政府では「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、支援施策を多数展開している。とりわけディープテック分野は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)および「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」においても23年に続き重点的な支援対象とされ、さまざまな主体から多岐にわたる施策が展開されている。
そこで経団連は8月2日、スタートアップ委員会企画部会(齊藤昇部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。文部科学省と科学技術振興機構(JST)、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から、支援施策についてそれぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 文科省(池田一郎科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課長)、JST(笹月俊郎スタートアップ・技術移転推進部部長)
(1)アントレプレナーシップ教育
文科省ではアントレプレナーシップを、起業に限らず、自ら課題を見つけ解決策を探索し、新たな価値を生み出す精神と定義している。大学生向けの教育プログラム「START」、小中高生向けの「EDGE-PRIME Initiative」の展開に加え、全国向けのアントレプレナーシップの醸成促進の取り組みも実施している。
(2)大学発スタートアップ起業支援
約150大学等が参画する全国九つのプラットフォームを構築し、「大学発新産業創出基金事業」等により、ギャップファンドなどのスタートアップ創出支援や体制整備を実施している。またプラットフォーム間で、研究シーズや経営・起業支援人材等の情報共有や海外拠点の活用などを図る全国ネットワークを構築する予定である。さらに24年秋には、大学発シーズを活用して事業構想を描ける有望な人材の発掘を目指す「早暁」プログラムを開始する。
(3)官民ファンドによる成長・発展支援
大学等発スタートアップの成長等を促進するため、国立大学法人によるベンチャーキャピタル(VC)設立・ファンド創設を可能としている。また、JST自ら大学発スタートアップに出資する「出資型新事業創出支援プログラム」(SUCCESS)や、開発費の貸し付けにより実用化開発を支援する「A-STEP実装支援(返済型)」等により、スタートアップの成長を支援している。
■ 経産省(桑原智隆イノベーション・環境局イノベーション創出新事業推進課長、長谷川寛晃同課長補佐)、NEDO(羽田昇平スタートアップ支援部部長)
(1)これまでの振り返りと今後
経産省では、ストックオプション税制やエンジェル税制等の税制、J-StarXや研究開発支援等の予算、公共調達等の制度構築等を通じて政策を強化してきた。近年、スタートアップの数は着実に増加している。今後、エコシステムの裾野拡大とともに、経済を牽引するスタートアップの創出に向けて、ファイナンス環境の整備、グローバル化の推進、ディープテック領域の支援が重要となる。
(2)人材育成、カーブアウト推進
世界で活躍するスタートアップの創出には、技術シーズに合った事業戦略を立案できる人材育成が不可欠となる。このため、研究者等の起業家育成、経営人材とのマッチングを実施している。
また、24年6月に経団連で説明会を実施したとおり(7月18日号既報)、「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」を24年4月に策定する等、カーブアウトを推進している。今後開催予定の勉強会でも経団連と連携していきたい。
(3)ディープテック領域の支援
ディープテック・スタートアップに対し、技術や事業の早期確立に向けて試作品開発や量産化実証を支援している。このなかで、事業会社との連携計画がある場合には補助上限を高める等、スタートアップが事業会社と連携しながら事業を構築・拡大することを促す仕組みとしている。
【産業技術本部】