1. トップ
  2. 会長コメント/スピーチ
  3. 記者会見における会長発言
  4. 定例記者会見における十倉会長発言要旨

会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年10月22
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

〔連合が「2025春季生活闘争方針基本構想」において、全体で5%以上、中小企業は6%以上の賃金引上げ目標を掲げたことについて問われ、〕今年の賃金引上げの結果を踏まえ、連合が来年の春季労使交渉において今年と同様の5%以上の賃金引上げ目標を掲げたこと、また、中小企業の賃金引上げが課題との共通認識に立てば、中小企業について6%以上というチャレンジングな目標を設定したことは、運動論として理解できる。

2023年は賃金引上げの力強いモメンタム「起点」の年となり、2024年はそれが大きく「加速」した年となった。2025年はこの流れを「定着」させ、2%程度の適度な物価上昇のもと、賃金と物価の好循環を実現したい。

そのためには、パートナーシップ構築宣言における参画企業の拡大と実効性の向上が非常に大事である。加えて、大企業と中小企業に限らず、中小企業と中小企業、あるいは中小企業と消費者との取引も含めて、労務費を含む適切な価格転嫁が重要という認識をソーシャルノルム(社会的規範)として普及させていく必要がある。加えて、有期雇用等労働者の正社員登用の推進や、同一労働同一賃金法制に基づく対応の徹底も重要である。

【最低賃金】

〔最低賃金の引上げについての経団連の考え方を問われ、〕まず、春季労使交渉で対象としている月例賃金の引上げと最低賃金の引上げの違いを認識しておく必要がある。前者は運動論であり、労使で丁寧に議論をし、引上げに向けたソーシャルノルム(社会的規範)をつくり上げるべく取り組んでいる。他方、後者は最低賃金法を根拠として全ての企業に適用され、違反した場合は罰則が科される厳しいもので、達成不可能な目標を掲げることは混乱を招くことになる。

岸田政権下で取りまとめた骨太の方針2024では、2030年代半ばまでに全国加重平均1,500円の目標をより早く達成することを目標に掲げ、そのために必要な環境整備に官民で取り組んでいくことが共通認識であった。2030年代半ばの達成に毎年4%程度引き上げていかなければならない中で、2020年代だと毎年7.3%、3年間での達成であれば毎年12%程度の引上げが必要になる。

チャレンジングな目標を掲げ、できるだけ上げていこうという取り組みは大事である。環境整備が進められ、その結果、目標達成時期が前倒しになればいいと思う。

【衆議院議員総選挙】

〔選挙期間中に、石破首相が2024年度の補正予算を前年度の13兆円を超える規模にする考えを表明したことについて問われ、〕わが国のマクロ経済環境を見るに、2024年4~6月期の名目GDPが年率換算で600兆円を超え、また需給ギャップもほぼ解消されるなど、上向きの状況である。2%程度の適度な物価上昇の実現も近づいており、まさにデフレからの完全脱却が目前に迫っているといえよう。こうした中、補正予算を組むに当たっては、総理も言われているように、きちんとした積み上げのもと、生活に困っている方がおられるという事実を踏まえた、真に困っている方々への給付といった物価高対策や、生産性の向上や供給力の強化に資する施策、災害からの復旧・復興などに重点を絞って実施していただきたい。

〔衆院選で自民党と立憲民主党を除く各党が消費税の減税を公約に掲げていることについて問われ、〕わが国の債務残高対GDP比は250%を超えており、世界的に見ても極めて厳しい財政状況である。「経済あっての財政」が基本的な考え方であるものの、中長期的には財政健全化も必要である。次なる感染症の拡大や激甚災害といった有事への備えとしての財政余力の確保や、社会保障制度における現役世代の負担軽減も求められる。そうした中で、暮らしをよくするために消費税率を下げるべきという主張はやや安直ではないか。社会保障の給付と負担をどうバランスさせるのか、日本の財政基盤をいかに維持していくかということも含めてしっかりと総合的な議論をしてほしい。

【原子力政策】

〔「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言」(10月15日公表)において、一部の経団連会員企業に対して実施したアンケート結果をもって「約9割の企業が既設の原子力発電所の再稼働の必要性を認識し」ていると記載していることの信憑性について問われ、〕当該アンケートは、経団連会員企業の中でエネルギー政策に関心の高い企業を対象に実施し、回答率は約35%であった。当該記述は、経団連アンケートへの回答企業のうち約9割が既設の原子力発電所の再稼働の必要性を認識、という趣旨であり、経団連会員企業全体の9割が望んでいるとは記載していない。アンケートの調査対象や回答数もきちんと記載し公表しており、決して印象操作を図った記載ぶりはしてない。むしろそうした受け止めがなされないよう、情報発信に気を配って淡々と記載している。

〔原子力発電所の再稼働の必要性について問われ、〕原子力規制委員会の安全審査に合格し、地元の理解を得られたものについて再稼働を進めていくべきである。

今後、AIの活用やデータセンター増設により、電力需要量の大幅な増加が見込まれる中、ベースロード電源であり、クリーンなエネルギーの安定供給にも資する原子力発電の活用は必要であり、今後は再稼働に加え、高レベル放射性廃棄物の削減等にも資する次世代革新炉の開発・実装が望まれる。加えて、最終的には、より安全で、高レベル放射性廃棄物の生じない核融合炉の開発・実装を目指すべきである。

【東京証券取引所の取引時間延長】

〔11月5日から東証の取引時間が30分間延長されることに伴う市場と企業の対話のあり方について問われ、〕これまで場が閉まってから適時開示を行う企業が多く、それが30分後ろ倒しになるのではという印象を持っている。一般論として、国内外の投資家が適切な適時開示情報に基づいて株式を売買できることが確保されれば望ましい。

【為替】

〔ドル円相場が円安に振れていることについて問われ、〕投機マネーの流入によって、要人の発言一つで大きく振れやすくなっているが、大事なことは大きなトレンドを認識しておくことである。日米の経済環境や、中央銀行の金融政策の動きを注視したい。

以上

「会長コメント/スピーチ」はこちら