出雲 充(経団連審議員会副議長、スタートアップ委員長・スタートアップ政策タスクフォース座長/ユーグレナ社長)
アントレプレナーシップとデジタル化の遅れが、日本の国際競争力の低下を招いている。日本企業は、コロナ禍を最後のチャンスととらえ、スタートアップを活用し、DXの推進に本気で取り組まなければならない。日本のスタートアップからユニコーンを誕生させるには、有望なスタートアップの選択に時間とコストをかけるのではなく、できるだけ多くのスタートアップとコラボレーションすることで「量」を確保していくことが重要である。大学発ベンチャーの創出に最も成功している東京大学のやり方を全国に展開することも喫緊の課題である。
平野 未来(シナモン社長CEO)
経団連の「AI-Ready化ガイドライン」でみると、ほとんどの日本企業がレベル1~2にとどまっているのが現状である。これをレベル5まで押し上げるのが、当社の仕事である。まず企業は、AIの活用を「コスト削減」ではなく、「競争戦略」としてとらえ直す必要がある。スタートアップにはゼロから1を生み出す力があり、起業家個人のストーリーが事業の原点となっているケースが多い。大手企業が起業家を招いてそのストーリーを聴き、社員と交流させることは、新規事業の創出やスタートアップとのコラボレーションの第一歩となる。
米良 はるか(READYFOR代表取締役CEO)
コロナ禍で資金調達に苦労する企業が増えるなかで、クラウドファンディングのマーケットは成長しており、日本社会に浸透して、ある種の文化となりつつある。当社も流通額を大きく伸ばしているが、なかでも大学や医療機関など、公共領域に対する支援に力を入れている。コロナ禍は、多くの人がサステナビリティについて本気で考えるきっかけとなってほしい。経団連がSDGsをけん引してきたことで、世界一といっていいほど日本企業にはSDGsが浸透している。サステナビリティの観点から、社会課題を解決する技術やアイデアを持ったスタートアップと大手企業とのコラボレーションが進むことを期待している。
ヴィンセント・フィリップ(Plug and Play Japan社長)
Plug and Playがグローバルに行った調査によると、スタートアップの資金調達に対するコロナ禍の悪影響はそれほどないと分析している。むしろコロナ禍によって、マーケットや大手企業が自らの課題に気付き、ニーズが明確化されてきたことは、スタートアップにとってチャンスである。当社では、コロナに対するソリューションを提供できる国内外のスタートアップ100社をピックアップした「eBook」を作成した。この危機が、日本社会のさまざまな「非効率」を「効率」に変えていく契機となることを期待している。
齊藤 昇(司会:経団連スタートアップ委員会企画部会長/日本ユニシス専務執行役員)
DXの推進と、大企業とスタートアップの連携は密接な関係にある。大手企業は、短期の成果を求める側面があり新規事業は育ちにくいが、50を100にすることができる。一方、スタートアップは、ゼロから1を生み出すのが得意である。相互の強みを活かした協力関係の育成が重要である。DX推進が、大手企業の生産性向上や競争力強化につながり、そのためのスタートアップ活用が、スタートアップ強化にもつながるという相乗効果が期待される。
- ■ スタートアップの力で日本を変える
- 大学発ベンチャーが起業の原点
- アクセラレーションプログラムを経てユニコーン企業へ
- ■ 危機感の共有が課題解決につながる
- スタートアップとDXへの対応の遅れが日本の競争力低下の要因
- 「本気でコラボしたい」という思いを伝えてほしい
- ユニコーンを生み出すには「質」より「量」が大事
- ■ イノベーションをもたらす人材育成に向けて
- 大学発ベンチャーを輩出し続ける東京大学
- 企業は大学の研究を長期的に支援してほしい
- ■ さらなる飛躍のために
- 海外との連携を進めたい
- 大手企業の「思い」をスタートアップが代弁する