政府は昨年9月に「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置し、12月にこれまでの検討課題について中間取りまとめを行った(図表参照)。これを受けて経団連(榊原定征会長)17日、「電力システム改革に関する意見」を取りまとめ公表した。
■ 総論
中間取りまとめは、複数の政策課題について今後の方向性を示したものとして一定の評価ができる。一方、電気料金の上昇や電力供給の不安定化を招かないよう、今後の制度設計は慎重に進める必要がある。
■ ベースロード電源市場の創設
政府は、新電力が安価なベースロード電源にアクセスできれば競争が活性化するとの考えのもと、大手電力が発電した電気の一部を新市場に供出させることを検討している。
電気料金の引き上げ等につながらないよう、大手電力の供出量や価格、小売事業者の調達量等に一定のルールが必要である。
■ 容量メカニズムの整備
政府は、総括原価方式の撤廃後も安定供給を維持するため、発電所等の発電能力に応じて支払いを行う仕組みの導入を検討している。
需要家の負担が過大とならないよう、慎重に制度設計する必要がある。
■ 非化石価値取引市場の創設
政府は、エネルギー供給構造高度化法の非化石電源比率目標を達成するとともにFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による負担を軽減するため、再生可能エネルギーや原子力が発電した電気の非化石価値を証書化して取引する市場の創設を目指している。
FIT国民負担の軽減には賛同できる一方、非化石電源比率目標との関係では懸念がある。制度創設を急ぐことには反対する。
■ 原子力事故にかかる賠償への備え
政府は、本来福島第一原子力発電所事故以前に積み立てておくべきであった賠償の準備金を全需要家が負担する託送料金(送電線利用料)で回収する方針を打ち出している。
この方針には一定の合理性があるが、負担金額を需要家に明示すべきである。
■ 廃炉に向けた費用負担のあり方
- (1)福島第一原子力発電所
中間取りまとめでは、東京電力自らの負担を基本としたうえで、政府は資金の外部積立や送配電部門の利益の廃炉費用充当のための制度整備を行うとしている。
こうした方針には賛同するが、託送料金の値下げ機会確保が課題である。 - (2)福島第一原子力発電所以外
政府は、震災後の制度変更に伴う廃炉の会計負担を平準化する「廃炉会計制度」を継続するため、託送料金の仕組みを利用するとしている。
やむを得ない措置だが、費用の妥当性や負担金額を明示すべきである。
■ 送配電網の整備・運用負担
政府は、電力システム改革の進展を見据えた検討を進めている。
国民負担の抑制と全国大メリットオーダーの両立に向けて、議論が深められることを期待したい。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【環境エネルギー本部】