日本農業の変遷:兼業化と行政依存の恒常化
日本農業は、減反政策や機械化による農家経済の外部化が進んだ結果、兼業化によって農家経営を安定化せざるを得なくなった。平成以降、専業経営はさらに少数となり、専業性の低いコメ等は補助金等の行政依存が恒常化し、生産性は低下した。TPPを機とする変化・改革の中、経営の統廃合が進むと考える。
農業法人の成功事例の横展開、農村での政策決定が課題
私が副会長を務める日本農業法人協会には1800社が加盟し、株式上場や数十億円規模の売上げ、耕作面積も800ha規模といった成功経営モデルとなる例も数々あるが、そうした成功事例はまだ増加しておらず、ノウハウの横展開を進める必要がある。
また、兼業経営が多数を占める農村・地域での合意形成に政策を委ねると、無条件委託や共同計算といった従来のやり方から脱却できず、政府が目指す戦略的かつ持続的な政策と矛盾する例が多く見られるという問題がある。
「見えない農業」から「見える農業」へ
昔の農業経営は、農家の親から子への口述伝承や共同体験といった暗黙知により行われてきた。しかし、農業法人経営は組織経営であり、ルールや仕組みによる「見える化」、MOT(技術経営)の手法が必要である。人材マネジメントや、機械の完全自動化等のハイテク技術の活用も目指すべきである。また、経営には市場への明確な動機と戦略が不可欠であり、企業・研究者とのクロスイノベーションが有益である。
TPPと日本の農業の未来:規制改革の促進を
TPPを機に、栽培作物の転換、人・設備・農地の再配分が進み、農業生産性の向上による高収益化が進むだろう。農協改革の加速にも期待する。
同時に、農産物輸出や経営の海外進出の拡大に向けて、国内規制改革を進めなければならない。海外では認められる大型農耕車の公道走行規制の緩和、検疫・検査制度や土地利用規制のイコールフッティングが必要である。海外で「ワギュウ」、「コシヒカリ」等が氾濫する中、日本ブランドの保護も強化する必要がある。