
加藤氏
経団連は2月28日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会首都直下地震等対策推進タスクフォース(光田毅座長)の第3回会合を開催した。過去の教訓を踏まえた災害への備えについて、東京大学生産技術研究所の加藤孝明教授から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 防災【も】まちづくり
防災はマイナスをゼロに近づける話になりがちだが、むしろプラスを生む話を考えることが重要である。
防災【だけ】のまちづくりには限界がある。防災をコストとして捉えるのではなく、現状の課題を総合的に解決し、未来を開く投資と考えるべきである。
例えば、徳島県美波町の伊座利集落は、災害リスクもさることながら直面する過疎化に対応することが喫緊の課題である。地域の持続性を高めつつ、災害にも備える事前復興アクションプランを自ら策定した。
静岡県伊豆市の土肥温泉は、津波避難機能と観光機能を兼ねた複合タワー施設を造り、観光振興と防災の両立を図った。
防災と他の地域特性を重ね合わせて価値を高める「防災【も】まちづくり」の視点が重要である。
■ 机上と実践のサイクル
机上の議論を進めるだけでなく、現場での実践とそこからの机上へのフィードバックが不可欠である。机上の理論だけでは、現場から「お前ここに来てやってみろ(OKY)」と言われる状況となる。フィードバック機能が弱ければ、結局のところ、「やったふり」を助長することになりかねない。リソースの限界を認識して、現場からのフィードバック機能を強化し、机上と現場の間で正のスパイラルを確立する必要がある。
■ 災害からの教訓
2018年の大阪府北部地震では、ブロック塀の倒壊で犠牲者が出たが、実は、1978年の宮城県沖地震で経験済みである。災害経験の継承、教訓の展開がされていなかったことに着目すべきである。
2016年の糸魚川大規模火災や、24年の能登半島地震での輪島の市街地延焼は、社会に衝撃を与えた。しかし実は、消防が機能しなければ、市街地が延焼するのは至極当然のことである。社会は市街地の延焼リスクを過小に認識している。1棟火災が広域に延焼する市街地は全国に潜在している。特に東京の延焼リスクは桁外れに大きく、現在でも、1995年の阪神・淡路大震災における神戸市長田区の延焼火災を大きく上回るリスクがある。社会の災害リスク認識の是正が不可欠である。
■ 需給のマネジメント
防災に対する行政の頑張りは、かえって公助依存を助長しないか懸念している。
例えば、首都直下地震で想定される負傷者9万人に対して、東京消防庁管内の救急車は約300台である。災害時に救急搬送できる人数を考えると、埋め難い需給の差がある。社会はこのことを理解する必要がある。そのうえでこの差を埋める社会システムの構築が必要である。
私は災害時には域外に頼ることなく、自分の地域のリソースで対応できるよう努力する「災害時自立圏」という考え方を提唱している。
防災の根幹には需要とリソースの著しい不均衡がある。自分で対応できる人には自助を促し、支援対象を社会的弱者に絞るなど、「省・需要」が必要である。同時に、災害時に遊休するエンターテインメント系施設の駐車場や予備電源を避難時に活用するといった、供給(資源)を増やすアプローチが必要である。
◇◇◇
説明後、参加企業が、事業継続計画(BCP)の取り組み状況と課題について事例を紹介した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】