ワシントンDCでは、経団連が事務所を置く前から、大使館はもとより日本企業の事務所、あるいはメディア各社が日米関係をめぐりさまざまな活動を展開してきた。また、郊外のベセスダにあるNIH(アメリカ国立衛生研究所)には医学界から多くの研究者が派遣されてきた。
2009年には、日本の主要大学が中心となって、経済界の支援のもと、日米研究インスティテュート(USJI)がワシントンDCに設立され、現在、同志社大学、慶應義塾大学、京都大学、九州大学、立命館大学、上智大学、東京大学、筑波大学、早稲田大学の9大学が参加し、「研究活動」「人材育成」「コミュニティー形成」に取り組んでいる。9月11日から19日にかけてはUSJIウイークということで、北朝鮮問題、トランプ政権の国連政策、日米のリーダーシップ比較などをテーマとしたイベントが実施されている。
北朝鮮問題については、15日にUSJIとウッドロー・ウイルソン・センターの共催でセミナーが開かれ、村田晃嗣同志社大学法学部教授が、究極的な対話のための制裁強化の重要性や防衛予算も含む日本の実情などについて説明し、アンドリュー・オロス・ワシントン・カレッジ教授が、トランプ政権の実情と北朝鮮対応で取り得る対策について説明した。会場からは、北京に、北朝鮮、米国、日本のトップが集まる可能性を問う発言も出たが、現実性は低いとの受け止めだった。
さらに19日には、USJIとカーネギー国際平和基金の共催で、かつて6カ国協議を担当した藪中三十二元外務事務次官、クリストファー・ヒル元国務次官補らが参加するセミナーも開催された。
当事務所でも、15日午後、日本政府や企業にアドバイスしてきたコンサルタントのポール・ゴールドスタイン氏を招き、トランプ政権の北朝鮮対応などについて説明を受けた。同氏からは、「変化の時代」において米国の地政学的戦略を理解し、北朝鮮もさることながら中国へのプレッシャーを強めることが重要との話があった。
北朝鮮問題について出口が見え難い状況であればこそ、議会、行政府、シンクタンク、メディア関係者はもとより、大学関係者や専門家からの意見も傾聴し、さまざまなケースをシミュレーションしておくことも重要になっている。
なお、12日に開催されたUSJIウイーク・レセプションでは、ジョージ・ワシントン大学エリオットスクール(国際関係大学院)学長のルーベン・ブリゲッティ元アフリカ連合代表部大使があいさつ、濱田宏一エール大学名誉教授(内閣官房参与)も参加した。濱田氏からは、ぜひエール大学に来て民間経済界の状況を話してほしいとのオファーもいただいた。ワシントンDCならびに全米各地で、大学での講演をはじめさまざまな機会に日本の実情を説明し、日本の理解者を増やしておくことが日米関係強化のベースにもなると考える。
そうした観点からも、当事務所は、各界のワシントン活動との連携も深め、その相乗効果を高めることにも貢献していきたい。
(米国事務所長 山越厚志)