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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月28日 No.3543 提言「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」を公表 -2050年カーボンニュートラルに向けた経済社会の変革

記者会見する十倉会長

経団連(十倉雅和会長)は4月26日、2050年カーボンニュートラル(CN)に向けた提言「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」を公表した。昨年6月の十倉会長の就任直後から、経済社会の変革であるGX実現の課題や道筋について検討を重ねてきた。同日、記者会見した十倉会長は、気候変動問題への強い危機感を表明したうえで、国を挙げたGX推進の必要性を強調した。提言の概要は次のとおり。

わが国が国際的に公約する50年CNや30年度温室効果ガス46%削減というチャレンジングな目標を達成するためには、GXの実現が不可欠となる。GXは、投資主導で経済拡大を目指す成長戦略の柱であるとともに、社会変容であることから、個々の国民や企業は大きな変化にさらされる。そのため、GXに関する国民理解の醸成も必須となる。

しかし、わが国では、50年CN実現に向けた国家戦略がいまだ描かれていない。政府は、官民の投資を最大限引き出し、産業の国際競争力を維持・強化する観点から、国家のグランドデザインとなる「GX政策パッケージ」を早急に示すべきである。

同パッケージでは、まず、GXに向けた中長期の投資促進の観点から、50年までのロードマップの明示と、その司令塔となる「GX実現会議」(仮称)の設置を提言した。そのうえで、以下に示す八つの政策の実行を求めている(図表1参照)。

GX政策パッケージの全体像

(1)エネルギー供給構造の転換

CNを目指すなかにあっても、エネルギー政策の基本はS+3E(安全性+エネルギー安定供給、経済性、環境適合性)の確保である。特に現下の国際情勢を踏まえ、エネルギー安全保障の強化が急務である。こうした観点から、電源の脱炭素化、電力ネットワークの次世代化、水素・アンモニア等による熱・燃料の脱炭素化を進めていくべきである。

(2)原子力利用の積極的推進

電源の脱炭素化を進めていくにあたり、原子力の利用推進は特に重要となる。既設プラントの再稼働はもとより、50年を見据え、リプレースを含む新たなプラントの建設方針の明示、SMR(小型モジュール炉)・核融合等に関する研究開発を強力に推進すべきである(図表2参照)。

原子力発電の設備容量の見通し

(3)電化の推進・エネルギー需要側を中心とした革新的技術の開発

こうしたエネルギー供給構造の転換とあわせて、エネルギー需要側における対応として、省エネ・電化、イノベーション、ライフサイクル全体での削減も推進していく必要がある。

(4)グリーンディール

50年CNの実現には、わが国で累計400兆円程度の投資が必要となる。政府は、民間の継続的な投資を促すため、自ら中長期の財政支出にコミットすべきである。その際に必要な政府負担額は年間2兆円程度であり、財源については、CNに向けた技術の開発・社会実装に使途を限定した国債「GXボンド」の発行も検討すべきである。

(5)サステナブル・ファイナンス

CNに伴う莫大な資金需要に対し、約35兆ドルともいわれる世界のESG(環境・社会・ガバナンス)資金を国内に呼び込むべく、サステナブル・ファイナンスの推進も重要となる。政府は、情報開示や評価に関する基盤の整備を進め、わが国の市場機能を強化すべきである。

(6)産業構造の変化への対応

CNへの挑戦を経済成長につなげるためには、産業構造転換、すなわち新事業への転換や労働移動を円滑に進めるための支援策の展開も求められる。

(7)カーボンプライシング

野心的な政府目標を達成するためには、「経団連 カーボンニュートラル行動計画」や、政府が構想・提案する「GXリーグ」を着実に推進すべきである。あわせて、カーボンプライシング(炭素排出に価格を付け、排出主体の削減を促す政策手法)の一つであり、きめ細かな配慮が必要となる「キャップ&トレード型の排出量取引制度」についても、今から検討を開始する必要がある。

(8)攻めの経済外交戦略

わが国として、地球規模でのCNへ貢献すると同時に、海外の旺盛なグリーン需要を取り込み、成長につなげていく観点から、「アジア・ゼロエミッション共同体」の具体化、水素・アンモニア、レアアース等の確保のための資源外交、EUが導入予定の炭素国境調整措置への対応を進めていくべきである。

これら八つの政策によってGXを実現することで、50年のわが国の実質GDPを試算すると、1000兆円を超える。

経団連は、今後も科学的、論理的、定量的に情報発信や政策提言を行い、国民的な議論を喚起するとともに、自らもGXに果敢に挑戦していく。

【環境エネルギー本部】

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