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Policy(提言・報告書)  経済政策、財政・金融、社会保障 令和2年度診療報酬改定に関する要請

令和元年11月27日

厚生労働大臣
 加藤 勝信 殿

健康保険組合連合会会長  大塚 陸毅
国民健康保険中央会理事長原  勝則
全国健康保険協会理事長安藤 伸樹
全日本海員組合組合長森田 保己
日本経済団体連合会会長中西 宏明
日本労働組合総連合会  会長神津 里季生

令和2年度診療報酬改定に関する要請

令和2年度診療報酬改定にあたって、下記のとおり医療保険者関係団体の意見を取りまとめたので、改定率及び改定の基本方針の策定に適切に反映されるよう、強く要請する。

わが国の国民医療費は、高齢化や高額な医薬品の保険適用等の影響で増加の一途を辿っており、令和元年度の予算ベースで約46兆円にまで達した。今後、令和4年(2022年)から団塊の世代が後期高齢者に到達し始めるため、さらなる医療費の急増が見込まれている一方、制度の支え手である現役世代人口は急速に減少すると予測されており、適正化・効率化を通じた制度の安定とその持続可能性を高めていくことが、喫緊かつ重要な課題である。

これまで医療保険各制度の加入者1人当たり保険料額は、現行の高齢者医療制度が創設された平成20年度以降、右肩上がりで上昇し続けている。中でも被用者保険の保険料負担の伸びは大きく、国民健康保険も傾向としては同様であり、こうした状況が令和4年(2022年)から令和7年(2025年)にかけて、より顕著になることが強く懸念される。

このため、医療の質を担保しつつ適正化・効率化などにより給付の伸びを抑制し、過重な保険料負担を軽減しなければ、現役世代の可処分所得の減少が消費活動を停滞させ、社会保障制度の根幹をなす経済そのものにも悪影響を及ぼしかねない。

このような背景から政府は、「骨太の方針2019」において、診療報酬では高齢化・人口減少や医療の高度化を踏まえ、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるようアウトカムに基づく支払いの導入を引き続き進めていくとしている。さらに、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づいて「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」に取り組むことや、調剤報酬において対物業務から対人業務への転換を推進するとしている。

一方、先日公表された医療経済実態調査結果からは、中期的に見れば国公立・公的病院以外の経営状況は概ね堅調であることが読み取れる。中でも、一般診療所は高い利益率を維持し、同一グループの保険薬局についても店舗数が多いほど高い利益水準となっている。

また、これまでの賃金・物価水準の上昇率と乖離した形で診療報酬本体は概ねプラス改定が行われてきたため、両者の水準には大きな隔たりがある。こうした中、前述のとおり、今後も高齢化・人口減少や医療の高度化などによる給付費の増加に伴い保険料負担は増大すると見込まれており、今後の人口動態の変化を踏まえれば、国民負担の軽減を確実に図りつつ国民皆保険体制を守っていかなければならない。

以上の観点から、令和2年度改定において、診療報酬はマイナス改定とすべきである。併せて、薬価等においては薬価等調査の結果に基づく改定を行なうとともに、イノベーションの推進にも配慮しながら薬価制度の抜本改革に基づく必要な対応も併せて検討すべきである。なお、薬価等の引下げ分は、診療報酬本体に充当することなく国民に還元すべきである。

令和2年度改定にあたっては、加入者が適切な医療を受けられる体制の確保を前提として、効率的・効果的な医療提供の促進を基本方針の軸に据えた上で、入院、外来、在宅ではそれぞれの医療機能において患者像の適切な評価の推進、また、調剤では、対物業務から対人業務への転換を薬局機能に応じた評価体系への見直しなどで患者本位の医療を実現しつつ、診療報酬全般にわたり、適正化・効率化・重点化を図っていくべきである。併せて、医薬品の適正処方に向け、有効性・安全性を前提に経済性も考慮した処方の推進策を診療報酬上で講じるべきである。さらに、生活習慣病治療の継続に資するオンライン診療の適切な推進を図るべきである。

なお、医療従事者の働き方改革については、地域医療構想の推進をはじめとして、医療提供体制における「三位一体改革」の進捗状況を踏まえつつ、令和2年度改定では、医療従事者の負担軽減や医療安全の向上に明らかにつながる措置に留め、ICTを活用した医療の効率化や患者の受療行動の変容に向けた総合的な取り組みを進めるべきである。

令和2年度の診療報酬改定が、国民皆保険制度の持続性の確保と少子高齢社会に即した効率的な医療提供体制の構築につながるものとなることを強く求める。

以上

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