経団連では、提言「スタートアップ躍進ビジョン」(2022年3月15日)で掲げた、27年までにスタートアップの数・成功のレベルを共に10倍にするという目標「10X10X」の実現に向けてさまざまな活動を展開している。
なかでも大きな活動の一つが「スタートアップフレンドリースコアリング」(スコアリング)である。スコアリングは、スタートアップエコシステムの成長に向けて大企業の行動変容を図るべく、各社がスタートアップにどれだけフレンドリーか、エコシステムにおいてどれだけ重要な役割を果たしているかを可視化する取り組みである。これまでに2回実施し、約200社が参加している。
経団連は10月7日、スコアリングへの参加特典として、Trustedのファリザ・アビドヴァCEOならびに石橋三枝COOを講師に招き、参加企業限定の勉強会を東京・大手町の経団連会館で開催した。両氏の講演概要は次のとおり。
■ ケーススタディ(1)ビジネス選定
欧州の産業は、日本と同じく自動車や製造業が多く、また共通した問題を抱えている。そのため、欧州のケーススタディを学ぶことは日本企業にとって有効である。
ドイツ・DHLでは、イノベーションに取り組む目的を明確化し、社会・経済や技術のトレンドとインパクトの大きさを把握するための「トレンドレーダー」を開発した。
トレンドレーダーによって、イノベーション戦略の根拠が明確になる。顧客との打ち合わせ、新規事業の対象領域の選定など、あらゆる局面での指標とすることで、建設的な議論が可能となり、研究開発の優先度がぶれなくなった。
DHLのほかにも、トレンドレーダーと類似の取り組みを行う企業は多数存在する。トレンドレーダーに含める情報やその集め方、用途は企業によって異なる。既存の取り組みを参考にしつつ、自社ならではの指標を設定することで、ビジネス選定に役立てることができる。
■ ケーススタディ(2)社内外の巻き込み
ドイツ・ボッシュ(BOSCH)では、全社的かつ積極的にスタートアップや外部企業と連携するための仕組みである「ベンチャークライアントモデル」(VCM)を導入した。
VCMでは、事業部が抱える課題を改善するためにスタートアップのプロダクトやサービスを試す。1カ月以内に見積もりから導入まで進めるよう、既存プロセスを大きく短縮した簡易プロセスを設定し、事業部単位で導入を行う。検証結果に応じて全社的に導入する。
各事業部に専門ポストを設定し、プロセスの形骸化を防ぐ。選任者は業務時間の2~3割をVCM対応に充てる。VCMのための新規チーム組成が不要となり、コストをかけずに導入可能となる。
スタートアップとの連携を効果的に行うには、目的の明確化が不可欠である。目的に応じた仕組みを構築することで、社内・外部共に巻き込みを加速できる。
【産業技術本部】
スタートアップフレンドリースコアリングは、企業がスタートアップエコシステムの重要な一員としてスタートアップの成長に貢献しつつ、その活力を取り込んで共に成長していくことを目指し、2022年度から開始しました。
企業は、約35問のアンケートに回答することで、自社の取り組みのスタートアップフレンドリー度を数値化したレポートを受け取ることができます。個社の回答内容(回答した内容、結果の数値・ランク等)は完全非公開。ただし、参加企業名およびトップ10社は、経団連ウェブサイトで公開しています。
スコアリングに参加することで、自社の取り組みの分析・改善、社内における取り組みの可視化、プレスリリース等による対外PR、回答企業限定の勉強会への参加等が可能となります。
第3回スコアリングは25年1月に実施する予定です。積極的な参加をお願いします。