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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(案)に対する意見

2021年3月4
一般社団法人 日本経済団体連合会
イノベーション委員会
ヘルステック戦略検討会
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アプリケーション等のデジタル技術を活用したヘルスケア関連製品は、患者の診断・治療支援や重症化予防だけでなく、新型コロナウイルスをはじめとする感染症のパンデミック時における国民の健康維持・増進にも寄与することが期待される。このようなヘルスケア関連製品を迅速に開発するためには、デジタル技術の特徴に合わせた制度設計が不可欠であり、企業が当該製品の医療機器該当性に関して高い予見性の下で製品開発できる環境の整備が必要である。

こうした観点から、本ガイドライン(案)に対し、下記のとおり意見を述べる。

全般

  • 「プログラムの医療機器該当性判断事例(別添1)」の整理・追加、「判断フローチャートに係るQ&A(別添2)」や「フローチャート(別紙)」の新規作成などガイドラインの内容が拡充されたことは、プログラム医療機器の早期実用化に資するものであり、高く評価できる。
  • デジタル技術を搭載した製品は日々進化し続けていることから、本ガイドラインの内容は定期的にアップデートすることが必要である。
  • デジタル化により加速する医療機器の開発スピードに後れを取ることなく国際競争力を維持するため、使用者の制限によって研究開発が妨げられないよう、開発段階のプログラムは医療機器に該当しない旨を明記することが望ましい。
  • 「当面の規制改革実施事項」(2020年12月22日 規制改革推進会議)に挙げられている、医療機器プログラム該当性の判断結果を共有できるデータベースの構築・定期的なアップデートおよび、事業者の情報公開の同意に基づいた厚生労働省のホームページにおける公開について、早期実現を期待する。
  • 加えて、DASH for SaMD(厚生労働省)や「当面の規制改革実施事項」(2020年12月22日 規制改革推進会議)にて公表されているプログラム医療機器の特性を踏まえた審査制度や医療保険の評価の明確化など、最先端のプログラム医療機器の開発・早期実用化を加速する環境整備についての早急な検討を期待する。

3.該当性判断(2ページ)

  • 「医療機器の定義を満たす機能と~利用者に誤認を与えないように留意する必要がある。」の箇所について、医療機器の機能と医療機器ではない機能の両方が含まれる場合に望ましい表示の具体例を示すべきである。

4.除外基準
(3)使用者(患者や健常者)が自らの医療・健康情報を閲覧することを目的とするプログラム
②スポーツや健康維持を目的とするプログラム(3~4ページ)

  • 別添2の「判断フローチャートに係るQ&A」に含まれる、受診勧奨に関する内容の定義を明確にするととともに、各Q&Aで対象とする内容が異なる場合はその差異を明示すべきである。

5.該当性判断の手順
(1)判断に必要な項目(4ページ)

  • 医療機器に該当しないプログラムで得られた測定値を医薬品の治験でのサロゲートマーカー#1に用いた場合でも、治療計画の支援(当該医薬品の用法用量の変更の情報提供)に使われないのであれば医療機器に該当しないか、明示すべきである。

#1 発症頻度が非常に低く統計的に意味のある症例数を集めた解析が困難な場合など、客観性・普遍性が認められる項目を測定できない場合に、診断・治療行為、薬効等の最終評価との関連を科学的に証明できる代用のマーカーを指す。

(3)フローチャートの活用(5ページ)

  • 「個々の具体的な事例における医薬品医療機器等法の適用につき判然としない場合には、監視指導・麻薬対策課において相談・助言等を行っていることから、これを活用すること。」とあるが、一次相談窓口は従来通り都道府県の窓口となるのか、直接、同課に相談して良いのか、明示すべきである。
  • プログラムを企業・国公立機関・公益法人など組織の労働現場で使用する場合も想定されることから、別紙「医療機器該当性に係るフローチャート」へ下記のように追加することが求められる。
「医療機器該当性に係るフローチャート」への追記内容

7.臨床研究等における取扱いについて(7ページ)

  • 臨床研究の段階では医療資格を持たない研究員がプログラムを取り扱う場合もあり得ることから、開発が妨げられないよう、臨床研究で取り扱うプログラムは医療機器に該当しないとすることが望ましい。

プログラムの医療機器該当性判断事例(別紙1)

