情報バックアップ体制の整備、および省エネ型のデータセンターの地方分散整備促進に向けた予算措置並びに税制優遇措置
  3. 公共構造物や建物等に対する画像・センサーネットワークの整備による効率的な維持管理

(2) 環境に優しく安全・安心な街づくり

ICTは環境に優しい街づくりにも貢献する。このためには、ICTを活用した高効率かつ安定的なエネルギーマネージメントシステムの構築が求められる。先端技術・システムやノウハウを駆使し、エネルギーの需給両面での効率的な管理を可能とするスマートコミュニティ・スマートハウスの実現に向けた社会実験を加速するとともに、低炭素な移動を実現するための交通システム等について、より広域的な整備を進め、スマートシティの形成を促進していくことが重要である。
あわせて、東日本大震災の経験をもふまえ、交通・物流の円滑化が図れる情報ネットワークを備えた道路交通網を早期に整備する必要がある。ICTを活用し、車車間通信・路車間通信など、実用化に向けた取り組みが進んでいる通信システムを組み合わせ、平常時には高齢者をはじめ、あらゆる国民が安全・安心に移動できるための基盤として、また災害時には地上インフラのみに頼らない情報ネットワークの確保に活用すべきである。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 環境に優しい街づくりのためのICTを活用したエネルギーマネージメントシステム構築への支援
  2. 災害時、平常時の双方において機能する道路交通情報通信ネットワークの整備、および自治体が市民に情報提供する為の情報基盤(G空間〔地理空間〕情報、ベース地図、セキュリティ管理、交通関連情報など)の整備

(3) 医療・介護分野でのICTの積極的活用

患者数・医療費の増加、医師の不足や偏在等による地域医療への不安の高まり、世帯構成の変化や都市部における高齢者の増加、健康志向など、来るべき超高齢社会に向け、わが国が世界に先駆けて取り組むべき課題の解決に、ICTの貢献が期待される。
高度なセキュリティ技術を駆使し、情報共有をスムーズに行うことにより、医療の質の向上や予防医療の推進による医療費の適正化・効率化、高齢者の社会参画を図ることで、国民の将来不安の払拭や健康長寿社会の実現が期待できる。また、日本が得意とするロボット技術の医療・介護分野での実用化に向けた取組み強化も求められる。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. 持続可能な医療提供体制に向けた基盤整備・全国規模での地域医療ネットワークの整備
  2. 医療の質の向上に向け、医療等情報の利活用環境整備
    1. (1) 医療等情報の利活用促進に向けた法制度整備(広域医療情報基盤、セキュリティ・プライバシーの確保、包括同意など)
    2. (2) 番号制度と医療情報システムの連携
    3. (3) 在宅医療推進に向けた各種規制の緩和(自治体の個人情報保護条例など)
  3. ロボット技術の研究開発、医療・介護分野での実証実験の推進、規制緩和

(4) サイバーセキュリティの強化

政府や企業に対するサイバー攻撃が多発化し、攻撃技術も高度化しているが、自由でグローバルな情報流通のためには、インターネットにおけるセキュリティの確保が前提となる。
これに対処するための防御技術の開発と関連産業の育成や人材育成、ならびに重要インフラ#15等への攻撃に対して、関係省庁が連携して適切かつ迅速に対応するための制度や体制の整備を検討していく必要がある。
また、クラウドやスマートフォンなどの普及により、多様なデバイスによる国境をまたがる情報のやり取りやサービスの提供が今後一層進むことが予想される中で、ユーザーへの安全・安心を確保する観点から、国境を越えた協力体制の整備が必須である。
こうした観点から、次の施策が重要である。

〔重要施策〕
  1. サイバー攻撃の高度化に対応する防御技術、関連産業育成のための研究開発や人材育成の強化
  2. 関係省庁や政府機関の連携強化
    1. (1) 様々なサイバー攻撃を想定した各省庁の役割分担と連携のあり方、そのための法体系の整備
  3. 国際連携の強化
    1. (1) 越境サイバー攻撃に対する国際連携のもとでの演習の実施等
  4. クラウドやスマートデバイスの活用を促進するセキュリティガイドライン等の普及

