一般社団法人 日本経済団体連合会
スタートアップ委員会
スタートアップ政策タスクフォース
経団連が実現を目指す「Society 5.0」はデジタル革新を通じて多様な人々が想像力・創造力を発揮する社会であり、ビジョンドリブンで課題解決や価値創造に取り組むスタートアップこそがその担い手として期待される。スタートアップの成長促進に向けては、わが国の資金調達環境を大きく改善し、世界中の投資家や起業家にとって魅力的なエコシステムを構築することが不可欠である。
わが国におけるスタートアップ投資の規模は、米国や中国、インドなどの諸外国と比較して未だ桁違いに小さいながら、大企業におけるオープンイノベーションの活発化もあって拡大し続けている。経団連は、このトレンドを好機と捉え、わが国のエコシステムを次のステージへと進めるべく提言等を行ってきた#1。
こうした中、安全保障上重要な技術の流出防止などわが国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態が生じることを適切に防止する観点から、外国為替及び外国貿易法(いわゆる「外為法」)上、「対内直接投資等」#2について事前届出が必要な業種にサイバーセキュリティ関連業種が追加された(本年8月1日から適用済み)。
その結果、わが国のスタートアップの大勢を占めるIT系・SaaS系企業の多くが事前届出対象業種に該当し、外国投資家または外国投資家を含む投資ファンドから投資を受ける際に事前届出が必要となり、スピーディーな資金調達が阻害されている。
さらに、一部報道にあるように、「対内直接投資等」において事前届出が必要な上場会社株式取得比率基準を10%から1%に引き下げる方向での検討も進展している。これが実現すれば、外国投資家等から国内スタートアップをはじめとするわが国のIT系・SaaS系企業への投資に際して、事前届出および受理が必要なケースが大幅に増加することが予想される。
安全保障の観点から外為法の対内直接投資管理を強化する措置には賛同する。他方で、かかる措置が本来の目的から離れて意図せぬかたちでわが国のスタートアップに対する投資に悪影響を与えることのないよう、関係省庁には然るべく対処いただきたい。
- 提言「Society 5.0実現に向けたベンチャー・エコシステムの進化」(2019年2月19日)、
意見書「スタートアップの成長を促進する上場市場のあり方について」(2019年8月5日)等 - 外為法第26条第2項各号で規定する行為。非上場会社の株式又は持ち分の取得等。