一般社団法人 日本経済団体連合会
ミャンマーは、2011年3月の民政移管以降、民主化を進め、着実に国際社会との連携強化を図っている。わが国としては、こうした動きのさらなる進展を支援するとともに、2015年のASEAN経済統合を視野に、日ミャンマー間の経済協力を具体的に進めるべきである。特に、ミャンマーの産業を支える国内の基幹インフラおよび周辺諸国と結ぶ広域インフラの整備が喫緊の課題であり、これを通じて、同国の潜在力を活かした経済活動を促進し、経済発展に積極的に貢献することで、アジアの持続的成長につなげることが重要である。
そこで、4月に予定されている日ミャンマー首脳会談等を通じて、以下の取り組みを進展させるよう、日ミャンマー両国政府に求める。
1.日本政府の支援ツールの拡充
(1)円借款供与の早期再開
ミャンマーならびにアジアの持続的成長を実現するという観点から、わが国はミャンマーに対する円借款を再開し、ミャンマーにおける大型インフラの整備を支援すべきである。具体的には、南部経済回廊(ダウェイ~ホーチミン)、東西経済回廊(モーラミャイン~ダナン)における連結性を高めるうえで要衝となる同国の電力、港湾、道路、鉄道、上下水道、通信ITの整備を急がなければならない。また、対日期待の高い、ティラワ、ダウェイの各経済特区の整備について、官民連携で着実に実現を図ることが求められる。さらに、資源・エネルギー開発においても円借款を活用した協力をスピード感をもって推進すべきである。
その際、ミャンマー政府は環境への負荷が少ない技術や設備を指向していることから、わが国はこれに積極的に応えていく必要がある。
(2)国際協力銀行(JBIC)の出融資の実施
上記のインフラ整備ならびに資源・エネルギー開発を推進するためには、円借款のみならず、JBICの出融資を活用し、迅速かつ競争力あるファイナンスを提供することが有効であり、JBICの積極的な対応を求める。
(3)人材育成と制度整備のための技術協力等の拡充
ミャンマーは、安価で優れた労働力を有しており、わが国企業が投資するうえでの魅力となっている。しかしながら、経済改革や産業を担う高度人材については未だ不足しており、わが国はODAを活用してその育成を積極的に支援すべきである。
また、投資を呼び込むためには、通関制度、入国管理などの整備が重要であり、この面での技術協力等に力を入れていくべきである。
(4)貿易保険拡充の着実な実施と柔軟な運用
今後の経済交流の活性化を見据えて、今年1月に日本貿易保険(NEXI)が打ち出した短期・中長期のミャンマー向け貿易保険の拡充の方針を歓迎するとともに、その着実な実施と柔軟な運用を期待する。
2.経済交流促進のための枠組みづくり
(1)投資協定および租税条約の早期締結
グローバルにビジネスを展開するわが国企業にとって、投資にかかる外資規制や投資先におけるビジネス上の規制・手続きなど、国境を越える投資活動に関する障壁の削減・撤廃は不可欠であり、昨年12月、両国政府が投資協定の協議開始で一致したことを歓迎する。送金規制、輸出入ライセンス、輸出で得た外貨の範囲内でのみ輸入を認める輸出第一主義の撤廃などの重要課題については、わが国の投資拡大を図るためにも、投資協定の締結を待つことなく、可及的速やかに実現すべきである。
また、投資協定と並ぶ重要な法的な基盤として、二重課税を防止する租税条約の締結を急ぐ必要がある。
(2)ビジネス環境整備の枠組みの設置
ミャンマーのビジネス環境の整備を支援するためには、経済界が提起するビジネス環境上の課題について、両国の官民が共同で行動計画を策定し、その実施、評価を行っていくような、計画の達成率が高い枠組みを導入することが有効である。