5.おわりに

情報通信技術の利活用の一層の推進による経済再生を目指すうえで、民間活力をいかに引き出すかが大きなカギをにぎる。とりわけ、ICTを活用した街づくりや医療・介護、行政サービス等の分野は、日本発の新産業・新事業を創出していくうえで、大きな潜在力を秘めている。

そのための環境を整備すべく、米欧に比べて低いわが国における情報通信分野の政府研究開発予算#16を増やすとともに、大胆な規制・制度改革、IT投資に対する政策的支援を進める必要がある。

政治の強いリーダーシップを期待したい。

以上

  1. 総務省「ICT基盤に関する国際比較調査(平成23年)」において、30カ国中、基盤(整備)総合第1位(2位スウェーデン、3位韓国、4位米国、5位ノルウェー)。固定ブロードバンド最高速度、第3世代携帯電話比率、光ファイバ比率は世界1位。固定ブロードバンド品質は世界2位、安定性は世界3位。
  2. 経済財政・経済再生担当大臣、情報通信技術(IT)政策担当大臣、財務大臣、総務大臣、経済産業大臣、行政改革担当大臣、国土交通大臣、厚生労働大臣など
  3. 年金記録の誤りや不備、戸籍と住民登録のデータ齟齬など、従来型の紙ベースでの処理においてみられた誤りの排除や、突合作業の負担軽減にも大きな効果があると期待される。
  4. 国民に対する申請・申告すべき内容の告知や、内容の確認等が行政側からインターネット等を通じて行われるサービス。証明書類を行政側のバックオフィス連携で交換するため、ワンストップ申請も可能となると期待されている。
  5. 高齢者を対象とする配食サービスや、年金型保険など、間違いなく本人確認が不可欠な分野における民間活用が期待されている。
  6. ネットワークを通じて流通している多種多様かつ大量の情報。
  7. 例えばオンラインでのショッピング履歴や車両の走行履歴、GPSを通じた位置情報等。
  8. たとえば、行政機関が保有するデータの著作権のうち、財産価値が顕在化していないものについての利用許諾は各機関の裁量にゆだねられているが、営利利用を認めることにより財産価値が顕在化するとみられる場合には、国有財産法または地方自治法に基づく管理が必要となる可能性があるとされ、多くの場合、営利利用は認められていなかった。
  9. 4つの基本原則として、「(1) 政府自ら積極的に公共データを公開すること」「(2) 機械判読可能な形式で公開すること」「(3) 営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること」「(4) 取組可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取組に着手し、成果を確実に蓄積していくこと」が示された。
  10. 特に、セキュリティやプライバシー保護の面での課題の解決が重要となっている。
  11. EUデータ保護規則案が昨年公表された。
  12. 農業や水産業などの第一次産業が食品加工(二次)・流通販売(三次)にも業務展開する経営形態
  13. 例えば、農業従事者の高齢化への対応や後継者の育成、消費者ニーズの把握とその生産への反映など様々な課題を解決すべく、ICTやセンサー技術等の利活用による生産の効率化・省力化、作業工程やノウハウのデータベース化による生産効率の向上・平準化、販売者のデータ活用等による生産計画への反映等の取り組みに情報通信技術を活用することが期待されている。また水産業においては、生産者に対する情報発信や決済サービス、産地市場・消費者市場に向けた出荷・配送情報や箱単位での鮮度管理、生産履歴情報、一般消費者の安全・安心のための産地情報、安全・衛生情報、トレーサビリティの提供を行うクラウドシステムの構築が模索されている。
  14. 例えば、経団連では筑波大学や九州大学と連携し、カリキュラムの共同作成、講師の派遣、PBLへの支援、長期インターンシップの受け入れを行うなど、実践的な高度ICT人材の育成プロジェクトを進めてきた。
  15. 他に代替することが著しく困難なサービスを提供する事業が形成する国民生活及び社会経済活動の基盤であり、その機能が停止、低下又は利用不可能な状態に陥った場合に、我が国の国民生活又は社会経済活動に多大なる影響を及ぼすおそれが生じるもの。事業分野は、情報通信、金融、航空、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス(地方公共団体を含む)、医療、水道、物流。
  16. 2009年における情報通信分野の政府研究開発予算は、日本(1580億円)、米国(3494億円)、欧州委員会(3740億円)となっている。(総合科学技術会議分野別推進総合PT情報通信PT(第12回)資料等をもとに総務省作成の資料より)

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