一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部
今般の省令等改正案は、現行FIT制度の歪みを正すものであり、評価する。
一般論として、パワーコンディショナーの定格出力を超えて太陽光パネルを搭載する、いわゆる「過積載」は、太陽光発電の発電量の変動を一定程度抑制し供給安定性の向上に資するため、それ自体否定すべきものではない。しかしながら、FIT認定を受けた太陽光発電案件について事後的に過積載を行う場合は、調達価格の考え方に照らして看過できない問題を生じる。
調達価格は、発電区分毎に、設備費や運転維持費といった必要経費、設備稼働率や事業者の収益率等を考慮して定められている。一方で現行の制度の下では、FIT制度開始当初の比較的高い買取価格で認定を受けた太陽光発電事業者が、現在の安価になった太陽光パネルの増設によって、過去の高いパネル費用を前提とした高い調達価格が適用される発電量を増やすことができる。結果的に、FIT制度は導入量の拡大を通じた再エネ価格の低減を本旨としているにもかかわらず、高額な再エネ導入が続けられる事態となっている。今回の省令等改正によってこのような歪みが正されることを歓迎する。
併せて、現時点で調達価格等が決定されていない将来(住宅用太陽光:2020年度以降、事業用太陽光:2018年度以降)においても、当然、パネルの合計出力の一定以上の増加に際して変更認定を行うとの方針を堅持すべきである。今後の告示改正にあたっても、今回の改正の主旨が損なわれることのないよう強く要請する。
他方、本改正案においては、過去に行われた過積載に対して特段の対応を実施しないこととなっている。過去に認定を取得した太陽光案件が順次稼働するなかで、FIT買取費用はエネルギーミックスで想定されている3.7~4.0兆円(2030年度)に急速に近づく見通しである。2030年度時点の買取費用は4.7兆円にまで上振れするとの試算もある#1。再エネ導入の拡大と社会的コストの最大限の抑制を両立させる観点から、過去の過積載によって生じている追加の国民負担の取り扱いについて十分な検討を行うべきである。
FIT制度による国民負担は、既に当初の想定を超えて極めて重いものとなっており、今後とも増大していく見通しである。わが国経済の競争力を確保するに足る、国際的に見て遜色ない電気料金水準の実現に向けて、FIT制度の不断の検証と見直しを継続していただきたい。
- 電力中央研究所「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見通し(2017年版)」
(http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y16507.pdf)