第一部パネルでは、日米の企業、労働者、エコノミストといったそれぞれの立場から、経済効果を踏まえ、TPPへの期待を議論した。
かつて、TPPの参加是非をめぐって国民的な議論があり、多くの誤解が広まった。TPPの影響を評価する際には、根拠のない懸念に迷わされることのないよう、経済効果分析に基づくメリットを正確に把握することが重要である。
TPPによるGDP増加のうち消費増の効果が最大
昨年12月に公表された政府試算をみると、TPPを通じて13兆円余りのGDP押し上げ効果と、80万人の雇用の増加が見込まれる。中でも注目すべきは、GDP変化の内訳で消費の占める割合が最も大きいことである。TPPは輸入品の価格低下と実質賃金の増加につながり、消費力を増加させる。さらに輸入や対内直接投資拡大により、様々なニーズにマッチした商品・サービスが得られるようになり、満足度の高い暮らしにつながる。このように、TPPの最大の受益者は家計である。
TPPによる関税引き下げで食費支出の5%が削減
農産物だけをみても、価格低下により、家計の消費余力は拡大する。家計の消費の内訳をみると、主要国のうち日本は食費の割合(エンゲル係数)が高い。例えば、TPPの関税撤廃・引き下げが完了した場合、牛肉・豚肉を中心に、食費支出が5%近く浮くとの試算が可能である。生産基盤の維持・強化が不可欠であるが、消費者にもたらされる効果を最大化できるようにすることが重要である。
早期発効への期待と将来の地域経済統合への道筋
ラフルアACCJ会頭が指摘するとおり、発効の鍵を握る米国議会における審議と批准の行方を見通すことは難しい。一方で、ACCJが、TPP諸国との貿易の拡大とそれによる雇用増加という米国にとっての多大な経済的利益に基づいて、TPPの早期批准を強く支持する姿勢を示したことに勇気付けられた。
一日も早いTPPの発効を実現し、植村三菱電機執行役員が指摘するとおり、アジア諸国に参加国を拡大していくことが不可欠である。また、川崎シニア・フェローが指摘するとおり、FTAAP構築に向けて経済効果を最大化するためには、RCEPを実現する上でも、TPPレベルの高水準の関税・非関税障壁除去を実現すべく努力することが重要であろう。