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Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 新たな防衛計画の大綱・次期中期防衛力整備計画に向けて

2018年6月19日
一般社団法人 日本経済団体連合会

本年1月の総理の施政方針演説において、年末に向け、「防衛計画の大綱」の見直しを進めることが言及された。また、来年度から始まる「中期防衛力整備計画」についても、今後議論が深まることとなる。

わが国の安全保障をめぐる環境は、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、中国の海洋進出や周辺諸国との領土問題といった対外的に厳しい状況が続くだけでなく、これまでの陸・海・空といった領域に、新たに宇宙、サイバー、電磁スペクトラムが加わり、さらにAI技術が進展するなど、複雑な様相を呈している。

このような状況において、わが国防衛産業は、従来の予算規模と制度的な枠組みの中、創意工夫を発揮し、国民の生命と安全な暮らしを守る政府の要請に応えるとともに、地域経済の活力維持という観点でも、地域によっては、経済・財政基盤の重要な担い手としての社会的使命を果たしてきた。

わが国防衛産業が果たすべき基本的な役割は、今後とも変わることはないが、経年による環境変化は、防衛産業に多様な影響を与えている。人材面ではこれまで優れた防衛関連技術を支えてきた熟練技術者・技能者の高齢化が進む中、新規開発・製造プログラムの大幅な減衰により長年培ってきた開発ノウハウ、技術の伝承が困難になっている。また長期間にわたって運用される防衛装備品は、部品等の調達も困難になり、各種試験設備等の老朽化も著しい。他方、研究開発に関しては、海外では国を挙げて先進的な国防関連技術の研究開発に意欲的に取り組んでおり、わが国企業の民間部門の技術革新のスピードも速い。

こうした中、制度改善等に向けた防衛省の尽力はあるものの、現行制度の下にあって、わが国防衛産業は、高齢化への対応や設備の高度化、長期運用を前提とした防衛装備品とは異なる次元で進む民間部門のイノベーションの取り込み、さらには市場のグローバル化に対してポテンシャルを十分に発揮しきれていない。加えて限られた予算の下で海外からの防衛装備品の調達が増加していることを受けて、国内の防衛産業は事業の見直しを迫られている。目下の状況は、わが国防衛産業の生産性向上に向けた努力に水を差しかねず、また防衛装備品の能力向上のための企業の創意工夫を妨げている。今や国内の防衛生産・技術基盤は、根本から瓦解し、わが国の安全保障にも影響する危険を内包しているといっても過言ではない。

こうした切迫した状況を国を挙げて打開していかなければならない。わが国防衛産業は、防衛省・自衛隊が求める防衛装備品の多様なニーズに応えることはもとより、(1)技術的優越の確保に伴う他国に対する抑止力の維持、(2)多数の関連企業を通じた経済波及効果・民生品への技術波及効果の拡大、(3)防衛装備品の保守・点検や修理など、民間委託のさらなる活用、(4)外国からの調達・国際共同研究開発における交渉力の強化への貢献だけでなく、現政権が重視する雇用機会の維持・提供に向けて、企業規模を問わず、各々の強みを発揮する形で応えていく所存である。

わが国政府においても、効率的・効果的な防衛装備品の調達を行うとともに、競争関係にある海外企業と同様に、投資原資となる適正な利益が確保できるよう、わが国防衛産業に対して適切な政策支援を行い、企業自らの能力発揮を促すことを通じて、国内の防衛生産・技術基盤の効率化・強靭化を図り、ひいては将来的な国の安全保障の確保につなげていく必要がある。

今般、このようなタイミングで、「新たな防衛計画の大綱」に基づく「次期中期防衛力整備計画」と、その実施期間である今後5年間は、わが国防衛産業にとって大きな分水嶺となりうる。

かかる観点を踏まえ、わが国防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けて、下記の事項の実現を強く要望する。

Ⅰ. 防衛力の適切な維持・強化と新領域等への対応のための防衛予算の確保

国民が安全な環境下で安心して生活するためには、応分のコストがかかることは論をまたない。また、宇宙、サイバー、電磁スペクトラムといった新たな領域やAIは、防衛分野に限らず、他分野にも共通する重要事項である。こうした新たな領域等に適切に対応していくため、予算をはじめ必要な資源を確保すべきである。

  1. 1.わが国の安全保障を支えるわが国防衛力の適切な維持・強化
  2. 2.新領域(宇宙、サイバー、電磁スペクトラム)等への対応

Ⅱ. わが国の防衛生産・技術基盤の維持・強化と技術的優越の確保

防衛省は、関係省庁との協力の下、わが国企業が持つ研究開発力を背景にした最先端要素技術の競争力を維持しつつ、状況の変化に迅速に対応すべく、国内で装備品を開発・改良できる能力を企業が十分に発揮できるよう、関連制度の制度改善に努めるべきである。その際、特殊かつ高度な要請に耐えうる技能・技術を持った人財の確保という企業努力に加え、官民の適切な役割分担の下で、点検、修理、能力向上といった基盤が維持・強化されてこそ、こうした強みが発揮できることに留意すべきである。

  1. 1.防衛産業の特殊性を考慮した事業性の確保のための制度改善
  2. 2.中長期的な視点に基づく研究開発制度・個別プログラムの推進
  3. 3.サプライチェーンの維持・人材の有効活用のための方策の充実

Ⅲ. わが国の安全保障に資する防衛装備品・技術の国際移転の推進

わが国の安全保障は今や一国のみでは成り立たず、わが国との間で安全保障面で協力関係がある諸国との関係が重視されている。わが国としては、こうした友好国との間で防衛装備品・技術移転協定の締結国の拡大を図るとともに、防衛装備移転三原則の遵守の下、防衛装備品・技術の国際移転等が、企業努力と相まって円滑に進むよう関連制度の整備を進めるべきである。

  1. 1.防衛装備品・技術の移転推進体制の整備
  2. 2.優れた技術のデュアルユースの推進
  3. 3.海外のセキュリティ基準への対応・国内の情報開示に関する規制緩和等
以上

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