キヤノンは、イノベーションの創出や労働生産性の向上など重要課題への対応としてダイバーシティの推進に関する取組みを続けている。2012年より全社横断プロジェクト「VIVID※」を発足させ、テーマの1つである「男性育児参画」を促してきた。男性の育児休業取得率は2011年の1.9%から2022年には47.7%まで上昇し、平均取得日数は62日となっている。
※ Vital workforce and Value Innovation through Diversity の略称
<主な取組み>
○男性の育児休業取得促進
同社は、男性が育児休業を取得しやすくなるよう風土醸成に繋がる取組みを優先的に進めている。プロジェクトの活動として、育児休業取得者や当人の所属組織へのインタビューにより事例を広く収集し、社内イントラを通じて定期的に紹介している。また、育児休業を取得した社員との座談会により、取得意向のある社員が育児休業のイメージを具体化するための機会を設けている。
2022年には、「人材を活かすマネジメント」をテーマに、全ライン管理職を対象とする集合研修を100回以上開催した。同研修では、男性の育児休業について触れ、取得状況や取得を希望する社員への対応について理解を深めてもらった。その他、社内制度等をまとめたガイドブックの展開により支援制度の理解を促している。
製造現場をもつ同社にとって、早期に育児休業の取得意向を確認することは、生産計画を実行するための要員調整を行う上で非常に重要となる。そのため、同社では、年3回の個人面談を活用し、早めの意向確認に努めている。あわせて、育児休業の取得が特別ではないことを伝えるなど、積極的に取得を促すことで取得率向上につなげている。
○働き方改革
同社は、仕事と育児との両立を含め、ワーク・ライフ・バランスの充実を図るべく、総実労働時間の削減に取り組んでおり、2022年の実績は1740時間となっている。高い労働生産性を実現するため、各部門で業務のデジタル化を進めるだけでなく、社内における働き方改革の好事例を展開している。これまで休暇を取得しやすい風土づくりを続けてきたことが、結果として育児休業を取得しやすい風土の土台となっていることは大きいと考えている。
<今後の展望>
2025年に男性の育児休業取得率を50%とする目標の早期達成に向けて取組みを継続する。社員のエンゲージメントを高める観点からは、仕事と育児との両立支援策のさらなる充実を図る。とりわけ、男性による育児の質向上のため、子育てが始まる前に行っておくべきことなどの情報提供の強化を進めていくこととしている。