新型コロナウイルスの感染拡大を機に、社会経済環境は大きく変化した。遠隔教育・医療、テレワークなど官民のさまざまな取り組みにおけるデジタル技術の導入をめぐり、わが国全体のデジタル化の遅れが浮き彫りとなった。また、東京をはじめとする大都市への過度な集中など経済社会の脆弱性への社会的な認識が拡大した。こうした中、過密リスクの回避から地方居住への関心が高まるとともに、企業においては近年の大規模自然災害の頻発も相俟って事業継続計画(BCP)の再検討が加速している。
場所を選ばない働き方・生活スタイルが可能となりつつある中、経済社会の強靭化の観点からも地方分散の機運は向上している。今こそ、東経連・経団連がかねてより掲げる地方の経済活性化によるわが国の持続的成長実現のチャンスと捉え、社会全体のデジタル化を通じた地域の魅力向上を一気呵成に進めることが重要である。
さらに、東日本大震災から10年の節目に、震災の記憶を風化させないとの決意を新たにし、わが国全体での新たな成長のタイミングを捉えて、復興の取り組みを一層強化する必要がある。
東経連と経団連は、2018年7月に「震災復興の加速」「成長戦略の推進」について共同声明以降、次世代放射光施設を核としたリサーチコンプレックスの形成や国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致など、復興・再生やSociety 5.0の実現に向け強力に連携してきた。以上の認識を踏まえ、コロナを契機に両団体の連携を改めて深化させ、下記の活動を積極的に展開していく。
(1)地域の魅力向上による地方分散の実現
地域や業種の大小を問わず、あまねくデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現することで、地域の課題を解決するとともに、各地の特色を活かした取り組みを推進する。時間や場所に捉われない働き方に向けた基盤整備を図るとともに、地域の魅力づくりに資する各社の取り組みをさらに進める。
国に対しては、デジタル基盤の整備やDXに対する支援制度の拡充に加え、大胆な規制改革や税制優遇等、地方移転・地方拠点強化に向けた政策の実行を働きかける。また、地方自治体に対しては、デジタルガバメントを基盤とする広域連携を強く促すとともに、住民サービスの効率化や質の向上、産業振興を後押しする。
(2)震災復興の加速
「東北復興応援フェスタ」や復興の現場の継続的な視察などの取り組みを強化するとともに、コロナ禍で疲弊した経済を復活させる契機ともなる「東北ハウス」の開催を準備する。復興庁をはじめとする関係者との密接な連携のもと、福島イノベーションコースト構想の推進やILC誘致実現をはじめ東北地方の活性化・産業振興、風評払拭に資する活動を展開し、復興を着実に推進していく。
於 宮城県仙台市
一般社団法人 東北経済連合会 会長 海輪 誠 |
一般社団法人 日本経済団体連合会 会長 中西 宏明 |