2023年7月5日、アジアの13の経済団体のリーダーが韓国のソウルに集い、第12回アジア・ビジネス・サミットを開催した。
長きに及んだ新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延、大国間の対立、ロシアによるウクライナ侵略等による国際秩序の揺らぎ、グローバルサプライチェーンの分断等は、保護貿易への傾斜やインフレの昂進等の深刻な問題を生み、アジアを含む世界経済に大きな影響を与えている。
アジアの各国・地域が直面するこれらの社会課題を解決し、持続的な発展を遂げるためには、自由貿易と国際経済協力を実現するとともに、イノベーティブな科学技術と、多様な人々の創造性・想像力を活用した問題解決型の社会「Society 5.0 for SDGs」の実現が不可欠である。
このような状況の中、我々アジアの経済界はこれまで長年にわたり培ってきた強固な信頼を基盤として、国際機関等とともに、相互に緊密な連携を行ってきた。こうした共通認識に立ち、本日、直面する諸課題の解決に向けて率直な議論を行った結果、以下の諸点で意見の一致をみた。
第一に、世界の成長センターとして高い経済成長を遂げてきたアジア経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大による人の移動や活動の制限によって、深刻な影響を被った。ポストコロナへの移行期を迎えた今、我々は、アジア域内の人的交流の活性化を通じて、一層の相互理解の増進と信頼の強化に努めていく。さらには、入国手続の簡略化とともに域内の労働移動を円滑化させることによって、地域の繁栄に結び付けていく。
第二に、アジアのエネルギー需要が拡大する中、経済成長と脱炭素社会への着実なトランジションを同時に実現すべく、デジタルをはじめとする技術を活用したエネルギーの効率的利用を推進するとともに、火力発電や製造工程の脱炭素化に向けた水素・アンモニア分野、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)などイノベーティブな技術の開発・実装に協力していく。
第三に、生産性の向上や社会課題の解決に資する新たなソリューションの創出に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく。国境を越えたデータの利活用を可能とすべく、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の実現に向けて、各国・地域の法制度の相互運用性を高めていく。
第四に、持続可能な経済成長を達成すべく、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序を再構築していく。その一環として、2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定を着実に履行していくとともに、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に盛り込まれた高水準のルールを満たすことができる国・地域への拡大を推進していく。
第五に、アジアのサプライチェーンの強靭化・安定化に向けて、地域で重要な資源を共有するサプライチェーンシステムの構築していく。このようなシステムの構築は、資源に乏しい国と豊かな国との間の協力を促進し、アジア全体の成長に大きく貢献する。さらに、アジア域内、域外の資源国における重要資源の開発、活用、そして食料安全保障、ヘルスケアについてのアジア諸国間の共同事業の可能性を検討する。
今後、アジアの経済界は、より豊かで活気に満ちたアジア、グローバル経済をリードするアジア、人類の幸福に貢献するアジアの実現に向けて、各国・地域の経済界同士の連携、協力を更に強化するとともに、政府に対して、協調した取組みを求めていく。