経団連の女性の活躍推進委員会(吉田晴乃委員長、柄澤康喜委員長)は、女性の活躍推進によるこれまでの成果・ビジネスインパクトを整理し、女性の活躍を通じた経済成長に向けて求められる施策などについて検討を行うこととしている。
そこで、9月19日、都内で同委員会企画部会(中川順子部会長)を開催し、第1回有識者ヒアリングとして、カタリスト・ジャパン社バイスプレジデントの塚原月子氏から、「新たな成長の要~女性活躍の現状と展望」をテーマに説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 女性の活躍がもたらすもの
女性の活躍が経済成長につながることは、もはや常識となりつつある。近年、各国で人材不足が深刻化・常態化している。特にわが国は人材不足が最も進行している国の1つであり、女性の就業率を男性と同水準に引き上げることで、GDPへの波及効果が約9%に及ぶとされている。
企業にとって、女性の活躍を含めたダイバーシティの意義は、(1)チームとしてのパフォーマンスの向上(2)イノベーションの促進(3)市場の実態の反映と外部からのよりよい評判の構築(4)人材の最大限の活用(5)よりよい財務業績の実現――などにある。そして、さまざまな異なる特徴を有する人々が、組織への帰属意識と個性の発揮を両立できる環境、すなわちインクルージョンは、自分の担当する領域を超えて組織に貢献しようという感覚や、革新的な思考を従業員にもたらす。
■ 5つの障壁と解決策
わが国における女性の活躍には、(1)「よきリーダーは男性である」といまだに信じられている(2)飲み会をはじめとする社内ネットワークへのアクセスなど、ごく小さな機会損失の積み重ねが女性にとって決定的なギャップにつながる(3)男性はポテンシャルを評価されるが、女性は実証された成果のみによって判断される(4)男性による女性への「スポンサーシップ」が不十分(5)女性は枢要な役職へのアサインが少なく、リーダーになるうえで必須な経験を積むチャンスを与えられていない――といった5つの障壁がある。
こうした障壁を解消するためには、(1)上司がインクルージョンを生み出すべく「インクルーシブ・リーダー」として行動する(2)部下にかける言葉を相手によって慎重に選ぶ(3)ステレオタイプから脱する(4)取り組みの中心に男性を巻き込む(5)一人ひとりが主体性をもって行動を起こす――といった取り組みが求められる。
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その後の意見交換では、中間管理職の意識改革や、社内のスポンサーのあり方などについて、活発な意見交換が行われた。
【政治・社会本部】