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Policy(提言・報告書)  労働政策、労使関係、人事賃金 G7倉敷労働雇用大臣会合 B7・L7 共同声明

© 厚生労働省


G7倉敷労働雇用大臣会合 B7・L7 共同声明
(仮訳/正文英文
2023年4月22日

気候変動、インフレと生活費の危機、貧困の増加、非公式性、そして不平等が、大勢の労働者および企業、特に、多くのG7諸国において90%以上を占める中小企業に影響を及ぼしている。この危機的状況は、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻およびその他の武力紛争がもたらした現在の不安定で不確実な情勢のもと、いっそう深刻化しつつある。こうした問題は、社会的一体性のみならず、労働制度や社会保護制度にも影響を与えることから、G7各国は、早急に行動を起こすことが求められる。

B7およびL7両グループは、ディーセント・ワークや「労働における基本的原則及び権利」の尊重を推進することにより不平等を削減し、人的資本と社会的保護に投資し、持続可能な開発、カーボンニュートラル経済への公正な移行、生産性、イノベーション、ディーセント・ジョブの創出、包摂的な経済成長を促進し、さらに社会正義に基づいた経済秩序を確保するための計画的かつ体系的な取り組みを求める共同声明をここに発表する。

ディーセント・ワークの創出や人的資本に投資するには、G7各国が、その国家開発計画において、持続可能で普遍的な社会的保護の利用可能性、安全と健康、教育およびスキル開発を優先させる必要がある。それは国民と人材に関する問題であると同時に、ディーセント・ワークや起業家精神、持続可能な企業(特に零細・中小企業)を促す環境の推進に関する問題でもある。

普遍的で持続可能な社会保護制度への投資は、社会にとって極めて重要である。G7各国は、資金提供と能力開発を通じて、低所得国における社会保護制度の土台の確立を支援し、ILOの「職業上の安全及び健康勧告」の実施に向けた開発途上国の取り組みを補佐するという重要な役割を担っている。

G7各国には、すべての人を職業上の安全および健康のリスクから保護し、それを回避する強固な文化を推進する責任がある。団結権と団体交渉権の尊重と保護は、安全な職場を確保するための重要な手段である。現在、基本的条約と見なされているのは、ILO第155号条約および第187号条約であるが、各国政府は、これらの原則に従い、健康で安全な労働環境に対する基本的権利が確保されるよう保証すべきである。そのためには、適切な訓練と設備を提供し、定期的な検査を実施し、労働者に危険な仕事を拒否する権利を与える必要がある。

各国政府がスキル不足という問題に対処する際に利用可能な政策手段としては、以下が挙げられる。1) すべての人が質の高い教育を受けられるよう、教育制度を強化するだけでなく、学びの世界から仕事の世界へ、あるいは仕事の世界から学びの世界への円滑な移行を支援するため、「技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練(TVET)」にも注力する。2) 労使間の社会対話を促進するため、技能委員会を設立する。この社会対話の手順は、スキル予測ツールの開発や、時宜に適った政策提言および政策介入を実施する際にも適用することができる。3) 中核となる業務スキルあるいはソーシャルスキルの開発および強化を含む、社会レベル・企業レベルでの生涯学習文化を育成する。

われわれは、「ディーセント・ワーク・アジェンダ」に従い、すべての労働者が適切な保護を受けられるよう、G7各国に対し、団体交渉や政労使三者協力を含む社会対話を促進するよう求める。その際は、(i) 労働者の基本的権利の尊重、(ii) 法令または交渉によって決められた適切な最低賃金、(iii) 労働時間の上限、および (iv) 労働安全衛生にも配慮すべきである。それは、実体経済に投資することでもある。公正な移行の実現や、新たなインフラストラクチャの構築にもおいても、団体交渉、社会対話および政労使三者協力は有効な手段となる。積極的な労働市場政策、徒弟制度、ワークベース(就業を通じた)学習および多様性と包摂性に関する政策の強化、また資金や奨励金の入手可能性の拡大といったその他の政策手段により、包摂性や起業家精神を促進し、若年者、女性、移民、障害者などの過小評価グループが労働市場に参入し、より良い仕事に就けるよう支援することができる。また、労働市場が何らかの衝撃を受けた場合は、それに迅速に対処する政策を実施することが大いに役立つ。そうした政策は、市場の失敗やグリーン化、デジタル化による雇用の混乱を緩和するためにも有用である。各国政府は、生活費の危機という現況に鑑み、法令または交渉によって決められた、少なくとも適正なレベルの最低賃金をすべての労働者に保証するために、団体交渉や政労使三者協力を含む社会対話を促進する政策を採用する必要がある。

G7首脳は、労働力移動政策を含め、現在の移民政策を見直す必要がある。移民労働者の不平等な取り扱いは、尊厳と連帯の原則に反し、人権義務に抵触し、また雇用の創出や技術職への就労を妨げる障壁となる。さらなる人口の高齢化が予想される中、G7各国は、質の高いサービスやディーセント・ジョブを実現し、新たな仕事を創出するため、一刻も早く医療部門およびケアエコノミーに投資すべきである。政策当局者には、堅牢で持続可能な社会保護制度、包摂的かつ効率的な労働力移動規制およびすべての人に質の高いサービスを提供できる医療制度へと確実に導く、包括的なアプローチが必要である。仕事の世界の集合的な意見を代表するB7グループおよびL7グループは、優れた慣行や政策提言を共有するためのアイデア、助言および支援を提供する用意がある。

両グループは、貧困削減と公正な移行に貢献するため、公式経済への移行、ディーセント・ワークの促進および起業家精神の涵養に向け、社会対話を支援するための具体的な行動を求める。

以上

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