経団連(榊原定征会長)は7月27日、都内で女性の活躍推進委員会(吉田晴乃委員長、柄澤康喜委員長)を開催し、ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井副会長から、ウーマノミクス(ウーマン+エコノミクス)の成果と今後の展望について講演を聞いた。
冒頭、5月31日付で委員長に就任した柄澤委員長が、「この数年で、わが国の経済界における女性の就業者数に加え、管理職比率や役員数も大幅に増大するなど、さまざまな成果が挙がってきている。わが国がデフレから確実に脱却しGDP600兆円経済を実現するうえで、女性活躍を通じた経済成長は不可欠であり、吉田委員長とともに全力で取り組んでいく」とあいさつした。
松井氏の講演の概要は次のとおり。
■ 国内の人材活用の重要性と女性就業の現状
人材・資本・生産性は国家が成長を遂げるうえで重要な3つの成長ドライバーである。わが国では特に人材に関して人口動態の大きな変化に伴い、労働市場における人手不足が深刻化している。
わが国が成長するうえでは人手不足の解消が不可欠であり、その手段としては、(1)出生率の引き上げ(2)外国人労働者の受け入れ拡大(3)労働力率の引き上げ――が考えられる。ただ、(1)や(2)は実現に時間を要する。そこで、(3)を実現する必要がある。
そのためには、すでに国内にいる人材をうまく活用することが重要であり、女性の就業率の向上は欠かせない。近年、わが国における女性の就業率は過去最高の67%まで急上昇し、2014年には米国を上回った。ただ、非正規雇用が大半を占める実態を踏まえれば、まだ十分とはいえない。
■ ウーマノミクスに関する誤解
ウーマノミクスには3つの“誤解”が存在する。
第1に、女性が仕事を辞める理由として、一般的には結婚・出産などのやむを得ない事情(「プル」要因)ばかりがいわれるが、実際には、日本人は仕事への不満や行き詰まり感などの問題(「プッシュ」要因)で仕事を辞めるケースが多い。このことから、企業にはさまざまな観点からの職場環境の整備が求められる。
第2に、ダイバーシティは企業のパフォーマンスと無関係であるといまだにいわれている。実際には、女性活躍が進んでいる企業ほど、株価やROEなどのパフォーマンスが高い傾向にある。また、近年、ESG(Environment、 Social and Governance)投資に注目が集まっていることも無視できない。
第3に、女性の就業率が向上すれば出生率が下がるといわれている。だが、諸外国のみならず日本国内47都道府県の現状をみると、女性就業率と出生率の間には正の相関があることがわかる。
われわれはこうした通説における誤解を解き、何が事実なのかを確認したうえで、女性活躍の議論を進めなくてはならない。そして政府・企業・社会が三位一体となって、ウーマノミクスのさらなる推進に向けアプローチしていくべきである。
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その後の意見交換では、ダイバーシティ推進の観点から社内のマネージャーを評価する手法や、企業のダイバーシティに関する情報開示の重要性などについて、活発な議論が行われた。
【政治・社会本部】