政府の「働き方改革実現会議」のテーマの1つに掲げられるなど、「病気治療と仕事の両立」が事業者にとって大きな課題となっている。そこで経団連は12月14日、東京・大手町の経団連会館で「治療と仕事の両立支援セミナー」を開催した。
まず、働き方改革実現会議の議員である女優の生稲晃子氏が患者・労働者の立場から、次に、国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援部長である高橋都氏が主治医の立場から基調講演を行った。その後、東京海上日動メディカルサービス健康プロモーション事業部部長の砂原和仁氏をファシリテーターに、主治医の立場での高橋氏をはじめ、産業医の立場として三菱電機人事部全社統括産業医の井上義崇氏、事業者の立場として日産自動車人事本部安全健康管理室の栗林正巳氏が登壇し、パネルディスカッションが行われた。概要は次のとおり。
■ 患者の立場から
生稲氏は6年前に乳がんに罹患し、現在も仕事を続けながら治療を継続している。告知を受けた当時は、病気であることを公表することに逡巡するなど、両立の難しさを実感したと当時の状況を説明した。そのうえで、仕事があることが自らの治療を続けていくうえで大きな助けとなった経験から、周囲の支援を得ながら仕事を続けることができる環境が大切であると述べた。
■ 主治医の立場から
高橋氏からは、「主治医は、労働者(患者)の職場環境に留意しつつ、『仕事を続けていくためにはどのような支援があるか』を伝えることが重要だ」との指摘があった。また、「労働者(患者)は、病気と診断されてもすぐには仕事を辞めず、会社の制度や自分の病状等について、しっかりと把握することが大切だ」と述べた。さらに、患者本人と職場関係者の双方が納得できる対応策を、十分に話し合いながら生み出す必要があると強調した。
■ パネルディスカッション(主治医、産業医、事業者)
引き続き、患者を取り巻くトライアングルの関係にある主治医、産業医、事業者の三者で、(1)関係者間の連携(2)労働者本人に求められること(3)事業場で「できること」「できないこと」――などの論点から意見交換が行われた。
産業医の井上氏は、「疾病の内容を問うのではなく、本人にとってどのような支援が必要なのかを判断しなければならない。また、医療にも事業者にもできることには限界があるので、関係者がうまく連携を図りながら、落とし所をみつけていくことが必要だ」と述べた。また、栗林氏からは、「事業者は就業規則の範囲内で、周囲との公平性を保ちながら両立支援に取り組まなければならない。支援を望む労働者は、支援を求めるにあたって仕事への熱意をアピールしてほしい」と期待を込めた発言があった。最後に砂原氏が、「三者が半歩ずつ歩み寄って好事例をつくり、共有していく必要がある」と締めくくった。
【労働法制本部】