  • 「医療機器に該当しないもの」「医療機器に該当するもの」ともに具体的な事例が追加されているが、各具体事例がなぜ該当・非該当なのか記載されていないため、類似の製品については判断が困難になると予想される。各事例が該当・非該当となる理由・考え方についても、「プログラムの医療機器該当性判断事例」(別紙1)もしくは「判断フローチャートに係るQ&A」(別紙2)に追記すべきである。
  • 組織や健保がデータ収集者となる際、データの活用単位が個人に留まらない場合が考えられる。また、組織全体のシステムとして運用する際には個人意志で参加不参加を判断することがままならない場合もあり得ることから、「企業・国公立機関・公益法人など組織の労働現場での使用を目的としたプログラム」も「プログラムの医療機器該当性判断事例」(別紙1)に含めるべきである。本項目は「1 医療機器に該当しないもの」の「A 個人での使用を目的としたプログラム」と「B 医療機関での使用を目的としたプログラム」の間に追加し、以下枠内のような内容とすることが望ましい。

企業・国公立機関・公益法人など組織の労働現場での使用を目的としたプログラム

1)健康管理や勤怠管理を目的としたプログラム
 ア 従業員の健康記録を保存、管理し、アクセスするプログラム

  • 労働現場での健康管理、事故防止のため、従業員の健康状態を示す計測値(体重、血圧、心拍数、血糖値等)を表示、転送、保管するプログラム
  • 電子血圧計等の医療機器から得られたデータを転送し、従業員の記録管理用として表示、保管、グラフ化するプログラム
  • 従業員の健康履歴データを単なる記録のために健康管理サービス提供者と共有するプログラム(診断に使用しないものに限る。)

 イ 生産性向上や健康維持を目的としたプログラム

  • 携帯情報端末内蔵のセンサ等を利用して従業員の健康情報(体動等)を検知し、労働環境の改善を目的として家電機器などを制御するプログラム
  • 携帯情報端末内蔵のセンサ等を利用して従業員の健康情報(歩数等)や勤務状況を検知し、健康増進や生産性向上を目的として働き方改善メニューの提示や実施状況に応じたアドバイスを行うプログラム
  • 体動等の生理情報を検知し、エアコン・照明などをコントロールするプログラム
  • 糖尿病のような多因子疾患の一部の因子について、入力された検査結果データと特定の集団の当該因子のデータを比較し、入力された検査結果に基づき、当該集団において当該因子について類似した検査結果を有する者の集団における当該疾患の発症確率を提示するプログラム
  • 特定の集団のデータに基づき統計処理等により構築したモデルから、入力された検査結果データに基づく糖尿病のような多因子疾患の発症確率を提示するプログラム
  • 従業員の一般的な健康の維持、増進又は生産性向上のため、勤務時間、休憩、業務スケジュール、健康的な食事、運動、体重管理などのアドバイスを行うことを目的とするプログラム
  • 日常の業務を能動的に監視してその傾向を追跡、行動提案、又は無意識下の行動変容を行うプログラム
  • 作業速度、業務内容、「発想力」又は「集中力」テストのスコアを提示するプログラム

2)教育用プログラム

  • 健康的な働き方や、生活習慣改善に関する情報等を電子的に提供するプログラム
  • 一般向けの医学書籍等を電子化して提供するプログラム

3)データの加工・処理を行わない(表示、保管、転送のみを行う)プログラム

  • PHR、EHR 等の個人の健康記録プログラム
  • 従業員の健康状態又は治療内容に関する情報を整理、記録、表示するプログラム
  • 従業員の健康状態又は慢性疾患(肥満、食欲不振、関節炎、糖尿病、心疾患など)について、測定値等(血圧測定値、医薬品服用回数、食事、日課、情動状態など)を記録し、疾病管理計画の一環としてこの情報を産業医関係者と共有するためのプログラム

4)診断、治療以外を目的としたデータの加工・処理を行うプログラム

  • 入力された従業員の健康データを個別、又は部署ごとにグラフや表に変換するプログラム

1 医療機器に該当しないもの
A 個人での使用を目的としたプログラム
1)健康管理や運動管理を目的としたプログラム
イ スポーツや健康維持を目的としたプログラム(8ページ)
・糖尿病のような多因子疾患の一部について~当該疾患の発症確率を提示するプログラム
・特定の集団のデータに基づき~発症確率を提示するプログラム

