一般社団法人 日本経済団体連合会
情報通信は水やエネルギーと同様、われわれが日常生活を営む上で不可欠な社会インフラの一つであり、あらゆる産業や社会基盤に組み込まれている。情報通信政策の在り方は、通信事業者のみならず広範なステークホルダーに影響を及ぼし得ることに留意する必要がある。経団連が予て提唱してきたSociety 5.0 for SDGsを実現するためにも、利用者視点に立った高品質、堅牢かつ信頼性の高い情報通信基盤の整備・維持が必須であることは論を俟たない。同時に、わが国の経済安全保障を確保する観点からは、情報通信基盤のレジリエンス向上による戦略的自律性と、情報通信産業の価値創造力の強化による戦略的不可欠性の確保が重要である。
こうした観点から、今後の情報通信政策について経済界が重視する点を以下の通り提示する。
1. 公正な競争環境確保
情報通信分野における競争促進の結果、新規企業の市場参入等を受け、通信料金の低廉化、サービス品質の向上による国民負担の軽減、利便性の向上が実現したことに鑑み、今後も公正な競争環境の確保が不可欠である。この観点から、日本電信電話株式会社(以下、NTT)に関して、NTT東西が有するボトルネック設備については、国内の事業者が引き続き平等にアクセス、活用できる体制を維持し、NTT東西の事業領域や組織の統合等に対しても引き続き適切な措置を講じるべきである。
2. 国際競争力の強化
世界最先端の情報通信技術の研究開発を推進し、わが国情報通信産業の国際競争力を強化していく観点から、NTTに課されているたとえば研究開発成果の普及義務、取締役選定といった時代にそぐわない各種規制については、必要な見直しを行うべきである。
3. 経済安全保障
経済安全保障の観点からは、NTTについて、法令の組み合わせにより、適切な外資規制を確保すべきである。他の主要通信事業者についても、必要に応じて経済安全保障を確保することが重要である。また有事の際に通信を守るための国の権限を一定程度確保する必要がある。
4. ユニバーサルサービス(US)責務
従来型のメタル回線に加え、光ファイバー、衛星通信等、多様な情報通信手段が存在する。NTT東西に課された電話のUS提供責務については、技術の進歩に合わせてその提供手段の見直しを行うことが適切である。ブロードバンドサービスについては、各地域に適した事業者が多様な手段によりサービス提供することとすべきである。その上で、ブロードバンドサービスの不採算地域への開通に対しては適切な措置と合わせてNTT東西が通信サービスのあまねく提供のラストリゾート責務を負うべきである。