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会長コメント/スピーチ  会長スピーチ 日本経団連総会における米倉会長開会挨拶 - 日本経済団体連合会定時総会 -

日時 2011年5月26日(木) 午後2時~
場所 経団連会館 2階 国際会議場

  1. 1.米倉でございます。会員の皆様方におかれましては、ご多忙の中、日本経済団体連合会の「第12回定時総会」にご出席をいただきまして、誠に有難うございます。また、平素より、当会の活動に対しまして、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜り、厚く御礼を申しあげます。
    昨年の定時総会におきまして経団連会長にご選任いただきましてから、はや一年が過ぎました。この間、実に多くのできごとがございましたが、わが国の経済は緩やかながらも着実に回復を続け、今後さらに回復のペースが速まっていくとの期待のもとで、新年度が始まろうとしておりました。その矢先に、3月11日、東日本大震災が発生いたしました。この震災は、岩手、宮城、福島をはじめとする極めて広い地域に筆舌に尽くしがたい被害を与え、まさに国難とも言うべき事態をもたらしました。この場をお借りいたしまして、震災の犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、今日もなお、大変困難な状況におられる被災者の皆様に、心よりお見舞いを申しあげます。
    今こそ、私たち国民が力を合わせてこの危機を乗り越え、復興への道を力強く前進していかなければなりません。経団連といたしましても、経済界の総力を結集して早期復興に取組み、安心・安全で強靭な「新たな日本」を創り上げることを目指して参りたいと存じます。

  2. 2.経団連では、震災発生直後に、私を本部長とする「東日本大震災対策本部」を立ち上げました。会員企業の皆様のご協力を得まして、義援金の呼び掛けや、救援物資の輸送など、被災者・被災地支援の取り組みを進めて参りました。
    併せて、3月24日には、「震災復興特別委員会」を新設し、その後ただちに「震災復興に向けた緊急提言」を政府・与野党に建議いたしました。
    さらに、この夏に向けて電力供給不足が懸念される中、「電力対策自主行動計画」を策定することとし、早速、会員企業・団体に呼びかけを行ないました。その結果、既に600以上の企業・団体の皆様から、自家発電の活用拡大や節電、電力需要の平準化のための諸対策からなる行動計画をご提案いただいております。
    また、政府に対しましては、縦割り行政を排し、震災復興に係る一切の権限・予算を集約した司令塔としての「震災復興総本部」や、震災復興に関する施策の実施機関としての「震災復興庁」の設置、さらには復興施策を総合的かつ計画的に推進するための実行プランの策定、整備するための「震災復興基本法」の早期制定を既に提案いたしております。今後も引き続き、「震災復興特別委員会」のもと、関係の政策委員会と連携しながら、スピード感をもって復興のための具体策を打ち出し、実行して参りたいと考えております。

  3. 3.安心・安全で強靭な「新たな日本」を創っていくには、復興のための取組みを迅速に実行すると同時に、国を挙げて成長戦略を着実に実施していくことが必要不可欠であります。私は、経団連会長に就任後、企業が活力を取り戻し経済が成長してはじめて、雇用の創出、持続可能な社会保障制度の確立、財政の健全化といった重要課題への対応が可能になるとの考えに立って、成長戦略の策定とその早期実現を政府に強く求めました。これを受けて、政府の「新成長戦略」が策定され、「新成長戦略実現会議」などにおきまして具体化に向けた議論が重ねられて参りました。
    そして、経団連では、民主導の国際競争力強化のためのアクションプランとして「サンライズ・レポート」を取りまとめ、昨年12月に公表いたしました。その中の中心的な取組みである「未来都市モデルプロジェクト」では、国内12の都市や地域におきまして、企業の最先端技術を持ち寄って実証実験を行い、革新的な製品や技術、システムを開発することで、安心で安全な都市づくりに取り組むことを提案いたしました。すでに参加企業や実施する都市も決まり、プロジェクトは動き出しております。今後は、震災復興地域も視野に入れた形で、この「未来都市モデルプロジェクト」を推進して参りたいと考えております。

  4. 4.また、将来への確かな展望を国民に示すとともに、日本の財政に対する国際的な信認を取り戻すために、社会保障と税・財政の一体改革の実現は急務であります。経団連といたしましては、震災復興の財源確保を含め、中長期的な財政健全化の現実的な道筋を明らかにしつつ、子供から高齢者まで国民全員が安心して暮せる社会を実現するために、社会保障の機能強化や効率化・合理化に早急に取り組むよう、引き続き精力的に政府に求めてまいりたいと存じます。