  • 「多因子疾患」として例示されているのは糖尿病の1例のみであるため、糖尿病のみが対象との誤解を招かないよう、高血圧、高脂血症、骨粗鬆症、リウマチなど、他の多因子疾患も対象となることが明確となるよう記載すべきである。
  • 利用できるデータとして記載されている「入力された検査結果データ」に加え、「個人のPCや携帯情報端末内蔵のカメラやセンサ等を利用して取得した個人の健康情報(姿勢、体動、心拍数、歩数等)」や「生活習慣等を個人が入力するチェックリスト」なども対象となる旨を明記することが望ましい。
  • インターネット上の疾患啓発サイト等には、個人が入力するチェックリスト等を利用して疾患の発症確率を提示するプログラムが多数存在し、これらは医療機器に該当しないと考えられている。一方、同様のプログラムを用いたサービスまたはアプリケーションが医療機器に該当すると判断される場合があり得ることから、媒体に左右されず一貫した医療機器該当性の判断がされるよう、判断基準を明確化し、具体事例を追加すべきである。

C 一般医療機器(クラスⅠ医療機器)と同等の処理を行うプログラム(12ページ)
・添付文書の用法用量・使用上の注意や、治療指針、ガイドラインなど公知の投与量の増減に対応する薬剤の投与量を提示するプログラム(薬物投与支援用プログラム)

  • 一部血友病領域では高度管理医療機器と判断されているプログラムも存在するため、クラスⅠに該当するか、クラスⅡ以上となるかを判断する指針を示すことが求められる。「2 医療機器に該当するもの」(別紙1、14ページ)あるいは「判断フローチャートに係るQ&A」(別紙2)で補足説明を加えることが望ましい。

2 医療機器に該当するもの
1)入力情報を基に、疾病候補、罹患リスクを表示するプログラム(14ページ)
・数学的アルゴリズムを使用して皮膚病変部の画像を解析し、病変部のリスク評価結果をユーザーに提供するプログラム

  • 掲載されている上記の事例だけでは医療機器か否か不明瞭である。チェックリストなど入力情報を基にすることで医療機器と判断するのではなく、どのような結果を返すかによって判断すべきである。また、リスク評価結果のユーザーへの提供が一概に「診断」となるとは限らない。例えば、インターネット上の症状のセルフチェック等の結果「○○症の可能性があります」のような表示を行うプログラムは「入力情報を基に、罹患リスクを表示するプログラム」に当てはまるが、医療機器に該当しないと考えられる。
  • したがって、上記具体事例が医療機器に該当する理由が明確になるよう、判断基準や考え方を記載するとともに、具体事例を追加すべきである。

2)入力情報を基に、医療機関への受診勧奨を行うプログラム(14ページ)
・入力情報を処理することにより、医療機関への受診の必要性を判断するプログラム

  • 「医療機関への受診の必要性を判断する」の箇所について、対象となる表示の定義や具体例を明確にすべきである。例えば、インターネット上の疾患啓発サイト等においては、チェックリストやデータ入力等による判定の結果、「詳しい医師がいる病院で受診されることをお勧めします」「専門医にご相談ください」といった表示および該当する病院検索が可能となるプログラムが多数存在するが、これらは医療機器に該当しないと考えられる。

3)疾病の診断・治療・予防を意図したプログラム
イ 治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)(15ページ)
・患者の体重等のデータから麻酔薬の投与量を検証ができない方法により算出し、投与を支援するプログラム

  • 誤解が生じないよう、「検証ができない方法」についての説明や具体例を「判断フローチャートに係るQ&A」(別紙2)の【診断・治療・予防を意図しているか】の項目に明示することが必要である。

判断フローチャートに係るQ&A(別紙2)
Ⅱ 個人で使用するプログラム
【健康管理目的か】(17ページ)

  • Q・A4について、将来的なリスクと現時点のリスクの区分けが困難であることから、「現時点において当該疾患であることが否定されたうえでの、将来的な疾病リスク予測は健康管理目的に含まれます。ただし(以下略)」のように補足を行い、判断の基準を明確化すべきである。

【入力情報を基に、疾病候補、罹患リスクを表示するものか】(18ページ)

  • 疾病、罹患の定義を明確にすべきである。そのうえで、医療機器に該当しないプログラムの表示結果の具体事例や判断基準を明示することが必要である。
以上

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