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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 科学・技術予算編成プロセス改革「アクション・プラン」(案)に関する意見

2010年5月28日
(社)日本経済団体連合会
産業技術委員会
重点化戦略部会

日本経団連では、昨年12月の「科学・技術・イノベーションの中期政策に関する提言」 、本年4月の「豊かで活力ある国民生活を目指して~経団連 成長戦略 2010~」 等において、科学・技術予算編成に係るPDCAサイクルの見直し、国家的課題解決に向けた政策課題別の戦略の策定を提言してきた。今般、科学・技術予算編成プロセス改革「アクション・プラン」(案)に関するパブリックコメントが募集されたことから、改めて以下のとおり意見を表明する。

1-1 実効性の確保

〔意見〕

総合科学技術会議は、新成長戦略(基本方針)で掲げた100兆円超の需要創出等の目標も踏まえ、各国家的課題における目標を可能な限り定量的に定めた上で、その実現に必要な成果と対応する方策、達成時期、責任官庁・協力官庁を、体系的かつ具体的に明記すべきである。国策的観点から、重要施策の漏れや類似施策の重複の排除、文部科学省と出口官庁の連携強化を推進し、選択と集中の下、研究開発のポートフォリオ化と、予算の一元化も含めた関連施策のパッケージ化を主導することが求められる。

〔理由〕

従来の科学技術政策は、必ずしも具体的な成果目標、目標と手段の関係性、達成時期、責任官庁等が明確化されなかったことから、責任の所在があいまいになるのみならず、国民に対する説明責任も十分に果たし切れていない。財政状況が厳しく、科学技術が成長力強化や国家的課題解決に果たす役割が高まる中、成果目標や責任の所在等を明らかにするとともに、無駄を排除し関連施策を統合することで、政策の一体的・効果的な推進が可能となる。

1-2 アクション・プランの検証

〔意見〕

総合科学技術会議は、アクション・プランのPDCAを推進すべく、客観的な評価指標を予め設定し第3者評価を活用すること等を通じて検証を行い、その結果を、成果目標の実現、費用削減や重複の排除等の行政の効率化等に向けた具体的な改善につなげるべきである。とりわけ、同プランの予算への反映状況(各府省の概算要求、政府原案策定)および実施状況を国民に分かりやすく提示した上で定期的に精査し、関係府省に対し必要な対応を求めることで、同プランの見直しと、政府の予算編成プロセスの一層の改革を推進すべきである。

〔理由〕

科学技術基本計画はじめ過去の科学技術政策の実績や課題が十分に検証されておらず、新たな政策の企画立案・総合調整に活かされていないだけでなく、国民への説明責任も十分に果たし得ていない。また、予算編成においても、きめ細かな検証がなされておらず、総合科学技術会議の指導性にも限界があるため、資源配分方針およびSABC評価は、必ずしも当初意図されていた誘導効果をもたらしていない。

1-3 府省連携のインセンティブの付与

〔意見〕

アクション・プランの推進にあたり、例えば、グリーン・イノベーションとライフ・イノベーションの加速的推進のための新たな予算枠を設定したり、府省連携により節約できた予算を他の研究開発予算に活用できるよう担保するなど、総合科学技術会議の司令塔機能を強化しつつ府省連携に対するインセンティブを付与する制度的枠組みを検討すべきである。

〔理由〕

これまでも科学技術連携施策群や社会還元加速プロジェクト等、府省連携による取組みが推進されてきたが、関係府省が主体的に参加することやプロジェクト推進等における費用削減に対するインセンティブが十分でないため、期待された効果を生むには至っていない。そのため、アクション・プランを実効ある形で推進するための仕組みの構築についても検討することが有用である。

1-4 実証や普及に向けた各種施策の具体化

〔意見〕

実証や普及に向けた規制改革、国際標準化等、出口(市場)を意識した個別施策を、各方策のロードマップにおいて具体的に記載すべきである。「環境先進技術による社会インフラのグリーン化への支援」以外にも、社会インフラへの統合が期待されるものは海外展開に向けた施策を必ず含めるべきである。

〔理由〕

従来の科学技術政策では必ずしも出口を意識した一体的な政策推進がなされず、科学技術の成果が大きなイノベーションや新規の需要創造につながったという実感を得られていない。また海外展開を意識した施策が取られていないため、優れた技術であるが充分な国際市場獲得に至らぬ例が散見される。これらを解決するため、特に出口を意識した具体的な施策展開が必要である。

2. グリーン・イノベーションにおける方策の追記

〔意見〕

(6) 「化石資源の効率的使用」において、現行案で言及される「製造プロセス」と並べ、「革新的材料の開発」を位置付けるべきである。ヒートポンプについて、高効率化と低コスト化に加え、環境負荷のより少ない新冷媒技術の開発や冷媒回収システムの確立を明記すべきである。

〔理由〕

高効率火力発電では、革新的な高耐熱材料、高耐食材料などの研究開発がエネルギー使用効率向上への貢献及び国際競争力強化に資する。ヒートポンプによる温室効果ガス削減のポテンシャルは非常に高いが、新冷媒に関する基礎研究や回収システムの確立により、その抑制効果を一層高めることが重要である。

3. 医療分野のICT利活用拡大

〔意見〕

「予防医学の推進による罹患率の低下」において、「医療情報の電子化とITネットワーク化による医療情報の効率的な集約」と「個人情報に配慮した医療情報の研究利用システムの構築」は、本方策を効率的に推進し、その成果を高めるという観点から、関連法制度の整備に関する制度上の検討と大規模実証等を推進すべきである。

〔理由〕

大規模なゲノムコホート研究推進の重要な基盤であると同時に、医療費の抑制、遠隔医療診断の普及、適正に管理された医療情報に基づくヘルスケア新産業創出等、国民生活の利便性向上並びに雇用創出の双方において波及効果が大である。

4. 競争的資金のプロセスの効率化

〔意見〕

使用ルールの統一化に加え、競争的資金の公募、申請、実施、評価の一連のプロセスにおける業務フローの簡素化・迅速化についても検討を進めるべきである。一連の業務フローを見える化した上で、民間企業での取組みを参考としつつ、効率的な処理方法を標準化・統一し、電子化すべきである。これは行政の効率化のみならず、研究者の負担軽減にもつながるものである。

〔理由〕

競争的資金に係る煩雑な事務処理は、リサーチ・アドミニストレーターが不足するわが国においては、研究者に大きな負担を強い、研究活動に支障をきたす一因となっている。また、財政状況が厳しい中、煩雑な事務処理は人件費の増大にもつながるものである。わが国の研究環境を改善し、競争的資金を拡充していく上でも、競争的資金に係る各種負担を軽減していくことが重要である。

以上

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