会長の榊原でございます。
安倍 内閣総理大臣、麻生 副総理・財務大臣、甘利 内閣府特命担当大臣、塩崎 厚生労働大臣ならびに会員の皆様におかれましては、ご多忙の中、定時総会にご出席頂きまして、誠に有難うございます。また平素より、経団連の活動に対しまして、一方ならぬご支援とご協力を頂き、厚く御礼申し上げます。
定時総会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
まず日本経済でございますが、「アベノミクス」の一連の経済政策によって、緩やかながら着実な回復軌道を辿っています。この1-3月期の実質GDP成長率は、年率換算2.4%と2四半期連続でプラス成長となりました。長かったデフレからの脱却も、ようやく手が届く所にまで近づいて参りました。ただ、個人消費や設備投資は、未だ力強さを欠いた状態が続いております。
今は正に、デフレ脱却と経済再生を確実に実現するための正念場の時であり、政・官・民があらゆる政策や手立てを総動員すべき極めて重要な時期であると言えます。
そういった中で、経団連はこの1年間、Policy & Action をスローガンに掲げ、日本の国益や将来を見据えて積極的な提言活動を行うと共に、「行動する経団連」として、その実現に向けて関係各方面に対して果敢に行動・働きかけを行って参りました。
政治との関係も、政治と経済が「車の両輪」のように、同じ目標の方向に向かってそれぞれが役割を果たしながら一緒に前進していく、そのような関係を築くべく努力をして参りました。この1年間、そういった意味での政権との協力関係、信頼関係を築き上げることができたと考えております。
その一環として、会員の皆様に、政治寄附の重要性を改めて訴えると共に、自主的な判断に基づく実施を呼びかけました。
この1年間の経団連の活動成果のうち、特に重要な項目を2、3ご紹介します。
まず、法人税改革ですが、2015年度税制改正において、総理のご英断により法人実効税率は2年間で3.29%引下げられ、31.33%に低下することになりました。長年、頑として動かなかった大きな山が動いた思いが致します。今後は更に、早期に20%台への引下げを目指して取組みを進めて参ります。
次に、経済外交ですが、この1年、アジア諸国との経済交流に力を入れ、中国、韓国、インドネシア、フィリピンを訪問しました。その中で、中国では汪洋副総理、韓国では朴槿恵大統領と会談し、日本との経済関係の拡大・強化ならびに政治外交関係の改善を要請しました。また、安倍総理の経済外交戦略に呼応し、中南米5カ国、豪州・ニュージーランドに経団連の経済ミッションが同行致しました。さらに、先月ドイツで開催されたB7サミットに出席し、G7の経済団体トップと積極的な経済外交を展開しました。
一方、女性活躍推進については、経団連の最重要課題のひとつと位置づけ、様々な取組みを推進しました。経団連の呼びかけに応じて、440社の会員企業が意欲的な女性登用計画を策定し、公表しました。
こういった活動と並行して経団連は、昨年1年かけて、日本が目指すべき将来の国家像を描いた経団連ビジョンを策定しました。表題を「豊かで活力ある日本の再生」とし、2030年までに目指すべき国家像を掲げ、その目指すべき国家像を実現するための政府の課題、国民の課題、そして経済界の課題をできるだけ具体的な数値目標と合わせて提言としてとりまとめました。
今年度は、このビジョンで描いた経済・社会の実現に向けた着実な一歩を踏み出す年と位置づけ、デフレからの脱却、経済再生へのしっかりとした道筋をつけると共に、山積する重要政策課題の実現に向けての取組みを強化して参りたいと考えております。
ここで、今年度、特に優先的に取組む課題をいくつか申し上げます。
まず、第一は、財政健全化です。諸外国に比して最も深刻な状況にある国家財政を健全化し、経済の持続的発展を支える強固な基盤を築く必要があります。2020年度のプライマリーバランス黒字化実現に向けて、経済再生、歳出改革、歳入改革の3本柱を一体として推進するよう、経済界の立場から強力に働きかけて参ります。特に、社会保障制度の持続性確保という観点から、社会保障関連の思い切った歳出抑制を実現したいと思っております。
第二は、エネルギー政策です。エネルギーの安定供給と経済性の確保は喫緊の課題であり、安全が確認された原発の再稼働プロセスの加速、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の抜本的見直しが不可欠です。とりわけ原子力は、エネルギー安全保障、経済性、温暖化対策等の観点から、今後ともわが国の重要なベースロード電源としての位置付けを守るべきであり、将来的には総発電電力量の25%前後を目指す必要があることを発信し続けて参りたいと考えております。
第三は、地方創生です。安倍総理が常々言っておられる通り、地域経済の活性化なくして、日本経済の再生はありません。経団連と致しましても、この1年間の成果を踏まえて、地方経済団体やJAとの連携を一層強化する所存であり、地方の現場、あるいは農業に従事しておられる方々の具体的な課題をしっかりと受止め、政策提言に活かして参ります。
第四は、人口問題です。50年後も人口1億人の安定した人口構造を維持するため、経団連では、人口問題委員会を新たに設置し、検討を進めて参ります。また、女性の活躍推進にも、引き続き積極的に取組んで参ります。本日、審議員会副議長にBTジャパンの吉田晴乃社長に就任頂きます。経団連初の女性のトップメンバーとして、大いに活躍頂きたいと期待しております。
第五は、経済外交です。今年も積極的に経済外交を進めて参ります。早速今月末から、米国に大規模でハイレベルな経済ミッションを派遣します。わが国にとって最も重要なパートナーであり、不動の同盟国である米国との関係をさらに強固なものとするため、ワシントンDCおよび日本と関係の深い10州を訪問致します。現地では、私が全米商工会議所で講演し、日本経済の現状や日米関係の今後のあり方等について経団連の考え方を直接発信すると共に、各州の知事や有力政治家など、様々な方々と交流し、相互理解、相互信頼を一層深めると共に、日米間の経済協力の更なる拡大に繋げて参りたいと考えております。
また、震災復興につきましても、決してこれを風化させることなく、産業界として、引き続き全力を挙げて支援・協力して参ります。今年は特に、産業復興や新産業の創生の支援に注力して参りたいと考えております。さらに、5年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックにつきましても、「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」を通じて、大会の成功とレガシーの形成に向けて、積極的に取組んで参りたいと考えております。
こうした課題への取組みを強力に推進するためには、経団連自身の改革が不可欠であると考えております。その一環として、まず経団連の活動を機動的かつ効果的に展開するため、1996年以来19年ぶりになりますが、経団連の委員会を抜本的に再編致します。
また、米国や欧州における事務所の再開をはじめ、海外拠点の強化を通じて、対外経済交流を活発化して参ります。
会員の皆様におかれましては、引き続き力強いご支援・ご協力を頂きますよう重ねてお願い申し上げ、私の挨拶とさせて頂きます。
ご清聴、誠に有難うございました。