  5. 5.今回の震災をうけて、わが国のエネルギー・環境政策は再構築を迫られております。特に、原子力発電所の事故に関する迅速かつ正確な情報提供と徹底した原因究明、そして抜本的な再発防止策の策定と実行によって、早急に国民の信頼を回復することが重要であります。
    また、経済との調和の取れた低炭素社会の形成を目指す視点から、2020年度の温室効果ガス排出量25%削減目標および再生可能なエネルギーの全量買取制度、地球温暖化対策税の導入につきまして見直しを求めて参りたいと存じます。
    加えて、さきほど申し上げました「電力対策自主行動計画」の策定と実施とを併せて、新しい環境・エネルギー技術の開発・普及にも、今後一層、力を入れて参りたいと考えております。

  6. 6.さらに、経団連では、国を開き、EPA、FTAを通じた経済統合を推進していくことを引き続き強く政府に求めてまいります。
    わが国が、「平成の開国」を実現して高いレベルの経済連携を推進し、世界の成長センターとなっているアジア太平洋地域とともに力強く成長していくために、TPPへの参加は必要不可欠であります。わが国は震災からの早期復興に最優先で取り組んでいかなければなりませんが、TPPの交渉は、各国の個別事情にかかわらず、11月のハワイのAPEC首脳会議までに合意を目指すというスケジュールに沿って進められておりますので、日本といたしましては、従来の方針通り、早期に交渉参加を決定すべきであると考えております。また、TPPへの参加にあたりましては、経済連携の推進と国内農業の振興との両立を図ることが非常に重要であり、今回の震災による被害にひるむことなく、強い日本の農業を育てていくための抜本的な構造改革に真正面から取り組んでいかなければなりません。
    欧州との経済関係につきましても、経団連では、包括的な強化・統合に向けた 日本・EU経済統合協定の早期交渉開始を求めて参りましたが、今週末の28日に予定されております日・EU首脳協議で、日・EU経済連携協定の事前協議開始が合意される見通しとなりましたことは、大変大きな前進であると存じます。

  7. 7.今回の震災後、日々懸命に復旧・復興に取り組む日本人の姿がメディアを通じて広く世界に伝えられ、日本人の倫理観や辛抱強さが国際社会で称賛されております。 先月、中国の上海交通大学におきまして、法務分野での人材育成を目的といたしました「日本経団連 企業法務高級講座」が開講されましたが、この上海交通大学の張 杰(けつ)学長から、卒業式の場で、これから社会に出られる学生の皆さんに、日本の福島第1原子力発電所の最前線で闘っておられる現場の方々の強い責任感に思いをはせて欲しい、という言葉を贈った、とのお話を伺いました。
    同時に、私たちは、先進国、途上国の別を問わず、世界中から温かい支援の手が日本に対して差しのべられていることも忘れてはなりません。
    震災復興は言うに及ばず、日本の復活・再生、そして力強い持続的な成長を実現するためにも、国際社会の理解と協力は必要不可欠であります。今こそ、長年、地道に行なってきたわが国の様々な国際貢献活動の意義を再認識しなければなりません。特に、ODAや、来年4月に「新JBIC」として強化・拡充される国際協力銀行によるインフラその他の分野における戦略的海外投融資などを活用しての国際貢献活動は、ぜひとも維持・継続されるべきであります。今後の復興への道のりにおいても、諸外国との経済活動や交流を積極的に進め、グローバル社会における日本の役割を引き続きしっかりと果たしていくことが非常に重要であると私は考えております。経団連といたしましても海外ミッションをはじめとする様々な活動を通じて民間外交を一層強化し、官民連携による機動的な国際協力を推進してまいりたいと存じます。

  8. 8.今、この国に求められておりますのは、再生を信ずる強い気持ちと「実行力」であります。私たち国民が文字通り一丸となり、国を挙げて復興に取り組むことによって、日本は必ずやこの難局を乗り越え、再び力強く復活できると私は確信しております。経団連といたしましては、経済界の総力をあげて、早期復興と、山積するわが国の諸課題の解決に向けた取り組みを迅速かつ着実に実行し、安心・安全で強靭な「新たな日本」を創って参りたいと存じます。
    会員の皆様におかれましては、経団連活動に対し、引き続き、力強いご支援・ご協力を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
    それではこれをもちまして、私からのご挨拶とさせていただきます。ご清聴、有難うございました。

以上

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